第七話「母の指笛」


ふと思ったのだが、血の色を連想させる紅葉の葉のシーン。闘蛇に喰い殺される兵士のシーンの戯画化。これ、演出的にとてもとてもうまいなーと思う。なにか世界に深みを感じさせる。昨日も書いたのだけれども、ともすれば、世界の成り立ちや慣習・因習を丁寧に描く・・・要はその世界に住む人の「日常」を、描くものは陳腐になりやすい。それが、陳腐にならないでリアル感を持たせるためには、日常の手触りに現実感覚を付与してあげないといけないが・・・そもそも現実ではないものなわけで、その時に「モノそのもののリアル感」や世界の手触りを演出できるかが勝負になるんだが・・・シーンの途中途中でカットが入る、アケ村の入り口の野花や、この村の因習を映し出すかのような石像の闘蛇・・・・美しいなぁ、、、と思う。行為背景があるからこそ、こんなにも万感胸に迫るんだろう。作者がこの作品を、「21世紀のハイジにしたい」と言っていたそうだが、なるほど、この作り、この感じ、ハイジのアニメに似ている。ハイジが、山を離れて都会に行くところや、山に住む日常を丁寧に描き、、、何もないただの山の生活が、あまりに美しく描かれる・・・ほとんど今ほどのお金もかかっていない単純な風景であるにもかかわらず、その美しさが迫るような・・・・。


それにしても、アッソンというエリンの父親は、素晴らしい男だったんだろうなぁ・・・土地を持たない定住を嫌う民のソヨンに、これだけ愛を、、、、「ともに人生を歩む幸せ」を与えることができたのだから・・・。たぶん彼女は、自分が差別され、ろくでもない悲惨な人生を生きることを覚悟していたに違いない・・・・掟を破り、自分がいるべきでない場所に生きるということはそういうこと・・・ましてやこれだけ因習がハッキリ組み込まれている社会だ・・・・そして、それでも、それでも愛を選んだんだもの・・・・。まだ物語は遂にははじまったばかり・・・エリンが一人で生きていかなければならないスタートに立っただけ、、、でも、既にこの闘蛇の秘密をエリンが解き明かし、この世界に大きな何かのきっかけを与える、ある意味で、それは危険な存在になったというのは、、、その秘密は謎のままだが、非常に複雑で凝った構成で・・・素晴らしいなぁこれ。最新話まで行きついたら、本をすべて買ってすぐ読もう。素晴らしい。傑作だ。今日は、泣けた・・・・。