『必要とされなかった話』 三友浩平著 世界の残酷さを表す時の抜けるような透明感が・・・・ない

必要とされなかった話 (IKKI COMIX)

うーんいまいちだった。こういう世界の残酷さを告発する話は、結論的には、「だからどうしたの?」って思ってしまうんだ。

この話のあらすじは、ある村の穀物倉庫が燃えてしまって、どうしてもその冬を越せないので、「村人同士で必要な人を一人づつ選んでいく」行為を通して、「選ばれなかった人」を村から追放するって話。3万人にも及ぶ自殺者が出る無縁社会の日本社会には、とってもありがちな題材。その「選ばれなかった」そして村の外の森に捨てられた少年のお話。

こういうの読むと、、、、凄く後味の悪い「発想」なんだけど、ある意味、世界の真実を言い当てているんだよね。けど、それがどうしたの?っても思う。そんな「あたりまえのこと」いまさら強調されなくてもわかってるし、分かってない奴がいたらそいつはバカなんだから、そんな奴どうでもいいしさーと、ひねくれた気分になってしまう。僕が物語に癒しやわくわくする高揚感を求めているので、こういう系統の話はそもそも嫌いなのだ。

でもこの話を読んで、ほぼ似たような話をしているにもかかわらず、なぜ戸田誠二さんは、あれほどの鮮烈に感動するのだろうか?という義民が浮かんだ。系統としては似たようなものなんだよね。この世界の不条理を告発しているんだから。この「差異」に物語としての根源的な面白さの差異があるような気はする。少なくとも、この『必要とされなかった話』には、テーマ的に、そのアイディアの奥にある深さを僕は何も感じなかった。


『化けの皮』 戸田誠二著 権力というものの本質〜人間存在の矛盾
http://ameblo.jp/petronius/entry-10024840608.html


化けの皮 (Bunkasha comics)