とある魔術の禁書目録]『とある魔術の禁書目録』 4-5巻 鎌池和馬著 覚悟がある生き方をしているかどうか?

とある魔術の禁書目録(インデックス)〈4〉 (電撃文庫)

評価:★★★星3つ
(僕的主観:★★★星3つ)

「それでも私はお前を許さない。たとえ敵わずとも、何度敗北しようとも、絶対に許さない。素人だからこそ、私には引き際も交渉の余地もない。何十年でも何百年でもお前を追う。たとえ死して骨となっても決して諦めない。いいか、わからないようなら一つだけ教えたやる。」

言って、上条刀夜は一歩、挑むように前へ出た。
魔術師・土御門元春と対等な位置に立つために。

「私は上条当麻の父親だ。私はそのことを誇りに思って生きている


4巻 p278


この作者、時々、こーいう、うわーいいなーわかってるなーと思うようなこと書くんで、ともすれば、読みにくい文章でダレるんだけれども、ぐっとくるんだよなぁ。人間理解の深い描写があってねぇ、、、こういう覚悟ある人格を描く人は、人生を真剣に生きるべきとも思っている人が多いので、僕は好きだなぁ。『はちみつとクローバー』で、好きな人を守るためには、「いざ」という時に、頼りになると個でなきゃいけないし、、、そのためには、1年ぐらい平気で何もしなくても食べていけるくらいの余裕を持ってなければいけないんだ・・・というようなエピソードが僕は凄く好きで、これは、覚悟を持って生きているか?って事なんだよね。この作者は、描写の端々に「それがわかっている」という感じ。神崎さんのツンデレキャラとしての認識は、僕としては、もっとあとの方でなんだが・・・・(堕天使猫耳?だっけ?(笑))、この間は、考えてみると大サービスエピソードなんだよねー(笑)。


とある魔術の禁書目録(インデックス)〈5〉 (電撃文庫)

評価:★★★星3つ
(僕的主観:★★★星3つ)


はっきりいって、この巻からぐっと物語世界が深くなっていて、とりわけアクセラレーターというもう一人の主人公が誕生したといっても過言ではない。ともすれば、主人公としての物語の密度が薄い当麻に比較すると、僕は、はっきりしている分だけ、アクセラレーターのストーリーのほうが、大好きです。

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冬川 基

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美琴は背中を預けた路地の壁にコツンと自分の後頭部を押し当てた。顔が熱くなるのが鏡を見ていなくてもわかる。本当に最低だ、美琴は思う。こんな状況で、あんな台詞を聞いて、いまさらどんな顔をして出ていけばよいというんだろうか。
特に最後のセリフ。上条の言葉。


「・・・・・まったく勘違いだってわかってんだけど、紛らわしいのよ、あの馬鹿」


美琴はため息をついた。赤くなった顔が元に戻るまで、どれくらいの時間がかかるか予想もできなかった。

5巻 p160 Aug.31_PM01:04

ちなみに、この辺から、、、、美琴が上条への恋心を意識し始めて、いい感じですねー。うんうん。でも実際には、外伝を考えるとインデックスと出会う前から明らかに、運命の出会いをしているんだけれどもねー。ここの美琴の上条当麻への恋は、ハーレムメーカー「に対して好きになること」のキーポイントの一つです。基本的に、ただ単にストレートに好きになる、のはわからないでもありませんが、自分の人生に劇的にかかわる男の子を、しかも身体を張って助けてくれた上に、その助け方や存在のあり方が、自分の理想と重なっていれば、そりゃー好きになるって。美琴が可愛いので、問題ありません!といいたいところだが、物語上、「だれでも助ける」という性質は、「実は誰も特別と見出さない」という裏返しであるというメタな構造に、登場人物が非・自覚的ということなんだよね。とすると、その主人公、上条当麻の「その部分」は、彼の存在の根幹にかかわる部分なので、主人公の本質が理解できていない、ということになる。この「理解できていない」ことが補助線となって、正ヒロンイ(=正妻)と主人公の関係の唯一性が証明されるという流れになるんだが・・・まぁねぇ、、、それって、もうあまりに多すぎるパターンで、陳腐だよねぇ。古典的すぎる。古典は、骨太なので、だあからといって、つまらないわけじゃないが、「おおっ!」という驚きやセンスオブワンダーはないんだよなぁ。その辺が、この作者、惜しいと思う。


それに比較すると、西尾維新さんのキレは、鋭い。このメタな構造について、見事に自覚的で利用したのが、西尾維新さんの『化物語』ですね。この作品で、主人公の暦に対して、正ヒロインの立場にいるひたぎは、本来ならば間違いなく運命の相手である委員長こと羽川翼を押しのけて、その立場を獲得するんだけれども、「そのこと」・・・・つまり、主人公の暦が、まったきハーレムメイカーであって、「誰でも助けるという性癖」を持つという「助ける」という行為に、特別な「何かを選ぶ」という意味を伴わない人間であるということに、ヒロインたちは自覚的なんですよね。最初の最初でそれを自覚できなかった羽川翼は、それが故に、暦の恋人になれなかった。この「後悔」が何度も繰り返されます。このハーレムメーカーが誰でも人を助けてしまう壊れた人格であるということと、だからこそ、「正ヒロンイの座(=正妻)」ができにくいことを自覚して、いっきに暦を攻めた、戦場ヶ原ひたぎは、これまでの日常の楽園萌ワールドの住人の中で、もっともクレバーな人なのかもしれない。

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