『ブレイキング・バッド(Breaking Bad)』シーズン1-2 USA 2008-2013 Vince Gilligan監督  みんな自分の居場所を守るためにがんばっているだけなのに 

ソフトシェル ブレイキング・バッド シーズン1 BOX(3枚組) [DVD]


評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

www.youtube.com

www.youtube.com


2019年の目標は、アメリカのドラマやバラエティをいろいろ見ること。ということで、1月からスタートダッシュをかけてて、シーズン3の真ん中まで来ているところ。

はじめは、痛快なマフィアの映画とかのイメージで見てたんだけれども、全く違うめちゃくちゃダークなシリアスな物語。正直言って、最初の数話で、見るのがしんどくなるくらい、心が折れたんだけど、、、、それでもやめられない味わい深い魅力にあふれた物語。このペースに入れば、シーズン5は、すぐ消費できると思う。ネタバレというほどでもないけど、物語は、ウォルター・ホワイト(ブライアン・クランストン)という化学教師が、肺がんにかかるところからはじまる。妻のスカイラーは妊娠しており、長男のフリンことウォルタージュニアは、脳性麻痺で松葉杖で生活しており、、、、もし自分が死んでしまったら、家族はどうなってしまうのか、と追い詰められます。大きな病気というのは、幸いなことに僕も僕の身内では経験がないのだが、それなりに生きていると、大病で苦しみ、若くして死んでいく、悲劇はそれなりに見ている。感情移入のシンパシーの問題だと思うが、すべての貧病苦というのの本質は「なんで私が」という偶発性であって、その人がそうなる根拠など、なってしまえば、どうでもいいことになってしまう。言い換えれば、いつ何時、自分自身に降りかかるかわからないものだ。感受性の問題だと思うのですが、僕は、怖くて夜寝れなくなりましたよ。すべての人生の意味や目標、未来、希望が一瞬にしてふさがれるわけで、、、、。ウォルターは、本当に普通の人で、特に強く何かを主張する人でもなく、どちらかというと積極的で社交的で強気な奥さんに尻に敷かれながら、いろいろなものはあっても、ぐっと我慢して、それなりに幸せに、穏やかに生きていくはずだった。。。。。。

けど、もう治療を受けるのも、無理なんですよね。ほとんど。アメリカでは、先進医療は、異様な金額になります。また、よい保険に入っていなければ、いざ病気になった時に、もうどうしようもなくなる。普通の治療を受けているだけで、たぶんこの家は破産してしまうでしょう。奥さんは、何とかならないか、生きるようにあがいて、頑張って治療をしてほしいとウォルターに迫りますが、そうでなくても自分の死後に破産して、碌な人生が遅れない可能性が高い家族に、これ以上治療の借金を残せない、、、と苦しみます。この辺りの大病してしまうと、破産して、本人も、残された家族も、地獄に落ちるのと同等の貧困層に転落してしまうリスクが、中産階級の普通の生活している人にさえ常にリスクとして隠れているアメリカの構造を実感しないと、なぜいきなりこんなにウォルターが追いつめられるのかはわからないでしょう。マイケルムーア監督のドキュメンタリー映画の『シッコ』などを補助線おすすめします。ちなみに、アメリカにの保険制度を知れば知るほど、日本やフランスの公的保険が、いかに良くできているのかと驚きます。さすがに、アメリカの医療保険をめぐる構造は、ひどすぎると思います。「これ」一点で、アメリカが成長しているから、日本を出てアメリカに移民したりすべきだ!みたいな能天気な議論は、単純には成り立たないと僕は思いますよ。これ、全然貧乏人とか貧困層の話じゃないですから。それなりの中産階級でも、即日ホームレス、破産に叩き込まれて生活できなくなるリスクが常にあるんですから。だからグローバリズムの負け組のラストベルトの中年白人男性層が、死亡率が劇的に上がって(確か先進国中へ平均寿命が下がっているのなんてここだけだったはず)、トランプさんを支持して政権が誕生しちゃうのも、この背景の切実な苦しさ、今目の前にある貧困をみないとだめなんですよ。総論としては、オバマさんや過去の民主党医療保険改革の理想はみんな認めていると思うのですが、しかし、実際は共和党との妥協の中で、医療険はオバマケアのせいでめちゃあがって、さらに生活は苦しくなっているのが実感で、本音のところでは、オバマケアのせいで生活がさらにひどくなったと、凄まじい恨みと不満を持っている層が厚くいるように僕はとても、周りの友人の話を聞いていて思います。理想は否定できなくとも、それで実際の生活がめちゃくちゃ悪くなれば、本音で人は、そんなの許容できないものだともいます。寛容さは、経済のパイの拡大があってはじめてなんだ、としみじみ思います。


シッコ(字幕版)



マイケル・ムーア最新作「シッコ」予告編(日本語)-SiCKO Trailer(JPN)



「自分で一度も自分自身の決断をしたことがない。一度は、自分自身に関することを決断したい。」


みたいなことを、癌の治療をあきらめるのはなぜか、と家族に問われたときにウォルターが答えます。僕、これにはグッときました。これ、ウォルターの人となりを見ていればすごいわかります。この人は、ベースいい人で、ちよっぴり常に自己主張を弱くして「少しだけ」ゆずってしまう人なんだろうと思います。それの方が、うまく回るし、それでいいじゃないか、と思って生きてきた。たぶん、何もなければ、それなりに悪くない人生だと思いながら、生きていたでしょう。でも、実際は、そのせいで、いろいろ損をして損をして、才能あふれる、ノーベル賞に貢献するような優秀な科学者だったのに、アルバカーキの化学の教師になって、ちょっと病気をすれば、貧困に叩き込まれるぐらいになってしまっている。僕は、こんな押しが弱い性格のウォルターが、スカイラーのような押しが強い、社交的な人と結婚した理由、愛している理由が、まだ全然わかりません。どう考えても相性悪いように思えるんですよ。スカイラー自体が、いやな人だったりするわけではないですが、、、、まだ、正直言って、シーズン3の真ん中まででは、なぜスカイラーと結婚したのか、なぜ大企業になる会社の設立メンバーから離れたのか、母親との関係が疎遠なのはなぜか、とかがわかりません。彼の人生の「悪い方へのシフト」は、その大学時代のころからであり、たぶん結婚にまつわるいろいろ隠れている背景があるように思えるんですよね。このあと、大きな出来事が起きるから、その矛盾がどんどんどんどんドラマトゥルギーとして大きく膨れ上がってしまうけれども、きっと、こういう背景があっても、一度人生が分岐してしまうと、本当はもう戻ることがないのでしょう。


だから、最後ぐらいは、自分で決断して治療をやめる。そして、せめて借金を、家族に残したくない、と思ったんでしょう。彼が死ねば、丸く収まるのですから。けど、奥さんのスカイラーは、それを容赦なく攻め立てます。「なぜ治療を受けるという意思を見せないのか?」と。これもね、わかるんですよ。奥さんとしては、死を目前にあきらめてしまう夫のことが、許せないというか、悲しいと思うのは。でも、これ、見ていると、余りのコミュニケーションの相性の悪さ、本音でつながっていない、ずれを感じて、ぼくには、いたたまれなかった。決して、どちらも悪い人でもないし、お互いを思いやっていないわけでもないのに、、、、癌などという大きな出来事がなければ、きっと、それなりに普通の日常が過ぎていったはずなのに。


追い詰められに、追い詰められたウォルターは、メス(メタンフェタミン)という麻薬の製造に、手を染めることになります。もちろん、家族に借家を残さないため、奥さんが「生きる希望をもって、高額治療を受けてほしい!」という意思に応えるためです。これ、ウォルターは、自分がメンバーの一部というか、自分が設立したに等しい会社の社長になった大富豪になっている友人と、かつてのたぶん恋人である、その妻に、お金を借りるのが嫌だったんですね。ここのプライドが、夫婦間のすれ違いを大きくしている。でも、これは、そもそも論として、まだ僕はそこまで見ていないですが、この「こじれ」がなければ、きっとスカイラーとは結婚してなかったんじゃないかなと思うんですよ。もし素直になって、本音で語るには、「そこ」まで戻らなければならない。それは、残された時間が少なく、しかも、大きな子供がいるほど長い結婚生活を重ねてきた二人には、もう無理だったんだろうと思います。これ、この程度の過去の隠れた嘘は、ウォルターとスカイラーの20年近くになる結婚生活の実績をからすれば、何も関係のない「過去のこと」だったんだろうと思います。はじまりにウソがあっても、重ねてきた時間は、嘘じゃないのだから。。。。でも、肺がんと、その隠れた齟齬と、そして家族を思いやる気持ちによって麻薬製造に手を住めることで、この矛盾は膨れ上がっていきます。


見ていて、、、、胸が痛かった。だって、誰もが悪くない、、、、というか、誰もが少しづつ悪いのが重なって重なって、ただ幸せに、誠実に頑張ろうとして、どんどん最悪の方向へ、崖を落ちるように転がり落ちてしまう。ああ、世界って、こうだよなぁと胸が痛かったです。


まだシーズン3の途中ですが、いやは本当に面白い。



町山智浩 海外ドラマ ブレイキングバッド たまむすび

『色づく世界の明日から』篠原 俊哉監督 とても幸せな気分になれました。


アニメ『色づく世界の明日から』PV第1弾

評価:★★★★☆4つ半
(僕的主観:★★★★☆4つ半)

素晴らしかった。昨年(2018)の10月からの毎週を、幸せにしてくれた、素晴らしいアニメでした。毎週楽しみで楽しみで、、、、P.A.WORKS、篠原監督、制作にかかわった人に、ありがとうと言いたい、いいアニメでした。・・・ただ、幸せだった、面白かった、感動したというのを、表現したくてこの記事を書いているのだけれども、、、、自分的には、自分のいつも分析する文脈に引っかからないし、「何がよかったか」とかを言葉にできていないので、書くところがないんですよね。基本的に地味な作品だったと思います。魔法使いという設定も、基本的には、日常のちょっとした演出程度の魔法しか表現されないので、尖っているわけでもない。なので、うーん、書き始めておいて、何ですが、なんか書くことが特にない。けど、、、、見た人はわかると思うのですが、OPの歌が素晴らしくて、、、あの魔方陣が広がっているシーン、主人公の月白瞳美が階段を上がっていくシーンとか、僕はネットフリックスやアマゾンプライムなのでアニメを見ているので、OPやエンディングは、スキップするのが普通なんですが、何回も何回観ても、じわっと涙が出る素晴らしい出来でした。・・・うん、素晴らしいとか、いいね、としか言えてねーな。。。まぁ、かといって、誰にでも薦めていいというわけでもないと思うんですよね、、、万人受けするとは思うけど、アニメを見慣れていない人は、別にこういうの見るなら、青春ものドラマやの実写の映画見てもいいわけだし、、、。うーん、なんかうまく感動を伝えられない。


ただ、、、、長いし読みにくいタイトルだなーと最初???と思ったんですが、この作品をひとことでいうならば、まさに「色彩」が美しいんですよ。瞳美が、色を見ることができなくなっているという、、、色彩のない世界から、世界がさぁーっと色彩を取り戻すシーンの美しさ、繊細さは、ため息が出るほどでした。脚本的にも、様々なものも、すべて抑制的で、派手でない「からこそ」この色彩の変化が、素晴らしく感動的に感じられて、、、、だからまぁ、言葉で説明する作品じゃないんでしょうねぇ。。。



アニメ『色づく世界の明日から』PV第3弾

オーソドックスな脚本だと思うし、設定も尖っていないので、すべてにおいて地味なんですよね。ドラマの展開も、けっこう平坦で、ドラマチックというわけでもない。「にもかかわらず」、魅了させてくれる、、、僕は期間中、3回見直しました。。。うーん、だめだ、うまいこと表現することができないや。カテゴリー的には、「青春もの」だともうんですよね。僕は40代のおっさんなんですが、別に、青春をもう一度やり直したいとはみじんも思わないんだけど、何に感動したんだろう。。。。P.A.WORKSの長崎の風景の繊細さと、関係性を丁寧に描写する力?、、、うーん、それは、昨今では、もう普通になるもので、そんな特別ってわけでもないんだよなぁ。。。素晴らしいのは、もちろん素晴らしいんだけど。これに、フライさんの繊細な絵が加わって、どれもが、本当に高いレベルで安定して調和している、というぐらいしかいうことがねぇなぁ、、、。うーん、、、ここは、今後の課題な気がする。こういう「青春もの」の良さというのは、どういう風に表現できるんのか、、、なんで自分が、ここに感動するのかは、少し考えてみたい。。。

色づく世界の明日から Blu-ray BOX 1


そういえば、途中ではっ!どこかで見た絵だ、、、と思っていたら、津田彷徨さんの小説の挿絵で、この絵いいなーと思っていた人のやつだったんですよねー。


ネット小説家になろうクロニクル 1 立志編 (星海社FICTIONS)


えっとねぇ、、、あ、ネタバレです、、、、あえて脚本で見るべきポイントとしては、60年後の未来に月白瞳美が戻った後、唯翔(ゆいと)に会えるかどうかってところなんですよね。劇中では、特に何も示されていないので、会えたかどうかはわからないし、彼は、70は超えているはずなので、お墓参りのシーンから、もう僕もな亡くなっているのだなと(はっきり描写はないけど)感じたんですが、これって、11話、あの抱きしめるシーンとか、それまでも、それからも、その時さえも、ぐっと抑制している感じがするので、そんな奥手というか、余り前に踏み出さない二人が、あそこで駆け出して、お互いを抱きしめあうって、もう本物だと思うんですよね。恋にしても、次元がかなり、、、こりゃ本物だなわ、、、と思ったんですが、本物だと思えば思うほど、どう考えても結ばれないじゃないですか。60年後に戻ったら、相手は、生きてても70以上のお年寄りだし、、、、。なので「会えない」という非常に常識的なドラマ展開を選択したのは、わかるし、、、、それが故の喪失感は、とても美しく、、、、ああいい作品だな、、、と思いました。もちろん、過去に残る!とか、唯翔が未来に来る!とか、物語なんだから、そういうアクロバティツクなドラマトゥルギーの展開をしてもいいとは思うんですが、、、、本当に通じ合えれば通じ合えるほど、でも「二度と会えない」というのは、、、深く、美しいなぁ、と思いました。同じ展開でいまだにずっと心に残っているのは、『天空のエスカフローネ』。。。もううろ覚えだけれども、異世界?~日本に戻るときに、抱きしめ会うシーンは、、、これほど愛し合っていても、もう二度と会えない喪失を抱えて生きなきゃいけないのか、、、と、ぐっと思ったのを、覚えています。それと同じように、、、、うーん、、、女の子は、たぶん瞳美の方は、前を向いて生きていけるかもしれないけど、、、、僕が、唯翔の立場だったら、もう二度と女性を愛せない気がするなぁ、、、、こんなに深い出会いがあったら、、、。だって、瞳美みたいなこと本物の恋をしたら、、、、さすがに忘れるの、無理じゃない???。これ、唯翔くんにとっては、地獄だよねぇ。。。男の方が、女性より未練がましいと思うので、、、これ、、、僕はほんと、しんどいだろうなーとしみじみしましたよ(笑)。

天空のエスカフローネ Blu-ray BOX

P.A.WORKSは、素晴らしいなぁ。とるてあも、またもう一度見直したくなってしまいました。

True Tears: Complete TV Series [Blu-ray] [Import]