『ななしのアステリズム』 小林キナ著  名前のつかない感情を

ななしのアステリズム(1) (ガンガンコミックスONLINE)

客観評価:★★★★☆4つ半
(僕的主観:★★★★★5つ)

少し前にTwitterで、百合やBL的な話は好きなんだけど、最初からそれ前提となってしまうと、「そういう物語」として構えてみてしまうので、まだ「名前がつかない状態の感情」みたいな物語を見たいんだよなぁと、意味がわからないことをぶつぶつつぶツィートしてた時に紹介してもらったもの。自分の言葉でうまく説明できない感じなので記事を書いていなかったのですが、完結してしまったし、紹介しておきたかったので、感想の羅列になってしまうんですが、記事を書きます。とても、とても、好きな作品なので、おすすめです。紹介してくださった方に多謝。1話でほとんど関係性がクリアーになりますが、「それ」を知らないで読むのがいいので、ネタバレをそれほど気にするものではないと思いますが、まずは好きか嫌いかぜひとも1話を読んでみることを薦めします。


http://www.ganganonline.com/contents/nanashino/


ガンガンオンラインで、1話が見れますのでぜひ手に取ってみてください。ちなみに、以下ネタバレです。


さてどんな話かというと、主軸は、登場する3人の仲良し女の子が、それぞれ、司→撫子→琴岡という風に片思いの円環になっているお話です。のちに男の子2名も巻き込んで、とても複雑関係になるのですが、これが混乱しないで読ませるんだよね。それだけで大した力量なんですが、それがまたせつないんですよ。要は仲良し3人組で、それぞれに好きな相手が、そのメンバーのうちの一人で、だれも両想いになれない一方通行。


上にも書いたんですが、最近よく見ててそもそも百合やBL的な話は好きなんだけど、最初からそれ前提となってしまうと、「そういう物語」として構えてみてしまうので、まだ「名前がつかない状態の感情」みたいな物語を見たいといつも思うんですね。異性愛が、同性愛が、前提の世界に入って物語が進んでしまうと、何か「世の中にルールというか共有された常識」があるような安心感で話が進んでしまう。けれど、ほんとうは、そうじゃないですよね。もちろん「そうじゃない」から、実は物語なんて簡単にはじまらない。異性愛の世界だって、自分が好きになった人が、自分を好きになってくれるとは限らないわけですから。でも、そういう奇跡が僕は恋愛ものの醍醐味だと思うので、「そういうの」が見たいんだなーといつもしみじみ思うんですよ。そして、「名前のつかない感情」を丁寧に、具体的に深堀していくという意味では、要はキャラクターと関係性の描写がうまいということなんでしょうが、仲谷鳩さんの『やがて君になる』と小林キナさんの『ななしのアステリズム』ダントツに好きで、繰り返し繰り返し読んでいます。ちなみに、がっつり、百合とかBLが大前提の世界からスタートして、奥底まで行く話も好きなんですけどね、もちろん(笑)。

やがて君になる (1) (電撃コミックスNEXT)

ちょっと時間をおいてしまったので初見で読んだ時の衝撃とか思いが消えてしまって直ぐ文章にならないんですが、いくつか覚えてるのがあって、3人の中で琴岡みかげという子がいて、この子って、僕が好きなタイプじゃないんですよね。性格もきつそうだし。なんというかおしゃれして、男の子と遊んで、というリア充系統で外交的な人は、男女ともに苦手。マンガとか、そんなの興味ないと切り捨てられたら血をはいちゃうよ!とか思っていたんですが、、、、この子のけなげな姿を見てたら、胸がぐっとなってきてしまって。どんな人でも、「届かないもの」に憧憬を持ってしまったら、そうなってしまうよね、、、と胸がこう、、、じわっと。。。普段好きじゃないタイプだけに、よけいにじわって(笑)。こんなのせつなすぎるじゃん。この子こんないい子なのに!!!!!とか思って、なんか胸かきむしちゃって。血吐きますヨ、ぐはって。3人の片思いを描いたら、通常は主人公軸になってしまって、3人とも描き切れないものなんですが、筆者はこういう微細な関係性を分かりやすく描けるんですね。なので、それぞれに感情移入できるので、それで余計にっちもさっちもいかなくなる(笑)。


ちなみに、僕が好きなのは、鷲尾撫子。。。。なにこれ、こんなクールでかっこいい女の子にツインテールとかさせて無表情で見られたら、ぼく、、、泣いちゃうよ感動で!!!。というか僕はクールでかっこいい女の子好きなんだよなー。この子、背が高いから司に話しかけるときに見下ろすような感じになってそれがまたかっこいいんだーー。


ああ、、、そうか、、、なんかわかってきた。司って最初主人公格で出てくる女の子は、ボーイッシュで男の子っぽくて、『恋愛ってわからない』という感じの女の子。鷲尾は、王子様的なポジションで漢気あふれるんでなんでなかなか似合わないロマンチックな女の子になりきれない、そしてみかげは、外交的でコミュニケーション高いだけに本当になりふり構わない恋ってのがわかっていない・・・・・という、それぞれが「名前のつかない感情」を自覚していくプロセスを、丁寧に描写されているから、悶絶するんだろうなー。


これは、男の子二人も、そう。ただ、ちょっとだけ不満を言うと、「この先」が見てみたかった、というのはある。5巻の最終巻で、関係性はとても深堀されているけれども、3人は3人のまま。この年齢の結論としては正しいし、これできれいに終わるのはわかるし、物語的にも決しておかしくない。なぜならば、この作品のテーマが「名前のない感情」に名前を付けていく過程で、それを落としどころを見つけていくという意味では、3人が3人のままでいられる方法に着地点を見出すのはわかる。でも、できれば、「この先」が見てみたい。3人を、5人を、とても好きになったからこそ、先が見てみたかった。そして、作者は絶対にその射程を考えていたと思う。特に朝倉恭介君の設定とか闇が深そう。けど、たぶん長期連載にするには、早い段階で男性二人のテーマが出てきて、複雑になり過ぎたと思う。なので全部を描こうとすると話が分散してしまっている。確かに意図はわかる、、、わかるだけに、好きなだけに、もう少しと願ってしまった。けれども、テーマ的には堂々と完結しているので、僕は凄く好き。この人は、きっと百合でも、普通のラブコメでも、なんでもかけると思う。素晴らしい物語作家になる可能性を秘めていると思うので、仮に百合が好きでも、次は男女のラブコメを書いてほしいと思う。そうすると、物語作家としての幅が格段に広がると思う。そしたらきっと、「この先」も描ける作家さんになると思うんです。



先にも書いたのですが、最近、海燕さんにたくさん教えてもらったりして、たくさん百合の作品を読んでいたんですが、大沢やよいさんの『2DK、Gペン、目覚まし時計。』とか、奥たまむしさんの『明るい記憶喪失』とか、缶乃さんの『あの娘にキスと白百合を』、くずしろさんの『ラブデス』『犬神さんと猫山さん』、サブロウタさんの『citrus』、タチさんの『桜Trick』『双角カンケイ』、仲谷鳩さんの『やがて君になる』などなど・・・・ここに上げられないくらい他も読んでいますが、この辺最近読んでますねー。

あの娘にキスと白百合を 1 (MFコミックス アライブシリーズ)


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citrus: 1 (百合姫コミックス)


そういえば、先日FGOの話を友人としていたら、マスターは男一択でしょうっていうんだ、あっ、彼は男性ね。理由は、マシュとイチャイチャするときに男の姿でしたいんだ!といわれて、凄い驚いたんですね。というのは、僕、ペトロニウスは、ぐだ子(女)一択で、女の子どうしてイチャイチャしているのを見るのが、たぶんスゴイ楽しくて、自分も女の子の方に感情移入している。フーム、この思考の差は、どこから来るんだろう?と、いろいろ考え込んでしまいました。



・・・・・とりあえず、『ななしのアステリズム』。面白いので、本当におすすめです。


ななしのアステリズム 5巻 (デジタル版ガンガンコミックスONLINE)