『サマーウォーズ』 細田守監督 現代の日本を希望を持って描いている

評価:★★★☆星3つ半
(僕的主観:★★★星3つ)

何とか時間をひねり出してきて見てきた。ラジオのテストで、いずみのさんとLDさんとかなり細田さんの作品分析をしたので、こりゃーいかなきゃなーと思い。一言でいうと、物凄く面白かったです。アニメ映画としては見て損はしないし、ファミリーでも見れるし、いや本当によくできている。『時かけ』もそうだけれども、あまり劇的に感情移入を誘うような内面の深みもなければ、SF的な大きな物語も志向しないという、舞台がとてもこじんまりしている作風の中で、これだけ盛り上がる作品に、、、、しかも90分という短い時間で内容を詰め込んだ力量とエンターテイナーとしてのセンスに、脱帽です。素晴らしい作家ですね。あまり激しい宣伝や派手さを感じないが、口コミとかでゆっくりと売れそうな気がする作品だなぁ。なんというか、ある水準を群抜いている。脚本の素晴らしさ、その見事な構成力は、脱帽するしかないハイレベル。見事。


・・・といいつつ、物凄く鑑賞後の後味も最高で、涙出るほど感動するんだけど、、、この人の作品は、どうしても僕の心に残らない。それがなぜか?ってのが自分でもはっきりと分かっていないので、これは後の課題だけれども・・・・。ただ、この人が、いずみのさんが指摘するように、あまり内面を説明しないで「行動」で状況を動かす作風を持っており、それを今回のような群像劇の手法で演出することからすると、僕のような「動機の感染」が起きる狂気を見たいと思うような観客には、あまりヒットしないのかもしれない。素晴らしい出来の群像劇の傑作である『タワーリングインフェルノ』や『ポセイドンアドヴェンチャー』は、その素晴らしさに感動するんだけれども、僕の中での位置づけは低いのと同じようなものかもしれない。一言でいうと、好みではない、ということ。

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ただ、勘違いしないでほしくないのですが、物凄く面白いです。特にこだわって、マイナスの評価をしている向きがあり(苦笑)、何も考えずに評価したら★5つ級に面白いので、物凄くお薦めの映画です。ちなみに群像劇の傑作と呼ばれるこの辺の作品は、『サマーウォーズ』と何の関連もありませんが(苦笑)、ぜひ余裕がある方は見ておくといいと思います。自分の中にアーカイブがあると、物事をより深く楽しめますから。キーワードは、「内面の描写」です。群像劇は、たくさんの人が集まって小さなエピソードを重ねることで状況を進める手法なので、主人公の内面をクローズアップして説明したりしません。この手法は『サマーウォーズ』でも使用されているので、そういった観点で見てみるのも悪くないです。この違いを抑えると、ハリウッドのスターシステムや昨今の日本の私小説の伝統に連なる、内面を執拗に追い詰めていく作品との表現上の違いが分かるので、興味深く感じられますよ。

ちなみに、新世紀エヴァンゲリオンの映画もそうなのだが、今の時代にふさわしいというか、シンクロなのか、様々な現代社会の問題点を詰め込みながら、すべてそれらを肯定的に描いて、非常に希望を感じさせる作品になっている。そういう意味では、まさに今の時代の作品だ。

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