アメリカ南部・バージニア州のシャーロッツビル(Charlottesville)事件のメモ その2


したがって、大統領への批判の中心にあるのは、トランプ氏が拘ったどっちもどっち論と言うことになります。思うに、このどっちもどっち論は、①現在の差別主義者への態度、②歴史を現在の価値観で裁くことの是非、そして、③法と秩序を維持する責任、の3点についての混同があります。

政権の言動を見る限り、私には、これが意図された混同であったように思えます。それは、政治の正義としても、政権の戦術としてもいかにもまずいものでした。


20170822
シャーロッツビルの悲劇
http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/08/22/012740

三浦さんのこの分類は、なるほどなーと唸った。特に、①と②が区別できていないと全く話が進まないで感情のぶつけ合いになってしまうのだろう。僕は明らかにこの事件を②の視点から見ていて、そういう文脈で物事を見ていました。靖国問題とか、歴史でこじれる話というのは、①の現在の倫理や価値観と、②の歴史的文脈との乖離の部分で、人々が分断してしまう構造にあるようで、これはよく覚えておきたい問題の可視化の方法だと思います。ちなみに、僕は、①への憤りより先に、②の現在の価値で歴史的な文脈を評価する姿勢に感情的に反発するのが先に来る人なんですね。だから、こういう問題が起きると、すぐ②の視点で感情的になるんだなー。これは覚えておかなければ。



そして、この話題の先に、最近出てきた話が、NHKに出ていたアンティファの話。アメリカの友人がだいたい憤っていたのは、メディアが全然流さないが、左翼の方が武装化して暴力をふるって話を大きくさせたんだ!という部分が報道で抜け落ちている!といって怒っている人が何人もいたんですよ。僕は、よく意味が分からなかったんですが・・・・これ、アンティファ、というのですね。右翼が過激化して大きくなっていくのに従って、左翼も過激化しているんです。どっちが先かは鶏卵の無駄な議論で、これはそういうものなんでしょう。



2017年9月7日(木)
揺れるトランプのアメリカ 〜白人至上主義 VS“謎の集団”〜
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4029/


この議論が出てきたというか、可視化されたのは、なるほど、と唸ります。さすがのNHKだな。

米国で「アンティファ(Antifa)」という言葉がしきりに語られるようになった。アンティファとは「アンティ・ファシスト」(Anti-fascists)の略、つまり「ファシストに反対する勢力」という意味の略称で、極左の暴力的な秘密組織なのだという。

 そのアンティファがいま、米国の政治や社会で触手を広げ始めた。

“極右勢力”に激しい暴力で対抗
 ごく最近では、8月12日にバージニア州シャーロッツビル市で起きた紛争でアンティファが重要な役割を演じたことが知られている。

 同市では、南北戦争の際の南軍司令官の猛将ロバート・E・リー将軍銅像を撤去することを市当局が決定した。リー将軍は特に南部の白人から高く尊敬されている。市当局が撤去を決めたところ、白人至上主義とされるKKKや、ネオナチなど、超保守の極右組織のメンバーが撤去への抗議運動に加わり、紛争が起きた。

 この極右勢力に対抗して、激しく争った側に、アンティファを名乗る人間が多数いたという。現地での当時の報道によると、右派の暴力に対して棍棒やバットを振り回して最も激しく戦ったのが、黒装束で覆面のアンティファの面々だった。



米国で勢力を広げる謎の組織「アンティファ」とは
JBpress2017年09月13日07時00分
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/jbpress/world/jbpress-51057?page=1


結局のところ、構造を可視化していくと、三浦さんを借りるとたしかに3つに分解できそう。


①現在の差別主義者への態度

②歴史を現在の価値観で裁くことの是非

③法と秩序を維持する責任


それぞれの是非や戦術の妥当性は置いておいて、また今回の事件が激化して暴力がエスカレートした直接的な原因は、右翼の存在感上昇に対して左翼側が暴力で対抗した部分があるのでしょう。これ、いろいろなところで指摘が出ているので、大枠そうなんじゃないかと。それに2016年の選挙でたしかにバーニーサンダースら極左の若者のどぎつい差別意識と暴力性は、とても指摘されたところですね。そして、じゃあ、なんで左翼の中に急進派が生まれているかというと、やはり大きくは、オバマ政権の登場によって、それまで左翼の中でも極端であった立場が中道になってしまうくらいに、リベラリズムが進んできたことに対する反動で右翼が台頭したためでしょう。右翼の存在感の上昇と暴走は、確かに目につくようになってきましたからね。左翼は理性的で、それまで暴力に走っていなかったのが、我慢の限界が来ているということなんでしょう。また、なぜオバマ政権の登場や左翼側が急進化したかというと、ブッシュJr大統領のころから共和党が、極右側にふれていること、宗教右派を取り込んできたことが遠因なのは間違いない。・・・・と考えると、とても原因は複雑だなーと思う。共和党宗教右派を取り込んだ理由は、2050年に白人人口が50%を割る流れから移民とマイノリティにシフトした民主党に全くかなわないことがわかってきたことへの対抗として編み出された戦術なわけで、、、、。ちなみに、トランプ大統領の支持基盤は底堅くて、今回の事件でもほぼ揺らがないんですよね。また共和党に対する支持の過半以上を確実に抑えてい(世論調査で出ている)ので、議会もトランプさんにたいして、どれほど嫌いでも、なかなか文句が言いにくい。底堅い理由は、やはり中産階級のマジョリティにシンパシーを持たれる要素が強いところを意識しているからでしょう。ニクソンレーガン時代の戦略ととても似ています。ただ、彼らに比べると、凄く穴が大きいのもまた事実ですが・・・・。


世界は、やっぱり単純じゃないです。もう少しコツコツ調べてみたいです。