BLMを語るときにその背景の歴史をまず理解しないと

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■目の前のイシューでだけ考えないで、背景の構造をまず共有してから議論しないと


自由VS 法と秩序という図式で、極右と極左の構造で、この問題を見てしまうと、トラップ(罠)にはまるといつも思う。もちろん、大枠はその補助線なんだろうとは思うけど。


けど、物事には時系列的な「背景」がある。ここにいたった「歴史的経緯」を無視することはできない。


僕は、この数年民主党の話をずっと考えてきたので、その逆として「なんでそもそも共和党、トランプ支持者は、こうも強いんだろう?」というところ、そして「共和党がこうなったのはそもそもどうしてか?」に興味の焦点を当てている。だから最近の焦点は、共和党はトランプさんの動向。でも、トランプさんとバイデンさんが、どちらが勝っても、この「構造的な蓄積」は変わらないから。これはアメリカを語るときの必須の基礎的教養だと思う。正しいかどうかという視点とか、イデオロギー的に受け入れるかどうかではなく、「歴史の経緯」をまず前提としないと、それに対して意見をしても無意味だろうと思うから。


議論に入る前に、なんちゃってアメリカウオッチャーになるには、Ava DuVernay監督の『13th』『When They See Us (ボクらを見る目)』、Stacey Abramsが主演の『All In: The Fight for Democracy』は見てほしいと思う。というのは、南北戦争後のジムクロウ法を軸とする、構造的な差別がどのように形成され、そして今もされ続けているか?という「前提」をまずベースの知識として「感じた」うえで、この話はしないと、非常に良くないと思う。これもこれでかなりリベラルに偏った視点ではあるが、一つの極の視点で、この視点からリベラルサイドは見ているし考えるわけだから、ここを知らないと話にもならない。


その前提の勉強として渡辺由香里さんの黒人以外の命は大切ではない?略奪を肯定している?BLM批判者の4つの反論に答える【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(19)』の記事はとてもよくまとまっていて、おすすめです。少なくとも日本人で、日本語で考える人は、アフリカンアメリカへの共感や、その歴史に対して感受性がほぼないはずなので(ほとんど身近にいないからそれが当たり前)、それなりに必須の知識として勉強しないと、全くミスリードしたものになってしまうと思う。というか、そういう人がたくさんいるように思う。


仮に、共和党支持、トランプ大統領支持だとしても、「この蓄積された問題」に対して、どのようにプラクティカルに答えるかは、アメリカの統治において必須のもので、この前提抜きには、何も語れないはずだから。


ほんとうは、共和党宗教右翼、宗教保守、キリスト教原理主義Alt-right (オルタナ右翼)やWhite supremacyがなぜ生まれてくるのか?。また共和党の変遷。ティーティーなどを包括して、なぜ共和党がああなっているのかを、分かりやすく見れるドキュメンタリーや映画などがあると、いいんだけどなぁ、見つからない。メディア空間は、基本的にリベラルの支配なので、そういうのが見つからないのです。思いつくのは、下記のネットフリックスのドキュメンタリーだけ。日本語版はないはず。彼らが根本的な意味で「何をもっとも大切にしているか?」と「構造的にそのように考えるようになる仕組みは何か?」を問わないと、とても不公平だと思う。リベラルサイドの指定するマイノリティや弱者だけを、構造的に出てくるものとして擁護し理解を迫るのは不公平だと思う。プアホワイトやレッドネック、ヒルビリーなどがどうして構造的に生まれるか?、構造的に変えるにはどうするかという議論なくしては、お互いの罵りあいにしかならない。


Alt-Right: Age of Rage Movie Clip - Threats (2018) | Movieclips Indie

白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)


ちなみに、渡辺由佳里さんは、個人的にはバランスの取れたリベラルな民主党支持者で、僕はなちゃってアメリカウオッチャーとして、長年見ているけれども、非常に安定した知性の持ち主で、いつもいつも見るに値する見るにオピニオンリーダーとして、追っています。フェイクニュースポストトゥルースの時代でも、ちゃんと「どういうバイアスがかっているかを認識して」「様々な問題に過去長い間どのように反応してきたか」を追えば、信頼できるかどうかは、一発だと僕は思うんですよね。基本的に、感情的に素直で、そして、中期を見るの知的センスがあって、人に対して丁寧な言葉遣いをしているかどうか(特に敵対者に対して口汚く罵る人は完全にアウト)だと思いますよ。口汚く罵る人は、基本的に「自分の内面のルサンチマンの発露」で話しているので、事実がどうかとか、本当に自分が感じていることを客観視しようとする自省意識がないので、ただのデマゴーク、アジテーターにしか機能しない。あと感情的に素直で自分のポジションがはっきりしていないのも信用できない。中立的過ぎるのも、洗脳しようという嘘が透けて見えるので、ハッキリ立場があったほうが、いいと僕は思います。



www.washingtonpost.com


報道で目立つためか、BLMの大半が暴動だと思いこんでいる人はアメリカにもいる。だが、紛争関係の研究分野で最もよく使われるArmed Conflict Location & Event Data Project (ACLED)のデータによると、93%以上が「平和なデモ」なのだ。

さらに、ACLEDのレポートによると、「メディアが略奪と破壊行為に焦点をあてているにもかかわらず、デモ参加者が広範囲にわたる暴力的行為を行ったことを示唆する証拠はほとんどない。デモが暴力的に変化した場所では、暴力を扇動するために(デモに)潜入した工作員がいたという報告がある」「白人優越主義のストリートギャング組織であるAryan Cowboysとつながりがあるヘルズ・エンジェルスが、商店の窓を叩き割っている場面が目撃されている」「(BLMデモ参加者の)暴力や破壊的行為は、主に、南部連合軍指導者の彫像を破壊するといったことに向けられている」ということだ。最近では、トランプを支持する極右の新ファシスト集団「プラウドボーイズ」がBLMのデモ参加者に暴力を振るう事件が多発している。

acleddata.com


ということで、最近がんばって、コツコツアメリカの大統領選挙を追っていて、いろいろなイヴェントごとに勧められた映画やドキュメンタリーの「その時の感想」を残しています。というのは常にいつも思っているのは、「自分の思考の履歴」「自分の言葉で積み上げていくもの」が一番大事だし、その「積み上げの変遷を追う」ことでしかその人の知的センスの評価はできないし、、、それだけでなく「そういった思考の流れ」を追わないと、ほんとうは人は何も理解できないんだろうと思うんですよ。文字は読めても文脈が読めないというのは、事実を構造化したりして、物語にする力がないからで、、、それを「独力でする力がない」人は、すぐに陰謀論フェイクニュースにからめとられて、動物の脊髄反射に陥ります。人間は、動物だもの。それが、当たり前。それに、抗うのは、とても難しいことなのだ。大事なのは、「長く謙虚に飽くなく学び学び続ける姿勢」だと思います(福沢諭吉だ!)。そして、そうやって自分の言葉で積み上げている人、オピニオンリーダーを何人か選んで、丁寧に追っていくと、「なぜその人がそういう風に考え感じるに至ったか」が理解できるようになっていきます。それが複数組み合わさって、時間の蓄積が発酵を醸し出して、そしてオリジナルな自分の意見になっていく、と僕は思います。なので、コツコツクンフーです。大事なのは。


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6月の頃の全米のプロテストの広がりの物凄くリアル感があるので、これは、凄い雰囲気がわかります。

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過去の記事の履歴


United States presidential debates, Cleveland, Ohio on September 29, 2020 大統領選ディベート一回目感想
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/10/03/122408

RGB(ルース・ベイダー・ギンズバーグ)逝く
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/09/25/053552

Republican National Conventionを実際に見てみた。
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/09/10/041059

2020 Democratic National Convention (2020年民主党全国代表大会)
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/08/20/082409

バイデンさんのrunning mateは、カマラハリスさんに。
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/08/12/135517

大統領選挙はどのように行なわれるのだろうか?
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/07/31/104303

最高裁の判断にアメリカの底力を見た気がします。
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/07/27/030942

California’s SpaceX Crew Dragon Docks to Space Station
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/06/13/045729

保守ではなく反左翼というカテゴリーで
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/07/11/004638

The Capitol Hill Autonomous Zone (CHAZ)って、もうGeorge Floyd protestsと関係ないよね、これ。
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/06/27/042535

『13th 憲法修正第13条』 (2016) Ava DuVernay監督 systematic racismとは?
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/06/17/044947

平和的なデモのやり方
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/06/04/021124

「アンティファ(Antifa)」ってなんだ?
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/06/03/073437

暴動なのか抗議行動なのかの二項対立は、物事を単純化させる。
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/06/03/005213

全米中に広がりを見せるGeorge Floyd Protests
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/06/01/034322

2014年のマイケルブラウン事件の広がりを思い出させる
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/05/31/010543

Armed coronavirus lockdown protesters clash at Michigan's state capitol
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/05/21/073627

5/1を超えて
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/05/06/041325

Governor Newsom expected to lay out a roadmap to reopening California’s economy
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/05/01/064444

Nationwide protest coronavirus stay-at-home orders
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/24/091932

2020/3/3スーパーチューズデー後の雑感。民主党は、セントリスト(中道派)に力を結集できるのか?
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/03/10/111233

Bernie sanders drops out of 2020 raceのメモメモ
https://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/12/031358


アメリカのリベラルが嫌われつつあるのはなぜか? ウォーク・アウェイ運動について
https://petronius.hatenablog.com/entry/2019/01/18/050133