R2 第8話『百万 の キセキ』〜デウス・エクス・マキナ-次の次元へダイブ

□視聴率問題

うーむ、これが視聴率がどん底な番組というのが、にわかに信じ難い。でもまーわかりにくいであろーことは、うん、、、たしかに、わかりにくいかも。何がこれほどのレベルの物語を、そういったマスマーケットのへの引っ掛かりをなくさせるのだろう…その辺は、とても興味深い。このへんは、今後も考えていこう。


□次の大きなステージへ飛躍するためのデウス・エクス・マキナ

えっと、今週は???という人も多かったのではないかと思う。僕としては、これは戦術的な演出ミスであると思う。というのは、たとえば100万人の人間にいっさい外部に漏れずに動員できる、というのがそもそもおかしい。ブリタニアだって、植民地政府であるからには、スパイはたくさん飼っているだろうし、さすがに100万人は難しい。しかも、「次」にどこへ向かうかの、100万を納得させるだけの演説や情報を与えなくて、あれだけの統率をするのは無理だ・・・と思う。というか、現実問題、少し行動が飛躍しすぎている・・・僕はこれは、実は次のシナリオ少し無理やりに進むデウス・エクス・マキナの手法だと思うのです。


もとはギリシア語のἀπό μηχανῆς θεός(apo mekhanes theos)からのラテン語訳で、古代ギリシアの演劇において、劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、いきなり絶対的な力を持つ神が現れ、混乱した状況に解決を下して物語を収束させるという手法を指した。悲劇にしばしば登場し、特に盛期以降の悲劇で多く用いられる。アテナイでは紀元前5世紀半ばから用いられた。特にエウリピデスが好んだ手法としても知られる。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%AD%E3%83%8A

ほんとは、この植民地エリア11の日本独立問題・・・・前回記事で書いた、帝国の運営と少数民族民族自決の問題は、仮にこれを、ユーフェミア問題というか、ユーフェミアの物語、とすると、これをある程度感情の納得を持って収めるには、あと数話必要だったのだと思うが、これはR2の話にとっては本質ではないので、(なぜ本質ではないかは以下に書きます)かなり割愛して物語を飛躍した印象がある。基本的にはこの結論は、僕は論理的には非常に納得だが、、、、ただし、感情をを納得させるのは、少し難しかった。たぶん丈の問題だろうと僕は思う。



□スザクが目指すもの〜地球連邦政府への道-帝国の運営は、民族のオリジナリティーを消去する

えっと、この話は長くなりすぎるので、簡単に書くと、基本的にブリタニアが目指しているのは、地球統合政府なわけですよね。それで、「力あるものが正義!」と語っていること、植民地人であるスザクが平気でラウンズに取り立てられることからも、ブリタニア自体の政治運営体制は、宗教や民族、血での極端な差別はないと考えられる。もちろん、戦争にブリタニア人を駆り立てるためには、ある程度誇りをモチヴェートさせる区別は(ましてや貴族制だし)あるだろうが、基本的に100年単位では、そういった区別よりも能力による統治を考えているように僕は思える。とすると、それは、能力主義に立脚した地球統合政府でかつ、元首制ということになるだろう。



そうなるとね、ナンバーズの意味は、ナショナリティーの消去を目指しているようにしか思えない。


そのなかで、100年単位では、戦争のなくなる平和な統合政府が生まれる可能性は高い。ブリタニアが圧倒的に勝ち続ければね。その中での緩やかな同化を望むのならば、体制内改革として、帝国の支配を受け入れながら内側から体制内改革をすることが、地球統合政府による平和という視点からは正しくなる。ただ、その同化が進むまでの100年近く、民族の誇りをどぶに捨てろというのだから、、、これは難しいのだけれどもね。そういう意味では、スザク・・・・事実上の日本人のブリタニア臣民としての統合のシンボルであるスザクと、それを支えきる意志のあるナナリー総督に、従順な日本国民を、より緩やかな形でブリタニア臣民として同化させるというのは、現状の内乱を避けるという意味では、非常に妥当な戦略だ。ユーフェミアの政治思想の根幹もここにあったわけだし、スザクが遠くに見ているのもこれだから。


そして、そのとき一番邪魔でかつ重要なのが、ゼロの思想と黒の騎士団だ。


彼らの誇りと矜持があったればこそ、帝国との駆け引きが生まれたわけだが、、、、逆にいうと、日本民族の誇りと矜持が凝縮している上に、独立思想に燃えるこの集団は、最も帝国の運営と平和にとって邪魔な存在になるわけで、、、これを分離するというのは、なかなかひねった考えだとは思う。ただ、ナショナリティーの基本である、土地への狂信をゼロがどう、黒の騎士団に納得させたかが、、、これから明らかになると思うのだけれども、あっさりされすぎだけれどね。だって、流浪の民・・・ユダヤ人のディアスポラ(離散)と同じ状況になれ、というわけだから。


□地球統合政府の道〜その前のステップとしての3軸の争いというステージへ

前回に、このルルーシュの世界は、中華連邦とEU、ブリタニアという3軸の争いになっており、これってガンダム00の世界観と同じですなんですよ、といいました。まー石原莞爾の世界最終戦争論とか、そういったものでもいいのですが、地球の統合政府に至るまでに巨大な経済圏がある程度ブロック化して、そのブロック同士での総力戦になるという発想は、まぁ経済学をやっていれば常識のようなもので…


ブリタニアの皇帝とルルーシュの争い、、、、そしてその対抗できる勢力としての中華連邦、EUを巻き込んだパワーポリテクスに持ち込まないと、本当はルルーシュの思想や目的は全然完結しないんですよね。だって、日本なんて小さな地域を独立させても、ルルーシュの打倒ブリタニアという目的は毛ほども動かないんですから。


だから、どこかの次元で、日本独立の問題を超えて、国際的なパワーポリテクスと、、、、黒の騎士団のような民族自決を求めるテロリストとの国際的な連携をとること、、、そしてより巨大な勢力の政治抗争の駒として、国際舞台に上がることが物語上絶対必要だったわけです。そのステージに早く上がるために、この少し性急なデウス・エクス・マキナがあった、と思うのです。


まぁその伏線はずっとあったわけで、ディートハルトに戦術が変わっても戦略目的は変わらないと言っているのは、基本的にルルーシュの戦略目標(=ブリタニア打倒、マリアンヌ后妃暗殺の真実追求、ナナリーが幸せに住める世界)は、特に変化がないわけで、、、あのね、、、これは、中華連邦のなかに、総領事館の中の部屋の一室を領土として、独立国として独立させた時点で、、、あーこれは、「あれ」だな、と思っていました。


「あれ」って、すごく単純にわかりやすくいと、かわぐちかいじさんの『沈黙の艦隊』の思想です。これって、非常に陳腐なナショナリズムから出発して、見事に世界政府に至ったわけで、最近の作品の中では圧巻だと僕は思っています。しかも超わかりやすいエンターテイメントなんだもの。これってテロリストが、民族自決の狂ったナショナリティーから地球統合政府に至る具体的な戦術なんですよね。だから、一つの部屋の独立国というのは、領土的野心を持たない、思想による統合を目的として連帯運動という思想上の、世界政府内部での市民運動的性格を帯びるようになるんだよね。当然、全世界の虐げられた民の結集を図るであろうし・・・・

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また既に中華連邦が、皇帝により統治される連邦国家で、、、水滸伝のような群雄割拠の状態にあって、かつ皇帝権(=いまでいう共産党一党独裁権限)が崩壊して、外敵がいるから何とかまとまっている状況である、というかなり厳しい政治状況にあることは、もう数シーンで分かる。


その客分の移動する軍隊として、黒の騎士団が大きな波紋を投げかけ、世界政治に組していくことであろうことは容易に想像がつきます。



えっと、今日はここまで。大きな枠組みを考えると、こういう風なのは、もともと監督の狙っていたステップなんだろうけれども、感情的にはも数話かけたかったところではある・・・が、、、僕はここでこういう飛躍を持ってくるのは物語の展開上わかりますよ。戦略的にも、自分の個人的な満足(=学園の日常を守る)と大きな戦略目的を同時に考えるルルーシュの賭けにも似た戦術は、よく理解できる。



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