フラグマンを読んだ。

ジャンプ SQ. (スクエア) 2011年 02月号 [雑誌]


物語三昧の熱心な読者さん(笑)である丈山雄為さんのデヴュー作である『フラグマン』を読ませていただいた。折角知り合いでも「つまんなかったらどうしよう?」とかいつも思うのだが(笑)、文句なしに面白くて、とてもよかった。というか何度も読み返しています。というか、素晴らしい出来。第80回手塚賞佳作受賞作品で、「審査会にて絶賛」とあったが、まーほんとかどうかはともかく、僕も素晴らしい作品だと思う。原作は、maa坊さんという方で、この人が僕のブログを見ているかどうかはわからないのですが(たぶん見ていないと思う)、まーなんというか、僕が普段からいっている、なんというかなー哲学みたいなものを凝縮した物語で、僕としては自分の価値感に合うので、凄く凄く感動した。いいよ、これは。かなりお薦めなので、買って読んでみましょう!。


あらすじは、総一郎くんという14歳の少年は、普通の少年なんだけれども、、、実は、『フラグ』が見えるのです。いわゆる、恋愛ゲームでいうフラグがたつみたいなことをいうように、ようはこれから起きる出来事の兆しみたいなものが、ゲームみたいに見えちゃうということなんです。これ、とてもいい話だなーと思うんですが、これって、とても超常の異能の力じゃないですか。こういう力って、普通は少年漫画などのエンターテイメントの世界では、主人公(=読者)の全能感を感じさせる小道具としてつくられるものだと思うんですよ。けど、この物語では、この主人公の総一郎君にとって、この能力は人生を好転させたり自分がメリットを得るためにほとんど役に立っていないんですね。多少危機回避がうまくなって、というだけで。じっさいどっちかというと、総一郎君は、スクールカーストでは下の方のいじめられっ子ポジションの子です。そんでもって、ある時、クラスでいじめられている白鳥さんという女の子が、いじめられっこに騙されて校舎裏でずっと彼女を励ましてた人(=いじめている人の罠)に呼び出されるという、またまたしんどい、けど、小学生ぐらいだとよくあるいじめの現場に出くわすんですね。そこで、彼は、彼女に「罠フラグ」という心に傷を負う爆弾を見つけちゃうんで、逃げようとするんですが、、、自分がいじめに巻き込まれるのが分かっているけど、見過ごせなくて、つっこんじゃうんですね。んで、いじめにまきこまれちゃう。


つまりね、リスクがあるのはわかるんだけど、それを解決する力があるわけじゃないので、結局、何にも自分にとってメリットはないんです。この設定はいいなーと思いました。フラグこそ見えるけれども、特に何か特別な解決力がないってことは、ようは普通の人、等身大の人ってこと。ようはちょっと洞察力が優れているってだけだもんね。つまるところ、意味するのは、普通の人ってこと。僕自身も、けっこう観察眼はある方だと思うので、実在では見えないけど、フラグというか、いろんなものの兆しはわかるので、この感覚は凄くよくわかります。


けど、ここで凄く面白いのは、『分岐フラグ』っていうフラグが現れること。実はですね、僕この「フラグが現れる」って、とくに感覚的に凄くわかるんですよ。自分な周りのマクロの流れや空気の流れや仕組みに加えて、そこに参加する登場人物(=ようは周りの人)の動機を分析し続けていると、ふっと、あれ、「この次はこうなって、ああなって、そうなって、ああーーーーーその果てにああなるのか!」みたいな、数手先のことが、ふっと見えてくる時があります。特に僕は動機分析が得意なので、人を少し観察していると、「その人が人生でどうなっていくか?」が結構リアルに分かります。どうでしょう、、、、言葉だけだとウソ臭いですが、たとえば、きっと1/2の物語三昧オフ会で僕が他人の分析をしている場面をぶっ通しで見た人は、「あー確かにああいうふうに詳細に分析していけば、この人はかなり先まで見通してもおかしくないな」って実感を持ってもらえると思うんですよね。ってブログの読者にはさっぱり分からないたとえだな(笑)。


そうしたことがずっと継続していると、何らかの場面に出くわした時に、


あっ、どうなるかはわからないが、いまは人生の分岐点だ!!!と思える時がきます。つーか見えるんですよ、本当に。


僕はこの時にいつも、栗本薫さんの書いた名探偵伊集院大介の言葉を思い出します。「人生に時あり」という聖書の言葉です。


そして、そういう分岐で「正しい選択」を積み重ねていくと、なんかとんでもないところへ自分を連れていってくれる、論理的にはあり得ない、大逆転が起きるんですよね。


そして、とても重要なのは、そういう「大逆転」が起きるために必要な「正しい選択」というのは、目の前のリスクだけを見ると、まったくもって当たり前な正しい対応なんだけど、それを行うと凄く目の前のこととしては損なことが多いんですよね。もっといかえれば、その選択肢で、わざわざそんな方を選ぶのは、とてもしんどいことなんです。


けれども明らかに「目の前の部分的な出来事」としては損なこういうを積み重ねることによって、何かの残高がたまっていって、凄い出来事が訪れてくる、、、そういうふうに僕は思っているんですよ、世界を。難しいですよねぇ。でも、目の前のことでは明らかに損でも、自分の信念や価値観からいって、譲れない!ということは、「後先を考えないで(=リスクを度外視して)」選択して、行為しなければならないってことはままあるものなんです。この「えっ?それ、ダメじゃん!」みたいな行為を、無償で損得抜きで世界に表明できる人だけに、周りの「感染」が起きて、絆に至ることができるような気が、僕にはします。・・・物語三昧をの過去の履歴を読んでいないと、さっぱりわからないロジックですねぇ(苦笑)。いやーなんちゅーか、この世界感覚って、凄い微妙なモノで、この丈山さんの書かれる絵に凄くマッチするんで、あーーーうんうんという気になりました。