黒子の長くて短い一日〜憧れが媒介になって高め合う白井黒子と御坂美琴の関係性に感無量

とある魔術の禁書目録(インデックス)〈8〉 (電撃文庫)

全16巻+SS2冊中、もっとも出来が良かったと、今でも胸に繰り返しイメージがあるエピソードがこれ。なんといっても、主人公であるインデックスと上条当麻が、事実上出てこない、、、、いや出てくるんだが、それはただ単に脇役であるにすぎない、ということが逆によかったのかな?と思うぐらい、よかった。というか、白井黒子の主観で話が進むのだが、それだけ、この子の内的世界は高潔で美しいということなんだと思う。

名づけるのならば、


白井黒子の長くて短い一日


という感じのタイトルがふさわしい。全編彼女の独白、一人称が、世界を描写する。能力者(超能力と考えればいい)が闊歩する東京都西に位置する学園都市では、能力者の学生を主体としてボランティアの自警組織が治安を維持に関わっていて、それを風紀委員(ジャッジメント)と呼んでいる。事実上、日本政府から独立しているこの都市国家では、自警団といえども、それはパブリックな治安組織だ。そこで、レベル4という、文句なしというのは、少し落ちる実力の持ち主であるジャッジメント白井黒子の一日を追ったエピソード。

「ニッコニコの笑顔と共に愛しのお姉さまへ迫ろうとする満身創痍の白井黒子を、御坂美琴はどうにかベットに押し戻して掛け布団を掛ける。


「あ、ああ・・・・・・お姉様の手で乱暴にベットに押し倒されるこの感触、やっやはり体を張って肉弾戦に取り組んだのは正解でしたの。世界が、世界がいまとても輝いて見えますわ!」(黒子)


「アンタ絶対安静って言葉の意味知ってんの!?」(美琴)

8巻 p239 それぞれの日々


漫画でも数あるこの二人のじゃれ合いは、もぅぅぅぅぅなんてラブリー♪。日常のなんのことはない情景で、胸がときめいて仕方がない。僕の中で、黒子株が大急上昇して、突き抜けていきます。なんつーか、かわいいよ、黒子ちゃん。いや、こういう百合って、本質的な「尊敬」があるかどうかで、危うい方向に見えるか、そうでないかがはっきり分かれる部分があって、黒子のそれって、物凄く健康的なんだよね。だって、美琴への深い承継と尊敬がベースになって、それが深すぎて、じゃれて甘えているという行動に転化しているから。本質的な部分で、気高いんだよねー姿勢が。

「お姉さま。もし貴女が自分のせいで私を事件に巻き込んだとおもぅているのなら、それは大間違いですのよ。」(黒子)


「え?」(美琴)


「当たり前でしょう。わたくしが弱いのはわたくしのせいですのを。そこにどうしてお姉様が関わるんですの?。馬鹿にしないでくださいな。わたくしは自分追った責任ぐらいは自分で果たせる人間ですのよ。あなたに背負ってもらっては、わたくしの誇りはズタズタですの」(黒子)


中略


(あくまでも、『今の』わたくしには、ですわ。わたくしは、白井黒子は、こんなところで立ち止まる気など毛頭ありませんもの。ですからお姉様、しばしのお待ちを。目的地を知った黒子は速いですわよ。)

この場所の居心地の良さを知り、だからこそ、彼女は戦場に戻る覚悟を決める。静かに、すぐそこにいる少女には決して知られぬように。

こうして、白井黒子は自分の身の程を知った。

そうして、自分の手では届かぬ世界があることも理解した。


しかしだからこそ、彼女は諦めるのではなく、さらに上へと手を伸ばそうとする。
決して、高い位置かへのし上がりたいのではなく。
ただ一つ、今ここにある場所を守りたいが故に。



p242 それぞれの日々


こういうセリフとか、彼女の気高さを表していて、うんうん。感動する。


とある科学の超電磁砲 1―とある魔術の禁書目録外伝 (1) (電撃コミックス)