読み終わりました。

ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉―鳥刺し男編

ああー素晴らしい。しかし読んでいて思った。ほぼ同じ構造の物語であるにもかかわらず、『1Q84』が素晴らしい理由を。『ノルウェイの森』もこの『ねじまき鳥クロニクル』も、両方ともに、直子とクミコという女性の謎を追うという形になっている。主人公の「僕」は、非常に村上春樹の類型的なキャラクターだ。この「僕」は男性で、救済を女性に求めて、、、、そして損なわれてしまった女性の謎を探し続けるという謎解きになっている。一貫して、男性の主人公である「僕」が、不可解な「愛する人」・・・・ベターハーフの内面の謎解きをし続けるという・・・そしてそれが救済であるという物語になっている。

しかし、同じ構造の物語でありながら、『1Q84』は、最初から青豆という女性が主人公になって、物語が駆動している。これは素晴らしい飛躍だ。なぜならば、『ノルウェイの森』と『ねじまき鳥クロニクル』の直子とクミコをずっと追い求める話を読んでいて・・・・ふと疑問に思ったんだ・・・いったクミコと直子は何をしていたんだろう?って、、、、何を思って、何を考えていたんだろう?って・・・それが描かれないのは、おかしいし不公平んじゃないかって。その疑問を軽々超えている・・・・最初の一読で、青豆の存在感に、彼女の動かす物語のエネルギーに引き付けられたのは、ベターハーフの「向こう側いにいる」物語が初めて描かれたからなんだと思う。


「誰かを心から愛することができれば、それがどんなひどい相手であっても、あっちが自分を好きになってくれなかったとしても、少なくとも人生は地獄ではない。たとえいくぶん薄暗かったとしても」

1Q84 BOOK 2