Republican National Conventionを実際に見てみた。

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2020/9/9。正直、この状態だと、どうやってもトランプさん勝つなという印象。いやはや、数週間前と全然違う。

選挙が混迷を深めているのは、2016年の時と同じ。リベラルサイドから見ると、だいぶやらかした感が強いトランプさん4年の任期、そしてCOVID19に対する初動の失敗などなど、障害物は山ほどあるにもかかわらず。「いまだ選挙はけっこ見てみないとわからないな」と思う気分が強い。誰に聞いても、同じことをいう。これはすなわち、ドナルドトランプ、45代大統領の強さを示していると思う。ちなみに、世論調査で数週間前まで10ポイント以上の差をつけていたのに、今はほとんど差がなくなってしまった。それどころか、勝負を決めるスィングステイツで拮抗しはじめたので、トランプさんの強さをまざまざと見せつけられている感じがする。


なぜだろう?


個別の話、たとえば、ジョージフロイドプロテストやシャーロッツビルの話など、友人といろいろ話してみたが、何か「本質に届かない」感じがして仕方がなかった。民主党側の立場、共和党の立場、それぞれに「世界観」が固まっているので、その世界観の説明を聞いているだけで、なんだか「現実にずぶっ」と触れている気がしなくて、いまだフラストレーションがたまっている。


■Rugged individualism-個人のエゴが拡大していく様をどこで抑え込むべきか?


最近共和党バリバリの人と、がっつり話し込むことがあったので、いろいろ話し込んでいる時に、面白い話を聞いた。


「NYとCAの知事は独裁者になりたいんだ!」


と怒りをぶちまけていた。これ、物凄くツボにヒットしたんですよね。というのは、民主党系バリバリの友人から毎週のように


「トランプは、独裁者になりたくて仕方がないんだ!」


と、怒り狂われていたので(笑)、全く反対のことを聞いて、ちょっと笑ってしまった。


文脈は、はるかに共和党支持者が、なぜクオモさんやニューサムさんを独裁者とののしるかは、納得だった。むしろ、トランプさんを否定する民主党よりもクリアー。それは、学校の対面授業や、経済のレオープン、マスクに関する文脈で、とにかく「具貢献も含めて、個人の自由を侵害するいかなる行為も許さない」という非常に古典的なアメリカの個人自由重視の文脈なので、わかりやすいのだ。


このむき出しの個人のエゴさえも守るという徹底的に個人の自由尊重の文脈


VS


個人の自由を制限しても公共の善を達成する


という、いわゆる「大きな政府」と「小さな政府」をめぐる古典的な対立の話に、すぐ結びつくので、とても旧来的な図式だ。大前提として、たとえば、COVID19でガンガン人が犠牲になろうとも、「個人の自由(例えばマスクをつけない)」が守られることは、はるかに重い話なのだ、彼らにとっては。マスクをつけないなんて、明らかに他者の権利を侵害しているじゃないか!と思う人は多いと思うが、それでも「そこ」を、野蛮に、赤裸々に、何が何でも守られないことは、アメリカ人の本質的な心の奥底の琴線に触れる、センシティブな部分なのだというのが、良くよく分かった。そして、これは、大都市などの市民や、高い教育を受けた人よりも、より素朴な感情の部分で、「納得がいかない本質的な部分」のようだ。


Rugged individualismということばがあるんだけれども、これ西部劇の世界なんだよね。Wild Westどまんなか。


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ちなみに、僕がこれで連想するのは、最近見たネットフリックスの『Tiger King: Murder, Mayhem and Madness(2020)』です。なんというか、アメリカの闇、、、、というわけでもなくて、実際アメリカの「本質の一部」なんだろうと思うけど、赤裸々にこの個人の自由を守る、自由放任を進めると、驚くべき個人のエゴが拡大して、そのエゴを持つ人が周りを巻き込んで「王国をつくる」感じがするのね。


2020-0725【物語三昧 :Vol.64】『Tiger King: Murder, Mayhem and Madness(2020)』アメリカのエゴを拡大して自分の王国をつくる自由さ-70

Tiger Kingの主人公のJoe Exoticって人の人生をずっと追っていると、これってとにかく「空恐ろしい程にエゴを示したい!」という情熱を感じるんですよね。はっきりいって、だいぶくるっているというか、もう「良く思われたい」というのを通り越して、道化でもなんでも、とにかく「目立てばいい!」的な感じ。この話を見てて、10数年前に不動産王ドナルドトランプが、マーサ・スチュワートともめているころに、ラリーキングのライブでインタヴューを受けたことを凄く思い出したんです。ラリーキングに、「エゴが大きすぎないか?」と問われて、「成功者でエゴがない奴なんかいない。隠すのがうまいだけだ!エゴがなくて成功できなかったやつの負け惜しみなんか聞く必要はない」といいきっていて、これほどまでに、なんというか善悪、醜聞気にせずに、とにかく俺の存在を世界に満たしたい!っていう自己肯定感が凄くて、アメリカ人の自己肯定感は強いけど、「その負の側面の代表」みたいなやつだな、と思ったことに凄く連想したんです。

普通、「エゴの大きさ」というのは、周りから「自分の思いだけではどうにもならない」と角が取れていくものなのですが、アメリカでは、時々全く角が取れないで、この自由が横溢するWild Westの中を泳ぎ切り、王国を一代で築きあげる人が、たくさんいる。これをして、アメリカンドリームと呼ぶんだけど、ロックフェラーやカーネギーなんかが代表格だけど、とにかく、そういう人が生まれるような「自由放任を良しとする」環境を作れ!という文化的社会的な圧力、、、国柄がある。うんとねーこの「王国をつくる」ってのは、三浦健太郎さんの『ベルセルク』のグリフィスと鷹の団が、僕の中のコアのイメージ(笑)。そこにつながったのが、『Tiger King: Murder, Mayhem and Madness(2020)』の動物園の創設者たち、アントレプレナーとも言ってもいいと思うし、僕的には、新興宗教の教祖なんだけど、とにかく自分のエゴの存在のエネルギーで、周りを洗脳支配して、ちょっとありえないような不思議な狂気の王国を作りあげる。普通、そういうのって、国家と敵対するので、ある程度規制されていくので、そこそこまでしか行かないのが、日本やヨーロッパなんだけど、アメリカは違う。アメリカは、ひたすら、野蛮な個人の自由が貫徹するWild Westを作ろうぜ!という国柄の風土がある。だから、「いくところまで行ってしまう」ところがあって、この野蛮で下品でド汚い闇があるからこそ、その反面、マイクロソフトビルゲイツやスペースXのイーロンマスクなんかが生まれる。この突き抜け感って、アメリカの自由放任を良しとして、Wild Westが一番、個人の自由を守るんだ!自由が(エゴが)充溢し、発揮できるんだ!というむき出しの欲望肯定が、アメリカの基礎的な価値にある。


このエゴの強さ(醜悪さ)を一切去勢せずに展開するので、新興宗教大国といえるくらいわけわからん集団がたくさん野放しになるのは、アメリカらしいなぁ、としみじみする。まさに「信教の自由」を体現する国。しかも、それが、銃とか武器で、完全武装してるわけなんで、まじでアメリカすげぇよ。FBIとか、ほんとうにすげぇ組織だと思うよ、こんなの相手にしているんだから。フェデラリストではないんだけれども、だからこそ、それを抑え込もうとする勢力というか組織も、同じくらい激しいってのがアメリカなんだなぁ、、、と思う。



ここで思うのは、、、、アメリカ人の本質的な部分として、エゴをガンガンに拡大させる赤裸々な人を、尊いと思って受け入れる土壌があるんだなーということ。



この文脈では、たとえばブッシュさんに負けたアルゴアさんとかは、めちゃ人気なくなるはず。信用できないってなると思う。ある意味、多少お馬鹿で能天気な人の方が、「人として信頼できる」という流れになると思う。


共和党支持者の根底にある「自然であることに目を背けるな」的な右翼の思想

■そこからつながるアメリカのおやじとしての共同体主義者(コミュニタリアニズム

ちなみに、イヴァンカさんが、ひたすら私の父の!を連発していて、やっぱりこの感じって、家族の家父長制的なシンプルなイメージを出そう出そうとしているように感じてしまった。

共和党支持者の側から見える歴史と世界観を物語で追ってみたい

いろいろ思ったけど、忙しすぎて書く余裕がないのでメモだけ残しておく。ようは、もうちょっと共和党側の世界観を理解してみないと、トランプさんの強さってのはわからないな、と思うので、もう少し掘り下げたい。


Republican National Conventionをフルで見てみるのは初めてなんだけれども、

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共和党的な映画って、あまり思いつかないなー。とりあえず、リベラルサイドの映画だけど、これは、凄く良かった。


2019-12-14【物語三昧 :Vol.43】『バイス(Vice)』 2018 Adam McKay監督 共和党の側から見えるアメリカの直近の歴史-48