『猫物語(白)』 西尾維新著  解決へ向けてのセカンドシーズン〜これぞ、ザ・ビルドゥングスロマンだ!!!

猫物語 (白) (講談社BOX)

評価:★★★★★星5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)


読んだ!読んだ!読んだ!! 


素晴らしい、超感動した!!!


あとがきで書いているが、いままでの作品が「ファーストシーズン」とすれば、これは「セカンドシーズン」の始まりというのは、まさに!だ。というのは、これまででの出来事は『あった出来事』なんだけれども、それについての、、、、つまりそれまでは妖怪の怪異という形で、それぞれのキャラクターの心が生み出してきたものをテーマに描かれてきたんだけど、ようはそれって、それぞれのトラウマでしょう。ようは「そういう出来事があった」で終わっている。けど、このセカンドシーズンは、その出来事を受けて、キャラクターがどうそれと向き合って、どう解決を志向するか!ってことを描いている。普通、、、、これだけ長いシリーズものになると、こんな途中から劇的に温度が上がったり、スピードのやテンションの上がる質的な転換を迎えないものなんだけど、、、すげぇなーこれ。


・・・・この感動、このすがすがしさ、、、、、すげぇ感動したよ、僕は。




それにねー名セリフの数々に、胸が震えた。



「じゃ、仲良くお胸の洗いっことかしましょうね」(ひたぎ)


「背中の流しっことかじゃないの?」(つばさ)

p70


って、これは愛嬌ですが(笑)。・・・いやーひたぎさんのウルトラ百合属性には、びっくりしました(苦笑)。



「羽川ちゃん。人は嫌なことがあったらどんどん逃げていいんだけれど、目を逸らしているだけじゃ、逃げたことにはならないんだよ。きみが現状をよしとしている限り、外から手出しはできないんだから-----------」


p174 暦の母親のセリフ

ああ、、素晴らしい、、、、。。。。「逃げる」ということは僕はずっと「前向きなモノ」と思っていたので、エヴァンゲリオンで使われた「逃げちゃだめだ」というネガティヴな表現にずっと違和感があったのだが、その意味がよくわかった。僕の考えていた「逃げるという能動的な行為」は、「自分のいやなモノ、いやなこと、自分自身のその気持ち」をちゃんと直視している、その上での「行動」なんだよね、だからポジティヴ。けれども、シンジくんがいっていたのは、逃げているんではなくて「目を逸らしている」んだ。ちゃんと拒否していないの。だからどこにも行けない、ネガティヴなものだった。ちゃんと「物事を直視する」ことができていれば、ちゃんと「拒否」もできる。それは、逃げても、けっしてそれ以上悪くはならない。


目を逸らして、「そこ」にいつまでもとどまるから、心理的にどんどん狂って壊れていくのだ・・・・。


この違いが、体感でわからない人は、きっと、生きるのが下手なんだろうな、、、と思う。あと、絶対に友達になれないな、、、と思う。「物事をあるがままを、あるがままに直視する」ことができない人は、現実をちゃんと生きていないで、「自分の幻想」を見ているからだ。思い込みと幻想のナルシシズムに生きる人とは、ほんとうの関係性を結ぶことも、他者と出会うこともなく生きていくんだろう…悲しいけど、そういう人は多い。だから、心理的な心の成長物語は、人間のデフォルトというか前提である「目を逸らしているもの」にどんなつらくとも、直視することという形をとるものなのだ。

ああ、栗本薫さんの傑作『いとしのリリー』を思い出した。。。あとは、『24人のビリーミリガン』だな。

いとしのリリー (角川文庫)

24人のビリー・ミリガン〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)


「美しくなくたっていい。白くなくたっていい。私はあなたたちと一緒に、汚れたい」


いつまでも、汚れを知らない少女でなんていられない----------私は汚れを知りたい。

黒くなりたいわけじゃない。

だけど、黒も白も併せて呑める。

灰色の大人になりたい。


p262 羽川翼


そう、、、、大人になるってのはそういうこと。


だけど伝わるじゃ駄目なんだ。

伝えなきゃ駄目なんだ。

返事をもらわなければ駄目なんだ。



p277 羽川翼


これって、何を言っているかというと、、、、、人は自分の思いや行動の「すべて」に責任を持って、その「最後まで」見届けないと、ダメなんだってことなんだろうと思う。良いも悪いも、価値もむ価値も関係ない。思ってしまったこと、行動してしまったこと、それが偶然奇縁でもなんでも、、、、そういう気持ちを持って生きなければ、何かに目を逸らして生きていくことになってしまう。それが。覚悟てっやつなんだろうと思う。まぁもちろん、本質的に自分にとって大事なことに絞ればいいんだろうけど、だいたいにおいて「自分にとって都合の悪いこと」に自分の本質や真実は隠れているものなんだ。だから、自分を直視したければ、自分が一番見たくないものを見ればいい(笑)。そして、それは、「自分ではできないもの」だから、他人との「対話」の中で見出していくものだ、、、というのも、カウンセリングの教科書みたいな流れ。なんか、この感じは、吉野朔美さんの『恋愛的瞬間』を思い出した。


恋愛的瞬間 (3) (小学館文庫)
恋愛的瞬間 (3) (小学館文庫)



それにしても、、、、、ちゃんとナルシシズムを打ち破る話ってのは、なんでこうも僕の心をとらえてやまないのだろう・・・・・本当に大好きだ!!!。素晴らしかったよ。これぞ、ザ・ビルドゥングスロマンだ!!!。