『蒼海訣戰〜GOD SAVE THE EMPRESS』 納都花丸著 内戦というものの本質

蒼海訣戰 第6巻 (6) (REX COMICS)

壱代陛下が出てこなかったのが、さびしくて、涙が出ちゃうのだが・・・・うーんいいねぇ。よくできている。「内見矢の英雄」という主人公の兄の青春時代の話が、いやもーほんとよくできていて。なんというか、どういう物語なの?って言うと、ようはね、ライトノベル化した『坂の上の雲』ですっていうのが妥当な感じ。いや、ほんとこの辺のドラマツゥルギーをとても分かりやすくへいいに、感情移入できるように作り上げているエピソード群は、いいなぁ、好きだなぁ、、と思わせます。青春時代・・・・士官学校で、心から尊敬し合った同期同士が、国の在り方を分けた内戦で殺し合う・・・泣けるなぁ。負ける方のセリフがまた泣ける・・・・。

「決着がついて、津州がまた一つの国にもどったとき 前より強うなる 理想の国家の形が違っても、目指すところは 同じやっちゅうことや」



p153 内見矢の英雄


もうすぐ『中原の虹』が読み終わるのだけれども、やっぱりね・・・近代化の大きなテーマは「分裂と統合」であって、理想と思うところが違う同じ国の人々が殺し合いながら戦いながらも、それでも、列強の植民地にならず自決して、統合できるかどうか?ということが、試されているんだと思う。それが、世界であり歴史ってやつなんだろう。究極的には、分裂・・・・つまりは、理想と思うところ強く希求し理想のために命を書ける諸勢力、個人、組織がいなければ話になりないが…しかしその対立が極まった時、第三者、外部からの侵略や脅威に対して、どうやって統合するか?ってのが、勝負。そのタイミングを間違うと、簡単に国は消滅する。その大きなマクロを背負い、理解し、統合に向かって自らを捨てることができるような個人や組織がいたかどうかってのが、重要なポイントなんだよね。外部からの侵略がなかったら、とか、そういうのは、もちろん論理的には正しいけど、世界の歴史の中で、そんな前提条件はあり得ないんだよね。だから、激しく対立する権力の奪い合いと嵐の中で、それでも、全体の統合というものをイメージできるものがいるかどうか?ってのは、本当に重要なことなんだなーと思う今日この頃。いやまー『中原の虹』って、フィクションなんで、それを現実のように誤解しちゃーいけないんだけれども、でも国民党の宋教仁の演説のシーンには、涙が出たよ・・・。なんだか、樹なつみさんの『花咲ける青少年』の最終巻のルマティの空港での演説を思い出したりした・・・って、なんでおれってこういう時に思い出すのが漫画ばかりなんだろう。あっ、と思ったら思いついた映画だと、『Bulworth』やフランクキャプラ監督の『スミス都へ行く』の上院での演説シーンとか、『デーブ』の議会の演説のシーンだなぁ。

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