『ゼロの使い魔16〜ド・オニエールの安穏』 ヤマグチノボル著 せっかくシンプルで骨太の構造にひびが・・・

ゼロの使い魔 16 (16) (MF文庫 J や 1-19)

今回は、話が中だるみ、というか、「次のステージのための」中だるみという感じ。まぁまだ設定は色々使える部分もあるので、わからないのではないが・・・なんだか、テンションがなえちゃった気がするなぁ。いや、たぶんこの物語って、ルイスとサイトのラブラブっぷりが、基軸にあって、「それ」に対して本気では疑問をさしはさむ物語にしてはいけないんじゃないかなぁという気がする。えっと、どういうことかというと、ネタバレなんですが、この巻では、サイトとヘンリエッタが、けっこう本気で仲が進んでしまうんですね。これ、内容的には、精神的とはいえマジ浮気なんだよね、、、まぁもちろん、そのギリギリでルイズが大事だってことに気づくっていう設定なんだけれども、これまでのシュチュエーション的に女の子たちに囲まれてウハウハでも、鼻の下をのばすにせよ(だって男の子だもん)、精神的にはルイズ一筋だったんですよね・・・・いや、恋愛の物語としては、むしろ「こっち」の方が、確かに面白いし深いとは思うんだけれども、この物語は、あくまでルイズとサイトのラブラブっぷりを見る物語であるという「お約束」があって、その中心軸をぼやかしてしまうと、ぼくとしては・・・???と思ってしまうんだなぁ。いやシンプル(←悪く言えば単純すぎる)な骨太の物語なので、そうしたシンプルさを踏みだして複雑に物語を描くには、設定や人間の内面の描写が弱すぎるので、えっ?それはできないんじゃない?というか、そういう風に本気に話を進めるとすれば、このレベルの設定では・・・??と思ってしまうのだ。そういうのが露呈してしまった気がする。まぁもちろんこれ以上踏み込まないで、うまく流すとは思うけれども・・・・。これまでの、「本当は元の世界に帰りたいのだけれどもそれを嘘をついているんじゃないか?」というルイズの悩みや、「しょせん使い魔にすぎない自分はルイズに本気では相手にされていないんじゃないか?」というサイトの悩みは、そのすべてが骨太のこの物語のシンプルさと「からまっていた」からこそ、輝いたんだが、それが複雑化すると、複雑な割にはお前らなにも考えたなくない?と思っってしまうんだよなぁ。最初の1巻でこの物語を骨太だと激賞した同じ構造が、逆転してマイナス評価になっていまう。つーか、ルイズみたいな子がいながら、浮気してんなよ!って思ってしまうんだよなぁ。・・・というか、これハーレムメーカーの非・倫理的部分にひっかかるんだよねぇ。ようは、物語を宙ぶらりんにしたり、長く話をつくるために、本妻を軽視して、また関わる女の子の内面を弄ぶだけの「構造」に堕してしまっているんじゃないの?って受け手が感じてしまうんだよね。

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