『不朽のフェーネチカ』 竹良実著 極限まで鋭くなった覚悟を持つ人間を描く

不朽のフェーネチカ (アフタヌーンコミックス)

評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

生前列聖というありえない快挙に驀進中の修道女シスタードロテア。しかし彼女の激しい行動を、列聖のための野心だと暴きたいハイエナ記者が、彼女の過去を探食っていくというミステリー仕立て作品。短い短編だが、見事なまとまりと、素晴らしい読後感。おすすめです。

読んだ後、竹良さんらしい物語だなぁ、とグッときました。この人は、極限の地獄を見せられて、それがゆえに強い覚悟を持つようになった人間を描くのが好きなんですねぇ。『辺獄のシュヴェスタ』も大傑作でした。しかも短く終わったので、物語の完成度と締まり具合が素晴らしい。最後のシーンの爽快感というか、そこにつき抜けるのかというような見事な場面展開も素晴らしかった。題材が本当に、興味深い。竹良さんは、とにかく今のところ全くはずれがない。この人は、物凄い才能だと思う。それに、こういった覚悟を描く話になると、厳しすぎて、苦しすぎて、余りに残酷すぎて、見ていられなくなるケースが多いのだけれども、これだけ、残酷なものを直視しながら、物語の後味がいいのが素晴らしいと思う。僕はこういう物語がとても好きです。

ちなみに、若い時のシスターの可愛さと、列聖を目指すいこじな野心家のばばあの差が、どうしても天空の城ラピュタのドーラを思い出させます。


辺獄のシュヴェスタ』 竹良実著 こんなにも人生厳しくなくてもいいだろうに、、、と思ってしまう。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20151229/p1

辺獄のシュヴェスタ(1) (ビッグコミックス)