『海の底』 有川浩著

海の底 (角川文庫)

評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★☆4つ半)


戦争系のということで、お薦めがあった有川浩さんの自衛隊三部作の2作目読了。


おもしろかったー。


この国の軍隊の警察の関係は、なかなか考えさせられるものがあった。いまちょうど、マブラヴオルタのSSの『帝国戦記』(bySamuraiさん)のNY編を読んでいて(これで3回目)、ここで、なんで帝国でクーデターが起きたのか?ということの根本に切り込む話があって、、、、この理由って、戦前の日本の若手将校の決起ととても似ているんだよね。そして、ちょうど今岡本喜八さんの『沖縄決戦』とか戦争ものの映画を同時並行で見ているので、「その流れ」を背景に見ると、文官統制が物凄い圧力を自衛隊と治安を維持する警察にかけていて、その職業人としての縄張り意識が強烈であるのは、物凄く現場を無視した苦しい仕組みではあるものの、我々日本人が、がWW2で得た教訓を、こういう形で表現しているのか・・・とちょっと、なるほどと思った。いまの現代の現場を無視したこの国の歪んだ自衛隊の在り方「だけ」を見ていては、「なぜそのような形になったか」なかなかわからないだろうなーと思ったよ。やっぱり物事は多面的に同時に違う時系列で感受しないと、わからないものってたくさんあるねー。こうした職業人としての、「自分たちの役割」のギリギリのところを意識しながら暴力を使うことが、きっと、それこそが、近代国家の本義なんだろうと思う。日本は過去が過去だけに極端に歪んではいるものの、、、。


それにしても、心理描写が繊細な女性作家的な描写がうまいのに、ほんと、見事にマクロのというか、、、、日本社会の組織の問題点がうまく描けるんで感心する。警察の現場に明石警部と警察庁の指揮官との会話には、しびれたねー本当に。『踊る大捜査線』のセリフを凄く思い出させる。




あとやっぱり、図書館戦争のスピンアウトでも思ったけど、この人って内面の心理描写がうまいなーと思う。ひねくれていた圭介の心の動きとか、凄くうまかった。


先日書いたんだけど、この人は「結婚以後」が凄くうまく描ける人。この人自身が(僕はよー知らないけど)幸せな配偶者との関係をもっていると推察できます。つーかそうでないとこんな、幸せラブラブっぷり書けません(笑)。この前に読んだ『塩の街』とこの作品では、まだ、「そこに至るまで」の話を書いている。すべて、かなり年下の女の子が、年上の職業人として誇りを持っている男性に惚れちゃうというお話になっているのが、ウルトラ甘酸っぱい。『図書館戦争』は、まさに「まんま」でしたよね。


別冊 図書館戦争〈1〉