『デビルマン』の物語類型の系譜〜この系譜の物語を願く描きだすとなぜつまらなくなるのか?

デビルマン (5) (講談社漫画文庫)
デビルマン (5) (講談社漫画文庫)

こういう考え方はよくないとは思うのですが・・・まさか『デビルマン』を読んだことがないなんて、人いないよね?、、、とか傲慢というか疑ってしまいたくなるほど、この作品は「必須」な本です。日本エンターテイメント史上に燦然と輝く綺羅星であり、あらゆる物語の原型の一つとも言いうる作品で、それを、たった5巻にまとめ上げた荒技は、もう何と言っていいか分からないほどのパワーです。善と悪を巡る志向を極限まで追いつめると「こうなります」というもので、そのテンションと描いているものは、聖書の黙示録にだって劣らない、、というかまさにそのものを描いている、同じものを見て描いているといえると思いいます。何も難解な黙示録の予言を読んだり、難しい宗教の教義を説明してもらわなくとも、これを読めば、その確信が感じ取れるはずです。そう、理解ではなく、「感じれる」ところが永井豪さんの凄いところ。あの人は、掛け値なしの天才です。


ちなみに、友人と話していたのですが、このデビルマンの系譜の物語で、それを描ききっているものとしては、萩原一至さんの『バスタード』と三浦健太郎さんの『ベルセルク』ですね。この作品の、天使の降臨とグリフィスの「触」までの素晴らしさといったらありません。それほど、人間なるものと悪の対立による黙示録状況の出現というのは、素晴らしいテンションを人下にもたらすのです。


聖書を「つくった」ニケーア公会議で、この黙示録の編を入れるかどうか・・・・えっと何年だったかなー物凄い論争がキリスト教世界ではあったのですが、それでもやっぱり入れたのは、人間世界を、人間を支配するためには、「時間性のエンドポイントを人に喚起する」ような思想というかイメージは、人間の動機を駆動するのに、物凄く有用なんですね。これがあると、説教や教化も凄くしやすかったと思われます。・・・・けど、この時間のエンド(=終末)を想定すること、、、すなわち、時間性に直線と無時間を作り出すことは・・・・意味が伝わるかな?、、、、えっと、エンドを想定すると、現在からエンドに向かっての直線の時間感覚が想定されます。そして、その直線の「-へ向かう」時間は、逆転して「目的に向かって」ではなくて「目的から」今の存在の意義が確定されるという時間感覚に変換されます。これが、キリスト教の要諦であるコーリングの思想ですね。そして、時間性のエンドポイントとは、「無時間」の時間の想定であって、、、、それが、あのデビルマンの最後の「あの」シーンに当たります。すべたがあるが、すべてがない、まったき時間、、とか、宗教ではよく表現しますね。・・・・・意味不明になってきた。えっとね、宗教なんかで最後に出てくる奥義なんかの感じが、デビルマンには、たった5巻で完璧に表現されているところにこの凄さがあるってことが言いたかっただけです。・・・ようは、すごい!と。読んだ方がいいよ!とそういうこと。


そしてこの類型・・・・神と悪魔の物語、善と悪の逆転の物語、黙示録の物語、人間と悪魔の対立の物語・・・・言い方はいろいろありますが、それを長い尺で描いていてそれぞれのスタイルで追及しているのが、『バスタード』と『ベルセルク』ですよね。しかし、うん、この作品は、黙示録的状況が出現した以降、一気に物語の内圧が失われ「つまらなく」なり惰性が続きます。これはなぜか?。


って、抽象的には簡単な話で、「時間の終着点(=黙示録)」を描いてしまえば、そもそも「その後の時間」というのは、「黙示録に向かうまでの時間」に比べれば、全く意味を失うのは自明ですよね。たとえば、宗教なんかで人を勧誘する時に、「世界は滅びるんです!!!」といえば、「いつだ??」って怖くなって人は球威され動機づけられますが、「いやも、世界滅びちゃっているので、今はその後の終わりなき日常の時間ですよ(笑)」とかいったら、動員されないですよね。まさにそういうことで、時間にテンションが失われるに決まっています。黙示録とは、二元論の究極の表現で、「その対立」に意味があるからこそ、たぶん、面白いし、意味を感じるんだと思うんだよなー。だから、「それが終わった後」は、だってもう「終わった」あとなんだもの。

さて、僕も友人の意見と同じで、『ベルセルク』と『バスタード』の後期は、非常につまらなくなっていると思いますが、この理由は、なぜだと思いますか?。もちろん抽象的にいえば、二元的対立のドラマトゥルギーが失われれば面白くなるのは当然ですが、、、、ここをもう少し敷衍して、歴史と無時間性の問題につなげていきたいと思います(多分、続く)。そうここで、『風雲児たち』とか『銀河英雄伝説』とか、『グインサーガ』が出てくるんですが・・・・まぁそれはあまりに長くなりすぎるのです。とりあえず今日はここまでです。ちなみに、課題図書の、3冊は・・・いや、だれにいっても、読んだ方がいいぜ?とは言うと思うくらい面白いので、何も買えとは言いませんが(僕のところでアフリエィトで買ってくれるうれしいですが・・・)満喫で読むことをお薦めします。素晴らしいですよ。


ちなみに、本当にこのことが勉強したい人は、「終末論」についての勉強とか、キリスト教グノーシス派の研究とか、そういうのをすると、面白いですよ。


ベルセルク (1) (Jets comics (431))

BASTARD!!―暗黒の破壊神 完全版 (Vol.1)