『おくさまが生徒会長!』がいいなーっておもっていたんだけど、ふと見ると、『奥さまは生徒会長』っていう1冊で完結している先行作品があったんですよね。この2冊は取っておもしろかったです。というのは、たぶん『奥さまは生徒会長』のほうが人気が出たので、それをほぼ同じ設定で連載にしたんですよね。構造、展開全く同じです。
何が面白かったかというと、まぁ、僕が中田ゆみさん好きってのもあるんですが、同じ設定、同じ脚本を連載化するとどうなのか?って、とっても興味深い例なんだなーって思ったんですよ。眼鏡のまじめな生徒副会長(男の子)と、知的でかっこいい生徒会長(女の子)という組み合わせは変わりません。展開も、この二人がバカップルでイチャイチャするというだけの話です。けど、連載化するにあたって、巨乳の風紀委員長が出てきたり、書記とかにロリッ子が出てきたり、伏線というか、ハーレムメイカーというわけでもないんですが、話を長くするためにサブエピソードを設定していこうとするのですね。これを、オリジナルの1冊で短く骨太に終わった作品を見た後にみると、ああこういう風に「設定している」んだなと、俯瞰した視点で見れて楽しいんですよね。
そして、4巻ぐらいからこの設定が「飽和」してくるんです。
飽和というか、コントロールが効かなくなってくる、、というか、、、ラブコメの一対一の関係性が、三角関係に発展して、ついにはハーレムメイカーにいたり、あまりに女の子が増えすぎてその子たちを平等に扱おうとすることで疲れ果てて、ついには、友達ののほうがいいじゃないか?というラブコメ漫画の類家に関する一つの歴史というか展開のパターンを、僕ら(LDさんら)話してきました。
・・・・これ、いままとめて書くと3行ぐらいなんですが、、、、このことを見出すまで、物凄い長かったですよねー。このブログも10年ぐらいやっていますが(笑)、よくぞここまで系譜を分析してきたものだ、と感心します。
おっと話を戻す。最初の『奥さまは生徒会長』は、真面目な生徒副会長の家に、昔の許嫁だといって美少女の生徒会長が無理矢理押しかけてくる押しかけ女房設定なんですが、まぁ、このバカップルがひたすらイチャイチャするわけです。そういう漫画です。
ちなみに、僕は、本当にどぎついHな漫画が好きなわけではなくて、このへんのライトなところで関係性があるものが好きなんで、中田ゆみさんの作品群はドストライクなんですよね。そういう意味では、僕には、まったくセクシャルなものに、特殊な性癖がありません、、、。とても残念なんですが、、、ないものはないんですね。オールラウンドでほとんどのものはいけますが、かといってこだわるとか、深めたいというものが、全然愛んですよね。セクシャルな方向に特殊なものを極めていくぐらいならば、むしろ、ちょっとした女の子の笑顔が見たいとか、そっちへ戻ってしまう。まぁ、そういう意味では本当にふつうの人です。エロゲーを頑張ってチャレンジしていたころも、結局は、自分の志向は平均値で、特に特殊なシュチュエーションや凌辱とか、そういうのは全然だめだったので、ああ、、、自分は、とっても普通の人なんだな、とさびしくおぼったのを覚えています。まぁ仕方がないですよね。
えっと、話を戻すと、この1冊目ってラブコメで言う1対1の普通の恋愛ものなんですね。中田ゆみさんは、非常にバランスのいい作家さんで、、、、この人、男なのか、女のかどっちなんでしょう?微妙にわからない、、、きとっとエロ漫画の狙っているマーケットに忠実で、基本を特に逸脱しようと、オリジナル思考を出すこともないので、非常にオーソドックスに設定を消化しようとします。文学的により追求する視点で言えば、残念に思える点があると2点あります。『奥さまは生徒会長』若菜羽衣生徒会長が、強いリーダーシップを持つ生徒会長で、本来ならば会長になれたはずの実務的には有能そうな副会長の和泉隼人くんとの関係に物語の焦点があるので、この関係性は本来は、より上位者に公的世界では権力がある会長と生徒会長が、プライヴェートでは逆転とは言わなくても関係性が逆になっているというところにポイントがあるべきなんです。設定を深く追求しようとすれば、本当は、そうなるのが脚本の強い可能性です。この場合は、ライトなH漫画なので、そういう葛藤もなくバカップルになってイチャイチャしますが、特に『奥さまは生徒会長』の生徒会長の造形は、強い意志を感じます。最初は、生徒会の選挙でコンドームをばらまく美少女会長候補というアイディアだったのかもしれませんが、もし日本の公立高校まぁ私立でも、セックスや恋愛に関してこれだけリベラルな方向に舵を切れば、生徒の中にも強烈に反発があるでしょうし、学校とも対立しますし、PTAだってだまっていないでしょう。また、当然彼女をひきづりおろそうとする勢力からすれば、副会長との関係は、暴露にはとてもいいネタです。また、2点目ですが、これだけ権力への志向がある若菜生徒会長が、こんなに副会長(男の子)の都合のいい『奥さまという受け身なポジション』にとどまる理由がわかりません。そこには絶対に葛藤があるはずです。たとえば、現実では、彼女の政策についてこれないとか、動きが鈍い副会長を叱責して教育しなければいけないのに、、、夜は逆に教育されちゃう(笑)とか、そういうのがあって、1エピソードでは、いちゃこらですが、これが長く続けば、彼女の内面で、この権力の逆転をどうとらえているのか???そこまでして、なぜ副会長の和泉君が好きなのか?身体をささげるほどに?というのは、僕にはとても疑問です。そこは、話が短いので展開しません。
というような綱引きのエピソードを僕なんかがこの設定を見ると思いついています。
でも、それって深刻になってしまいますよね(笑)。なので、そういうのは却下です(苦笑)。
僕は、ミクロの関係性が、マクロの出来事どうリンクするのか?それらの時の試練にどう対抗するのか?というのが、常に興味のコアにあります。なので、すぐそういうことを思いついてしまうんですが、、、僕も馬鹿じゃありませので、だから、この漫画がダメあとかそういうことが言いたいわけではありません。この漫画は、ライトなHな漫画のマーケットのところで、可能性をよく狙ってバランスよく完成した良作です。
とはいえ、これが長期連載になれば、別です。
ただ、たぶん作者はマクロの設定には、あまり興味がないんでしょうね。「そこ」に興味がなければ、当然脚本は、関係性のメインになります。そもそもマーケットがそういうマーケットですから、作者が強い意志がなければ、そりゃーそうなるものです。で、そうなると、どうなるか?っていうと、話を広げるために、ロリッ子?でもないかな、の書記を出したり、生真面目な風紀委員長(巨乳)とかが出てくるわけです。けど、主人公(ここでは男の子になってちゃうんですね、エロ漫画だから)の和泉副会長に絡んで、、、、風紀委員長とかたぶんマジ惚れっぽいのがわかってくるんですよね、、、そのへんで3-4巻。そうすると、話が、展開するんですよね、、、、というか、しないかもしれませんが、ようは、ここでいう
飽和
っていうのは、物語世界でも時間は進むし、エピソードの積み上げが起きると、、、、やっぱり、これどうにかなんないの?ってなるんだなーって。別に三角関係もハーレムメイカーも、中田ゆみさんはほとんど意識していないというか、少なくとも設計はしていないんだろうけれども、話を進めて行くとこうなっちゃう。ここから「どこへいくのか?」というので、、、、もしくは、このポイントからどうするのか?という設計が連載前にあるかどうかで、物語の長期連載の質というのは決まっているんだな、、、とそういうことを少し思ったんですよね。
最初に行った系譜の流れが必ずしも正ではないですが、ああいうふうに、長く書けば必ずつみあがるんだな、、、と。
そんなことを思った今日この頃です。
ぼく、風紀委員長が好きなんですよね。こういう融通が効かないまじめな子って好きだなー。