『偽物語(下)/最終話 つきひフェニックス』 西尾維新著  

偽物語(下) (講談社BOX)


評価:★★★★☆4つ半
(僕的主観:★★★★★5つダントツLOVE!!)


「たとえ偽物だらけであろうとも-------僕は世界を素晴らしいと思う」by暦

p320


■非常によくある仕掛けの構造なのに、なぜかそれをメタ的にひっくり返している印象が、とってもポップで軽くて不思議です

偽物語完結です。まだ二話分続くらしいですが、とはいえ、当初構想上は最終巻です。いやもー、超絶に好きです。。。発売日を指折りにしても、待ちに待った日が海外出張と重なって、胸の中で号泣したほどでした。久々の自分の中のウルトラ一押し作品。こういう愛しきっている物語は、待っている間もせつなくて、うずうずして、じゅくじゅくして(笑)たまらないですねもー。『化物語』からずっと見つけるたびにすぐ読んでいますが、全く期待を裏切らないクオリティを連発し続けていて、もうドロドロのぐっちゃぐちゃに好きです。なんなんだろう?。いや、セリフ回しと小説がとても上手だということは確かに特筆するのですが、いってみれば、僕の「ああこれはマイナスだなーと思うセンサーに引っかかる度合い」がとても多い特徴のある作品なんですよね。上げてみると


1)ハーレムメイカーの倫理的な欺瞞部分としての、いくつもの女の子を宙ぶらりんにしておく物語構造
  (だってそうだよね?暦あまりに、ひどくねー?浮気し過ぎ(笑)。)


2)主題というものが不明確
  (というか僕にはいまいちあるようでないようではっきりわかりません)


「にもかかわらず」そんなこたぁーどでもえーんだ、おもしれーんだーという、パワーに満ちた小説なんです。いや、たぶん、いっけんこういったマイナスの構造(=現代にとてもマッチした構造)を維持しながらも、文脈で、中身で、主人公の本当の内心で、これらの問題点をどっかで克服というか、解消しているんだと思うんですよ。言葉にならないけど、、、だって、俺のハートが暦のこと大好きなんだもん!(笑)。実の妹に、あーんなことや、こーんなことを連発しまくる鬼畜やろうなくせに(笑)。ひたぎという可愛い彼女がいるくせに、理想の女の子は委員長で、結婚するならロリの八九寺と叫ぶ、非倫理やろーがですよ?。もうなんか、納得なの。いや、もちろん、いろいろ未来を考えると、そのままでどうよ君?と思う部分は無きにしもあらずだし、、、、でも、この時点を切り取った小説としては、うん、もう心が納得なんですよ。いやーいい話やー(苦笑)。たぶん、メタの部分で、様々な通俗の萌えとかライトノベルの現代的文脈をひっくり返すところまで考え抜いていて、その上でそれを主題とせず、戯言のように言葉遊びで、その真剣度合いをかくしている・・・というか、それこそ、小説で遊んでいる、という感じの小説なんです。うん、まさに200%趣味で書いた小説、というのがとても分かる。物凄く考え抜かれている割には、語りたい主題やメッセージがさっぱりわからない。少なくとも僕は明示的には読み取れない。けどその、ポップな軽さが、この小説に、とても特異な雰囲気を与えている。ライトノベル系統が好きな方はぜひ一度読んでみることをお薦めします。


■これをライトノベルと呼びたくない・・・?のか?

ライトノベルというカテゴリーに特にマイナス感を覚えているわけではないんですが、いつも思うのは、この作品はこのカテゴリーに入らないよなーと思う。自分なりの定義があるわけではなく、ただの「感覚」なのですがそう思ってしまう。なんなんだろう?。何が違うんだろう?。そこまで、ライトではない印象があるんですよねー。とはいえ、この領域のカテゴリーも複雑多様化して、様々な作家を輩出し始めて、それなりに成熟し始めており、もう軽くひとくくりにできるものでもなくなっているんですよね。もう少し自分の中で熟成させてみます。なんだかねー、、、たとえば、伝奇ロマンとかいっている奈須きのこさんの『空の境界』とか、確かに、もう「奈須きのこ」さんの作品であって、独特の世界観がある・・・・から、ライトノベルとよばにくいのか?・・・うーん分からない。いやまー何がいいたいかというと、なんとなくわかってきた、、、そうか、「ある基準」を超えると、そもそもカテゴリーという枠を超えるオリジナリティを感じるものなので、一つのジャンルで言い難くなるんだな。栗本薫の『猫目石』とか、推理小説だ?といわれると、たしかに名探偵・伊集院大介シリーズなんですが、でもあれって違うよなー。とかそういう感じ。ああ、わかってきた、そうか、そうだライトノベルを低く見ているからとかそういうことではなく、ある作品は、その作者がちゃんと世界観を作り込んで基準値を超えると、カテゴリーで話がしにくくなるんだ。つまりは、そういうレベルだってことだ。なっとく(自分の中で(笑))。

空の境界 上 (講談社ノベルス)
空の境界 上  (講談社ノベルス)


猫目石〈上〉 (角川文庫)
猫目石〈上〉 (角川文庫)



「他人じゃありません。家族です。」by暦

p310


この話の流れは、もうウルトラ感動したよ。もうよくあるテンプレートの「正義と悪の二元論」による説得&反論、しかも反論はメタなのをさらに封殺している中で、「これ」がくるんだもの・・・。実は、僕がいつも最後に行きつくのもこれなんだよなー。うんうん。たぶん、矛盾多い話なんだと思う、理論的には。でも、これって、とても(人類史的に(笑)伝統的に現実的な結論なんだよな、と思うんだ。


いや、ほんと、いーわ。


主題というほど明確ではないので、穴があるちゃー穴がありそうな感じなんだが、物語として、言いきられてしまうと、このテンションで読んでいると、僕はもう感動するしかないね、これ。非常に堪能いたしました。まだ来年二2冊出るようで、それだけで、人生を頑張って生きるかいが生まれます。西尾維新さんは、戯言シリーズを2冊ほど読んで、さっぱり面白くなく&意味が不明だったんですが、この作品はピンとというか焦点がズバッとあいました。そして、その面白さに、脱帽です。

クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)
クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)


これって、もっと読み進めれば面白いのかなー。面白そうな感触はするんだが、2冊読んでも、面白さが始まらないんだよー。。。。誰か魅力を教えてください。・・・これほどの作品を書くんだから鑑賞のポイントで、魅力が変わると思うんだよね、、、僕が読めていないだけの可能性が高いと思うし。


追記 
genesisさん、海燕さん、素早い反応ありがとうございます。うむ、なるほどーと思います。僕はそもそも本格が好きじゃない、というジャンル的な好き嫌いと、そもそももともとの王道のずらしという意味で登場した部分が評価されている最初の部分は、もともとの王道自体をよく知っていないと、???ってなって当然ですよね。ふむ、そういう風に読んでみようと思います。