『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』 ふろむだ著 人生が運によって支配されているゲームだという認識が人生を分ける・・・けど

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

評価:★★★★☆4つ半
(僕的主観:★★★☆3つ半)

『分裂勘違い君劇場』が好きでよく読んでいたので、本を出しているのをアマゾンで見つけて、買ってみました。この人が社会をどうとらえているかが、よくわかって、いい本でした。一言でいえば、人生は運によって支配されていて、コントロールができないというゲームのルールを知らないと、ほとんど勝てなくなるくそげーだ、ということ。そしてもう一つこれが大事なのですが、人間にとって最も強い欲は「自己コントロール感覚」であって、自分で自己と世界をコントロールできないと、劇的に生きる気力がさがっり幸福度が下がる生き物なので、このゲームのメタルールをほとんど受け入れることができない。つまりは、人は真実を受け入れられない、現実を直視できない生き物であること。


この社会認識を、僕が、そうだよね!と賛成するのは、これまでブログを読んでいる人はよくわかると思います。そして、人間の認知の構造が、非常にてきとーなもので、事実に基づいてなど全くいないので、筆者が言う錯覚資産、、、相手に「勘違いさせる力」を増やすことを努力しないと、人生はうまくいかない、という話です。いやはや、ブログも凄い面白かっただけあって、わかりやすいし、これ、素晴らしかったです。


が、、、、個人的にはいま一つ。なので主観評価は低いです。というのは、それなりに成功している、、、というか、生き残っている社会人にしてみると、経験則的に当然のことだと思うので。「具体的に有用ですぐ役に立つ」ツールになっていない感じがして、ちょっとすぐ役に立たないなーと思いました。素晴らしい認知バイアスの知見が、物凄くわかりやすく紹介されているので、素晴らしいちゃ素晴らしいのですが、実際の社会での具体的な運用方法として、もう一歩ほしい感じがしました。


ふろむださんは、いくつか興味深い言い方をしていて、


・人間は、「一貫して偏った間違った物語」に説得力と魅力を感じる


・人間は、「バランスの取れた総合的な正しい判断」は、説得力がなく、退屈で面白くない


なので、具体的な行動では、


・錯覚資産を増やす、単純化して、言い切って、割り切った「一貫して偏った間違ったストーリー」を他人にはいいまくる(錯覚資産を増やす)


・自分自身の人生に関する選択、決断については、徹底的に「正しい判断」をすることにこだわる


ああ、覚悟の面では、いい点を突いているな、と思いました。これは醜く卑劣な生き方だということ。ただし美しい生き方をすれば人生は確実にうまくいかない。ちなみに、ここが最大の主張なんですが、「正しい判断」をどうすれば具体的な場面に当てはめてできるかが、うまくツールとして描かれていない気がして、それだと有用じゃないかもなーと思いました。いや、まぁ、個々の場面で千差万別なので、自分で考える、というのが答えだろうから、そんなもの書けないんだろうと思うけど。ようは、錯覚資産で、認知バイアスがかかっている「物事を」、特に「自分自身」について、冷徹に自己分析して、現実を直視しなければならないということですね。


ちなみに、この本を読んで、え!そうだったのか!と思う人は、すでに、だいぶ社会や組織で負け組というか、だいぶダメな人だと思います。まぁ、自己啓発系とか、すぐに何億円儲かる!とか言うのとか、今すぐ会社を辞めろ!とか言うのを、真に受ける人は、完全に搾取される側の人なんで、まぁそういう人は多いんですが、、、そういう人は、人生難しいよね、と思います。そうでなくとも「人間は信じたいものだけ(幻想・妄想)を見て生きる生き物」なので、それに対するバイアスというか、そうはいっても現実はもう少し身もふたもなくて、、、、とワンクッション置けない人は、なかなかそこから認知というか認識を一段深めるのは、難しいですよねぇ。でも、こういうのが世の中の常識として共有されていくのは、とてもいいことなので、こういうわかりやすい本は、素晴らしいとは思います。まぁ、この本は、ダニエル・カーネマン認知バイアスの、わかりやすい導入というか、社会での使い方といった位置づけでしょうか。でも認知バイアスとか行動経済学とか、こういうのも普通に新書というか、こういう手軽に読める本になってきたんだなーと、ちょっとしみじみしました。認知バイアスの問題は、なぜ、こんなにフェイクニュースが、強く伝播するのかの分析が、これでされていますね。認知バイアスやカーネマンは、これからの社会を見るにあたって必須の知見になっていっているので、できれば、この本を導入に『ファスト&スロー』などを読んでおくぐらいはしておきたいところ。難しいですけどね。


ちなみに、下手な自己啓発の本よりも、はるかに僕は世界の真実というか、この世界の身もふたもない、、、、「人生は運で支配されていてコントロールできない」というのは、なかなか認めたくないだろうけど、まぁ社会人それなりにやれば、ふつうわかると思います。ここで錯覚資産が最大化するように、、、、言い換えれば、相手に「勘違いさせる力」を増やすように努力しなければ、なかなか成功はおぼつかない、、、、でも、これって、何というか当たり前の話ですよね。古い人生訓的に言えば、


(1)「地道な努力で実力をつけて実績を出していく」


ことと


(2)「それ(実力や実績)があっても、それがなくても(これが大事)自分がやれるようにアピールする」


というのは、車の両輪みたいなもので、どちらが抜けても人生はうまくいきません。社会人だと、これ経験則的にみんな知っていると思います。それなりに生き残っている人は。


あ、、、そうか、、、そういう意味では、(2)が先に来ることが多いんだよ!ということ、(1)の後に(2)が来るわけではない、という認識は、この本の最大の着眼点かもしれない。でもこれもサイクルで回るものなので、(2)の後に、何にもできなければ、結局は、(1)も同時に動いていないと話にならないんですよね。(1)だけに固執している人は、人生うまくいかなくいかないのが悲しいところ。



あ、そういえば、これ奥山真司さんの自己啓発系?の本になるのかな、、、戦略を描いた本でも、おーなるほどーと思いましたねぇ。順次戦略と累積戦略。自己啓発系、、、、ではないのかなぁ?、とはいえ、めずらしくこれは記憶に残っている。ふろむださんのこれも、人生の姿勢としては、とっても大事なもので、いい本でしたー。


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