『ツナグ』 辻村深月著 安定の辻村節なるも、小粒な話でした。

ツナグ

客観評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★3つ)


辻村深月さんの大ファンなんで、小説が積読になっていて、今回の出張の新幹線の中で消費。が、映画にもなった作品だと思って期待していたのですが、、、、、いまいちでした。「死者に会える」というお涙頂戴ものの設定を、様々なひねりを加えていること、最後の章で、当事者ではないツナグ側の視点に変えて全体を統合していることなど、構成がうまく、最後に様々なものが複雑に合流する辻村節を見せてもらった感じがして、あーやっぱりこの人だなーというオリジナルなうまさはあるんですが、どうしても小粒な感じ。この系統の話ならば、まぁ別に読まなくてもと思ってしまった。仕掛けが凄いうまい人なので、やっぱり長編を読みたいなと思いました。期待が大きかった分、がっくり。

嵐美砂、御園奈々美の話のように人間の真理をえぐる話であるならば『凍りのクジラ』までいってほしかったし、ツナグの視点から全体を頭語するカタルシスを見るならば『スロウハイツの神様』のような壮大なものを見たかったし、と思ってしまう。辻村さんの最初の作新ならば、『凍りのクジラ』や『ぼくのメジャースプーン』がおすすめかな。


スロウハイツの神様』 辻村深月著 この絶望に満ちた世界を肯定できると力強く断言すること
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20110616/p3

『凍りのクジラ』 辻村深月著 その安定した深い人間理解に感心
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20091023/p1


凍りのくじら (講談社文庫)