『一勝九敗』 柳井正著 店長が一番偉く、現場にとって「到達したい上がりのポジション」でなければならない

一勝九敗 (新潮文庫)

この古い本をなぜいま読むべきか?については、たぶん分かる人は、よくわかると思うので、そこは割愛。さて、興味深かったのは、彼の店舗政策の部分。店舗の「店長」が一番高給取りで、現場が目指す最後の「上がり」のポジションであるべきという点。僕のブログを長く読んでくれている人は、僕が日本社会の現場とエリートの解離が現実無視を生みやすい風土があるという部分に興味を持っているというのは分かると思います。ようは、軍隊でいえば、軍曹は、兵卒から入った人の「上がり」ポジションですが、その上の少尉は、幹部候補生にとってはスタートラインに過ぎません。こういう風に現場を動かす専門者と、現場を一部のミクロとしてとらえ、小さなミクロをすべて合わせたマクロのビジョンを描きコントロールする人材は全く質が違います。それが故に、こういう組織体系が、全世界の軍隊で生まれたわけですが、、、、中央集権型の組織というのは変化に弱く、現場の即応性が失われて官僚化するというのも組織論の常識です。この矛盾をどう解くか、というのが組織運営に関する大きな命題なのですが、細かく乗っていたわけではないですが、非常に彼の指摘は重要で、なかなか考えさせられる気がしました。

ちなみに成長物語としても面白いので、物語小説としても(笑)十分面白いと思うので、万人におススメです。また、急成長したが故に、現場の小さなレベルから大企業の運営までを短期間に駆け抜けただけに、それをコンパクトに、わかりやすくつかめており、「急成長するってことがどういうことか?」ということを、非常によく分析されていて、わかりやすく面白かったです。また、既得権益にがんじがらめになった日本で成功するには、という最もシンプルな問いもちゃんと答えており、まさに結局のところ、経営の奥義や、やらねばならないことは、いつまでたってもそんなに変わるものではないんだな、と思わされました。そして重要なのは変化についていくこと。もっとも、それが一番難しいのだけれども。


小説 後藤新平―行革と都市政策の先駆者 (人物文庫)

同じ時期に後藤新平の小説も読んでいたんですが、彼がプロジェクト型の仕事を、歴史が変わるほどに成功させてきた・・・ようは、台湾の植民地経営や、満鉄の経営、関東大震災後の東京の都市計画のことなんですが、そのすべてが、優秀な人材を広く抜擢して、本人さえ知らないままに最高級の待遇(官僚的な仕組みからはあり得ない高給)を与え、自由に行動できるフィールドをつくるというやり方を貫いており、、、、逆に言うと、そういった抜擢をごり押しで行って最高待遇を与えないと、異能がフル活動して、あり得ないようなブレイクスルーや改革を実施するtことってのは出来ないんだ、ということが良くわかった。これは非常に興味深かった。