人が変わっていくところ

カルバニア物語 12 (キャラコミックス)

新刊が出てうれしい。僕は新刊のスケジュールを抑えていなくて、毎日本屋を通るのが通勤のスケジュ−ルに組み込まれているので、思いもよらぬ新刊に出くわすと、神様ありがとう!と思わず天に祈りたくなるのです。何もかも管理すればいいわけではなくて、こういう僥倖というかサプライズがあると、なんか、いいことあるかもーという気分になります。


この新刊には、女王陛下の結婚というか種馬のお相手として一人の王族が登場します。


僕は、この父親の王族・・・女王の親戚にあたるスプーナ・フラコス・カルバニアの話が素晴らしく面白かった。P200だ。このスプーナは、タニアの父親の兄弟で、、、、あまりにもかっこよく、すぐれて皆に愛され、そして夭折したタニアの父親のカルバニアの先代王を憎んでいました。あまりに輝く太陽は「そこにいるだけで」周りを傷つけることもあるのです。そして早くに死んでしまったものだから、その子供である谷アを、スプーナは、いじめ続けます。


ところが、P200で、ついに我慢できなくなったタニアが、さけぶんです。


「私は”おまえ”じゃないわ、タニアよ!」


って。このシーンで、スプーナは、まるで付きものが落ちたように、タニアを認識します。このシーン、秀逸だなーと思いました。つまりね、先代カルバニア王である「兄の子供」としかとらえられていなかったタニアを、一人の人間としてとらえた瞬間なんです。まるで京極夏彦の憑き物落としみたいに。


その後の、人生をちゃんと生きている、(欲望のままに(笑))そして、何とか自分のどす黒い思い出に折り合いをつけているこのスプーナというオヤヂの達観した感じが、僕にはどうにも好きなんです。ああ・・・そうだよな、、、誰もが物語の主人公のように、かっこよく、鮮烈に生きるとこはできない・・・でも、彼のように、折り合いをつけて、何とか生きていくことってできるものなんだ。それは、けっしてかっこ悪いことじゃないって・・・。


なぜならば、それは人生を肯定して受容しているから。自分のどす黒い思いも含めて。ああ、やっぱりカルバニア物語はいいなー。