『「自分」を生きるための思想入門』 竹田青嗣著 「自分」を読み解くステップ第一段階

「自分」を生きるための思想入門 (ちくま文庫)

昔、岡田斗司夫さんが、「自分探し」というのは答えのない永久運動みたいなもので、僕はこれを「趣味」にしているといった、ことを言っていて偉く感心したことがある。趣味、自分探し。・・・・これいいフレーズかも。というのは、ダイエットと同じで、これはマッチポンプ型の永久運動で、「答えが出る」というものではなく、いつまでも同じ次元でものを考え続けるというものだから。「これ」と、現実で決断して行動しているところは、「位相」が違うんだ。同じものとして現実をとらえてしまうと、人生を消耗してしまい、貴重な自分の「生きている時間」を消耗してしまう。

けれども、人間にはステージというか段階みたいなものがあって、「こういうこと」をちゃんと抽象的に悩んだ経験がないと、そもそも頭が悪くなるし、なによりも、様々な人生の試練に会った時に、どう考えればいいのか?ということが分からなくなって成長や成熟が止まってしまう。いまさら30を超えている僕が読むと、内容的には原理的だし価値があるのだが、ようは「それくらいの悩み」はちゃんと超えて生きているのが当然のことなので、ちょっと個人的には・・・・と思うが、しかし、これは10代から20代前半ぐらいまでには、とても価値のある勉強だと思う。社会へ出る前に、これをくぐりぬけて、何かの行動にコミットしてそのことを試すような体験がないような人間は、あまりにも未成熟で、社会の中で生き抜いて幸せを追求することは難しいと思うんだよね。


就職活動でも、結局聞かれることは、「そこ」だもの。なんら劇的な経験がなくとも、現実に対してどういうスタンスで生きているがを見るからねぇ。こういうのできないと、そもそも「社会人」として、幸せに生きていくことができないので、就職とか考えなくても、まぁ必須だよね。同じ現実を生きていく競合(他者たち)の中で最も優れている人たちは、こういうことをそもそも小学生や中学しえの時に体感して、競争・・・・よりよく生きることを追求いうして生きているんだよね。そういうのに気づかないのは仕方がない。本能でそういうことができるのは、限られた天才たちだから。でも、社会に出る時に、「これ」が少しでも分かっていない状態だと、悲しいかな、まったく人生を損してしまう。「幸せ競争」で負けるのは、凄くさびしいよ。まぁ幸せは、内面の充実だから競争ではないとは言えるけれども、、、、人間が群をなして生きるものだから、それはしょせん競争なんだよ。まぁ他者ではなく、この過酷なマクロの構造との「戦い」なんだけどねぇ、本当は。

ちなみに、僕は、「このこと」を中学生の時期に、栗本薫さんと中島梓さんを通して、学んだ。同時に集中して読んだのは、ニーチェとコリンウィルソン。この読書体験が、僕の人生のほとんどすべての基礎といってもいい。けれども、あまりに難解で、いきなりそれをしろっていうのは、膨大な読書量と思索が大好きな性格でないと難しいと思う。だから、この系統の「自分探し」の手掛かりには、そのもっともやさしい導入書だと思っている、竹田さんのこの二作を上げることが多い。この二作は、とても抽象的で、「この手のこと」に悩みがないと、なにをいっているのか???というものだろうし、これが人生に実用的に役立つとは、分からないかもしれないが、、、、でも実用的な本は、後からいくらでも読めるし、社会に出て企業に勤めるのならば組織が研修とかでチャンスを必ずくれると思う。『7つの習慣とか』とかそういうの。くれないほどブラックならば、自分で勉強するしかないが。


自己実現系のモノや時間管理術、成功への本は、いくらでも本屋でベストセラーで山積みされている。けれども、こういった本はすべて基礎の哲学的な抽象度の高い議論に耐えうる頭脳がないと、表層のえさの成功だけを見てしまい、何を言っているかが全然わからないで、ただ単にやる気を上げるためのドラックにしかならない。それはアヘンと一緒で、習慣性のある麻薬で、何の意味ももたない。そのもう一段上の次元で読み込まないと、意味を為さないんだ。そのことが、この手の本の書き手は分かっていて、騙しで、金を稼ぐためにやっている・・・。なぜならば、そういった一段上の抽象志向は、社会人でい忙しい人に要求するのは、ほとんど無理だから。そのことを、よく覚えておくといいですよ。


ちなみに、これくらいやさしい本なので、・・・・そうだなぁ、自分の血となり肉となるには、2年くらいかけて、4-5回以上は読み込んでいないと、ほとんど身体には残りません。読書というか情報接種には、「自分の内面に刷り込んで浸透させるもの」と、「情報としてただ通り過ぎるもの」と二つあって、「自分を変える」ところまでやろうとすると、何回も読み込んで、書きぬいて、人とそのことについて話して、というようなその解釈の深い森に踏み込む努力を、相当研鑚しないと、ただの通り過ぎる情報になってしまいます。

なんとなく、僕のブログは、この手のことの需要が多そうなので、ちょっとおススメしてみました。

自分を知るための哲学入門 (ちくま学芸文庫)