■サンダースのミトンが象徴するものは?
1月20日バイデン就任式の日、ツイッターの#InaugurationDayでトレンドNo.1を終日突っ走ったのは、サンダースの手編みミトン姿。その写真を使って、さまざまな画像が 世界を駆け巡ったが、一番気に入ったのはコレ。元写真は労働者政党「民主党」新大統領・副大統領の豪華ファッションへの最大の皮肉。 pic.twitter.com/IuInrOaIq4
— 会田弘継-Hiro Aida (@hirotsuguaida) January 23, 2021
時々、LINEやらSNSとかで、知り合いに、アメリカのトレンドとかの情報交換するんですが、なるほどなーと思ったのは、サンダースのミトン関連の写真を受けて送ったら、ほとんど日本の友人が???って感じだったんですよね。多分この「背景ある意味」が、ほとんどわからなかったんだろうと思う。そもそも米国に興味がない人には、サンダース自体も、サンダースが何を代表している人なのかの「政治的文脈」が共有されていないから、わからないのは当たり前なんだろうなぁ、と思いました。確かに、これInaguration(大統領就任式全体)を見ていないと、意味が分からないと思う。全体を見ていると招待客のセレブリティたちの、豪華な服装が、否応にも目に入る。Twitterなどで、カマラ・ハリス副大統領やヒラリークリントンさんの服装(紫のドレスを着るという)が話題になっていたり、数少ない招待客のセレブリティが、観客はほぼ白人お金持ちしかいない、という現実。閣僚など画面に映るところはバイデン政権はすごい多様性にあふれているのにもかかわらず。皮肉ですよね。これSNSとかで盛り上がりまくっていたんですよね。トランプさん、共和党への支持者、言い換えればバイデン政権へNoと思う人が、7400万人もいるわけですから、民主党や、これまでの世界を作り上げてきた中道派のスーパーエリートたち、その中心人物だったバイデンさんへの「偽善」を感じると人は、すさまじく多いんですよ。この背景文脈がまずないと、この写真に即反応はしないし、怒りを感じたり「ああ、バーニーはわかっている!」という気持ちにはつながらないと思うんですよね。ちなみに、僕らの年代は、バーニーといわれると「嘘だと言ってよバーニィー!!(ガンダム・ポケットの中の戦争)」をすぐ連想しちゃうけど(笑)。・・・バーニーサンダースさんは、このグローバリズムの中で格差が拡大していくことへの戦いのシンボル的な人で、生きていくのが難しいほどの貧困の拡大という背景ならば、豪勢な服を着て、大統領就任式に出るなんて、苦しんでいる人を馬鹿にした行為はないだろう!という怒りがあってのパフォーマンスなんですね。バーニーさんにはそういう政治的意図はもちろんありました。こうした支持者の手作り素朴なのミトンをつける行為は、そういうことへの怒り、告発を示しているわけです。重要なのは、こうしたサンダースさんの振る舞いに、激しく反応する土壌が、アメリカにあるということです。ちなみに、最初のころは、バーニーサンダースの、この素朴な格好で「大統領就任式に招待されておいて、あんなみすぼらしい恰好はないだろう!とあざ笑うコメントとか反応も結構あって、ああ、そりゃ、これ見て「そういう反応」する人が多いようじゃあ、「格差で苦しんでいる貧困層」のメッセージや共感は、まったく得られないよなぁ、と思いました。
Why Kamala Harris, Michelle Obama, Hillary Clinton Wore Purple on Inauguration Day
■「おなじみのアメリカ政治の二分法」、つまり保守・リベラルの対決構図ではトランプ現象は読み解けない
いま米国で起きている事態を左右の「分断」の激化として説明しようとする向きが多いが、「おなじみのアメリカ政治の二分法」、つまり保守・リベラルの対決構図ではトランプ現象は読み解けない。評者も常々指摘してきたことが、最新のデータも援用しながら説かれている。おそらく連邦議会に乱入した暴徒らも含めて、トランプ支持者らは経済問題では従来リベラルとされてきた政策を求めている。貿易保護主義や社会保障・医療保険がその例だ。ところが、社会問題となると従来の保守の価値観を支持している。妊娠中絶が代表例だ。経済問題だけを捉えれば、米国民全体が左傾化しているのである。その理由は明らかだ。ユーラシア・グループの報告でさえ率直に認めざるを得ないほどのすさまじい格差が生じているからである。
www.suntory.co.jp
2021.01.27.
保守・リベラルで説明できなくなったアメリカ ――普遍国家の幻想崩れ、普通の「特殊な国」に
会田 弘継 Hirotsugu Aida
リベラルvs保守の二項対立は、既に成り立っていない。これは重要な認識。左派も右派も、社会問題の価値観は対立していても、経済問題では、米国全体が、激しく左へ地滑りを起こしているのだ。だから、トランプさん支持者の白人至上主義とか、暴動とかを怒っても、告発しても、ほとんど意味はない。だって、経済格差への恐怖が、駆り立てている問題だから。キャピトルヒルに、突入した暴徒は、それなりに裕福な人が多かった印象があるので、その辺は、今後より深い分析を待ちたいところだけれども、「全体的に考えて」重要なのは、格差による「自分たちの貧困がどこまでも進んでいく」という恐怖が、すべての原因にあるというのは、間違いないと思う。いいかえれば、グローバル化が進んでいく、現在のアメリカの「進んでいる方向、構造」に対して、強い拒否感があるんだ。それを、だれが作ったのか?との問いに対して、明らかに答えは、民主党、共和党の中道派の人々だ。もちろんその、中心人物が47年間だれだったかというと、バイデンさんなんだよねぇ。僕自身も、トランプさんはとてもじゃないけど支持できないけど、じゃあバイデンさんを支持するかというと、「お前らがこういう世界を作ってきた職業政治家だろう!」と叫ぶトランプさんの発言には、とてもシンパシーを感じてしまいますよ。共和党中道派、マケインさんや、民主党中道派の、アルゴア、ビルクリントン、ヒラリークリントン、ジョーバイデン。この辺の大きな「職業政治家が選んできた」グローバル化への道に対して、強い反発があるんだよね。ちなみに、なぜいきなりポッと外から出てきたバラクオバマさんとドナルドトランプさんが、熱狂的な支持を得たかといえば、まさに、この「職業政治家」じゃなかったから、希望に見えたんだと思う。このへんの、反トランプだから、やむにやまれずバイデンさんに入れたという人も多いと思う。なぜならば、僕も感覚は、この層に入るからだ。その感覚はわかる。
■監獄企業は大量収監問題の原因は、そもそもバイデン、クリントンさんでしょう!
バイデンはツイッターで、監獄企業との契約をやめさせる大統領令に署名したと、誇らしげに言っている。「偽善」だ。監獄企業は大量収監問題の原因であり結果で、制度的人種差別の重要な論点。バイデン主導の1994年犯罪取締強化法で激化したと研究者は一致して認める。https://t.co/z8LramLnL2
— 会田弘継-Hiro Aida (@hirotsuguaida) January 27, 2021
このコメント、まさに、そうだよなぁ、と思いました。何人かのアメリカ人の友人と話していて、皆同じ反応でしたし、何よりも、彼らはみなリベラルな民主党支持者なので、「そうであったえさえも」、バイデンさんの対応に偽善を感じるくらいなのですから、いわんや共和党やトランプ支持者の人は、どれだけ不信感を持つかは、考えるまでもないでしょう。この辺りは、ぜひとも『13th 憲法修正第13条』 (2016) Ava DuVernay監督 systematic racismとは?を見てもらえると。大量疑獄のスタートは、民主党のクリントン政権の時ですね。スリーストライク法です。このことの総括、反省なしに、大量疑獄をなくします!というのは、あまりに偽善でしょう。これアフリカンアメリカンへの人権問題を考えるときに、避けては通れない矛盾であり、苦しい戦いの歴史ですね。
■米国の政治勢力をどう整理するか?
その続きもおもしろく、
— Tomo Kawai / 川合智之 (@tomok_313toTYO) January 25, 2021
バイデン大統領と協調してもいい
・共和党トランプ派:25%
・伝統的共和党派:55%
バイデン大統領の政策を通すべき
・バイデン支持民主党:70%
・民主党サンダース/ウォーレン派:60%
共和党から意外にサポートが、そして民主党内で予想以上の抵抗が、と思いました。 pic.twitter.com/oRlwDPfjRb
17✖️4の四大政党制。 pic.twitter.com/3DPfpX51jv
— 中山 俊宏 NAKAYAMA Toshihiro (@tnak0214) January 25, 2021
NBCのニュースでこれをやっていて、ああ!こうやって整理すると凄くすっきりする!と思いました。今後政局を見るのに、こういう区分けで、それぞれの政治家が、どこにいるのか考えながらだと、良く整理しやすいと思う。
A)Trumpian Republican
B)Party Republican
C)Biden Democrats
D)Sanders-Warren Democrats
多分切り口は、「グローバリズムに対する反応」になるんだろうと思います。
あきらかに、Trumpian RepublicanとSanders-Warren Democratsは、社会問題では対立しながらも、経済問題では、非常に似ている「結果」を求めている。「手段」と「支持層」が違うので、だいぶねじれるけども、目的は一緒なのだと思う。逆を言えば、Party RepublicanとBiden Democratsも共闘可能。というか、これまでずっと共闘してきたよね。こうやって4つのグループに分けて、支持層や思想などを分類してみると、だいぶわかりやすくなる。一番差異が出るイシューは、グローバリズムを受け入れるかどうか、という問題意識。いや、ちがうな、、、「受け入れるか否か」は問題じゃない。不可避なことなので。だけれども、それによって引き起こされる「格差の拡大・中産階級の没落」が恐怖なんだ。
Trumpian Republicanは、ベビーブーマの高齢の男性の白人労働者が主軸になるので、そもそももう「グローバル化にはついていけない」という見切りがある。だから、「アメリカファースト」的な「アメリカ人を守る」というテーマに飛びつきやすい。そしてこれは容易に、白人を特権階級化(=いいかえれば何とか守る)する白人至上主義と相性がいい。ここでは、彼らは「虐げられている被害者」として自己認識していることを、留意しなければならない。それは、プアホワイト、レッドネック、ヒルビリーといったカテゴライズのみならず、5大湖周辺やペンシルバニア州や、田舎に住んでいる白人労働者にとっては、職自体が消滅していく流れに乗っているので、人生や家庭が、崩壊して自尊心が奪われ続けているからだ。ここでは、「結果の平等」が、奪われ続けていると主張しているわけだ。もちろん時系列の議論になれば、その白人男性労働者こそが、マイノリティや女性を抑圧してきたわけだろう!という文化闘争になってしまうのだが、全体が成長していた高度成長時代では、余裕があった。しかし、リソースの奪い合いの時代になると、なりふり構っていられなくなったということだ。
Sanders-Warren Democratsは、特に、サンダースの支持者に、急進左翼、極左の白人の若い男性が多い。それは「機会さえあればグローバル化についていけるのに、機会が奪われている」という感覚なのではないかと、思う。つまり、なぜサンダースが「大学無償化」をあげるかといえば、もし若者に大学に行って学歴を確保して、「グローバリズムの勝者、テクノクラート(管理者)側」に立つ可能性は残されているからではないだろうか。多分、グローバリズムの不可避性は、受け入れつつも「機会の平等」が奪われているという意識なのではないだろうか?。ほぼ同じ問題意識を源泉に持ちながら、共同体主義に傾斜しやすいTrumpian Republicanと、多様性については前提として生きているジェネレーションXやその子供のジェネレーションZの世代、ジェンレーションYのMillennial GenerationのSanders-Warren Democratsでは、対立とシンパシーが重なり合って、とても外から不透明に見える。ただし、究極の設問である経済問題については、ほぼ同じ意識があることは、忘れてはならないことでしょう。まだこの辺は、自分でも分解しきれていないので、ざっくりになってしまうので、なにが、AOCやスクワッドを支えているのかは、勉強していきたいと思う。まだまだ、自分でもよくわかっていないと思う。けど、対立の整理の構造は見えてきた気がする。
コロナ対応追加景気刺激策の折衝が大詰。争点は市民への現金直接支給で、前回の刺激策同様に1200㌦を強硬に求めているのが、民主党左派サンダース上院議員と共和党トランピストのホーリー上院議員だ。これをトランプが後押している。バイデン時代の政治の構図を垣間見せる。https://t.co/UfntD7NZ7c
— 会田弘継-Hiro Aida (@hirotsuguaida) December 17, 2020
CBSでのホーリー上院議員のコメント。後半、なかなかのもんだ。若い。https://t.co/C3vLhc4E3v
— 会田弘継-Hiro Aida (@hirotsuguaida) December 17, 2020
#TopStories2020
— ian bremmer (@ianbremmer) December 27, 2020
In February, Steve Bannon explained why he likes AOC's "approach" even though he doesn't "dig" her policies.
Watch @gzeromedia's #GZEROWorld episode: https://t.co/BYXkEZVnic pic.twitter.com/xfilTdJEEe
■今後を見ていくうえで、だれを信じれるのか?どういう風に情報を評価すればいいのか?~会田弘継さんの視点が、置く深くて鋭かった
出会ったのは、1615プロジェクトの紹介をしている記事を読んで、目からうろこだったことです。まだまだ僕の勉強量では、全然わかっていないと思うのですが、少なくとも「この人を追おう!!」と思うくらいに毎回、鋭い本質的な視点を提供してくれて、気にしています。今後の世界では、メディアが信じられなくなっていくポストトゥルースの時代の構図は、簡単には変わらないと思います。その中で、何を自分の情報のフィルターや選別方法としてみるかは重要だと思います。僕はやはり、「人」じゃないかなぁと思っています。もちろん一人や二人ではだめで、何人かの組み合わせになるんじゃないかなぁと思います。アメリカの今回の2020年の大統領選挙を見ていて、日本語で非常に「本質的なところまで射程が届いていて」かつ「米国のローカルな文脈がちゃんとわかっている」人というのは、だいぶ選別できた気がする。また、その人の政治思想というか、肌感覚は、それなりに長期間観察していると、感じ取れるものだと思う。ちゃんと自分なりのバイアスと解釈をかけて、「自分の言葉で自分の頭で考え」ないと、ただの盲目的な信仰や、陰謀論を信じる姿勢と変わりなくなっていまうので、こうやって自分なりに、つたないなりにアウトプット出して整理しながら、コツコツニュースを読んでいきたいと思います。ちなみに、会田弘継さんがすごいと思ったのは、2つ。一つは、やはりアメリカ政治を見るうえで、重要な視点は保守思想が再編成を迫られていることだと思う。それに手が届いている。もう一つは、トランプ支持の7400万票の意味が、ちゃんと問われているところ。バイデン民主党、反トランプ万歳的なお花畑志向でもなければ、トランプ的Qアノンビリーバー的な熱狂でもなく、静かに淡々と、そこに迫っている鋭さ。素晴らしい。もっと勉強したよう!という気持ちにさせてもらえる。
『週刊東洋経済』最新号での連載InsideUSA。マルコ・ルビオ上院議員は「政権が代わったからといって、アメリカがそれで正常になるわけでない。何百万、何千万という市民の不安や懸念に応えることができるのか」とツイートしていた。MARs問題について、あらためて注意喚起。https://t.co/x5PNIjcAUN
— 会田弘継-Hiro Aida (@hirotsuguaida) January 25, 2021