『伝説の「どりこの」 一本の飲み物が日本人を熱狂させた』 宮島 英紀著

伝説の「どりこの」  一本の飲み物が日本人を熱狂させた



「どりのこ」って、知っていますか?



戦前は、ずいぶん有名な飲み物だったみたいです。なんというか、カルピスみたいなもんだと思う。日本オリジナルの飲み物。


聞いてみたら、年配の人は意外によく知っているようだった。


いわゆるマクロの「歴史」とは違い、こういう当時のものを追っていくのは、それはそれでとても興味深い。


意外に興味深いのが、この本は事実上、講談社の歴史を追うことになっていることで、著者は綿密に講談社に取材している。


けれど、これって角川書店が出している本なんだよね(笑)。それは?なんで??って思いました。意外に、そこらへんのとても興味深いです。


そして、どりのこの販売を中心として、近代国家の興隆期の企業の、なんというか、不思議な共同体的なあり方が垣間見られて、非常に面白かった。あっと、詳しくは読んでもらえればわかるですが、大日本雄辯會講談社には「少年部」という子どもを雇う部署があって、「学校出ていなくても偉くなれる」という野間社長の理念の下、社員見習いをさせながら教育をしていたという部署があったんですね。これ、凄く面白い。教育制度が整っていなかった近代化初期の国家では、こういうのありなんでしょうね。野間社長を父親とする、不思議なムラ共同体的な姿が垣間見れます。戦前の企業には、こういう企業イコール家父長制と言い切っては語弊があるでしょうが、社長を父親とする共同体を形成するような家族的な仕組みを持つ企業が多数あって、そういうのって、理想の実現を目指す宗教共同体みたいな雰囲気を漂わせていて、近代後期の株式会社しか経験にない僕からすると、不思議な魅力を漂わせていて、大正ロマンではないですが、そんな香りを感じさせてくれます。