『L'affaire Farewell/フェアウェル/哀しみのスパイ(2009仏)』 クリスチャン・カリオン監督

フェアウェル さらば、 哀しみのスパイ [DVD]


評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★☆3つ半)


うーむ、地味な映画で、非常に良くできている内容ではあったと思うが、胸は踊らなかったなー。いや、「胸躍らす映画」じゃないんだけどさ、そもそも。


実話のフェアウェル事件に基づいているというが、主人公の動機が本当かどうかは僕にはわからないだが、スパイ映画にしては、非常に深い動機だなとうなった。


国家のエリートであるKGBのセルゲイ・グリゴリエフ大佐は、西側に重要な情報を流し続けるのだが、その動機が、


ソ連はこのままではだめだ、自分の息子の世代によりよい国にするめに、一度国をつぶす必要がある」


という理由で、情報を流し続ける。だから亡命も望まない。愛国者として自分を位置づけているから・・・。非常にマクロ的な見識を持った意識で、これが本当であったら、凄いな、この人、と思う。


特に、ソ連の巨大な西側のスパイ網は、軍事費の凄まじい比率を占めており、このスパイ網によって、西側の科学技術が逐一ソ連に流れ込んでくる仕組みになっていた。いいかえるならば、自力で開発する力も仕組みもないが故に、外の資本主義国の競争の最先端だけスパイでかすめ取るということだ、、、、そしてこれによって、80年代のアメリカとの軍事技術競争に対等に戦い続けたわけだから、、、考えてみると驚嘆すべき構造だよな。そして、そのスパイ網がセルゲイ・グリゴリエフ大佐のリークによって崩壊したので、ソ連アメリカとの軍事競争に敗れて、ペレストロイカを進めざるを得なくなった・・・・。本当であるとすれば、本当に一人で世界を変えたようなものだ。


・・・・ただ、すげぇ、、、と思ったのは。「自力開発をしない」で、「スパイ活動だけ」で地球規模の科学技術競争に追いつき続けたソ連という国家の凄味だ。・・・逆に言うと、、、そんなことができるのか!と驚嘆してしまった。ということは、軍事費の過半をスパイ網に費やせば、かなりのレベルで国を維持することが可能なのか、、、と思った。北朝鮮が生き残れるわけだ、、、と感心した。


http://eiga.com/movie/55492/special/


ここのリアルなスパイ映画の系譜というお薦めがよかった。余裕がある時に、この軸で見てみたいなーと思う。