個人主義という「寂しさ」を抱えてポジティブに生きていくこと

いつも思うのだが、自分で決めて、自分の意思で動いて、がんばっていると、、、、いいようのない孤独感と寂しさが胸を襲う。僕は、小さいのころから、人と合わせるのが苦手な子供だったのだが、自由に自分のやることを「他人に合わせることなく」行動してると、自分は自由だ!という高揚感とともに、なぜか不思議な孤独感があってこれって何なんだろう、とずっと思っていた。大好きな小説家の栗本薫さんに良く出てくるフレーズに、「人間はみんな一人ぼっちで孤独なんだ、その事実を気づかない奴は幸せな奴だが、そうやって騙されたまま人生を浪費していく。僕はそうはなりたくない。孤独に耐えても、自分の道いを歩きたい。」というようなのがあった気がするのだが、この流れがとても好きでいつも胸にある。これ『レダ』だったかなー。うろ覚えだけど。少し抽象的にいえば、自由には孤独が付き纏うものなんだ、ということなんだろうと思う。このことを明確に理解したのは、夏目漱石の『私の個人主義』を読んだ時なんだけれども、同じようなことを思う人はいるのだなーと、偶然見つけたブログの文章を引用。

私の個人主義 (講談社学術文庫 271)

「....だから個人主義、私のここに述べる個人主義というものは、決して俗人の考えているように国家に危険を及ぼすものでも何でもないので、他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬するというのが私の解釈なのですから、立派な党派な主義だろうと私は考えているのです。もっと解り易くいえば、党派心がなくたって理非がある主義なのです。朋党を結び団体を作って、権力や金力のために盲動しないという事なのです。それだからその裏面には人に知られない淋しさも潜んでいるのです。既に党派でない以上、我は我の行くべき道を勝手に行くだけで、そうしてこれと同時に、他人の行くべき道を妨げないのだから、ある時はある場合には人間がばらばらにならなければなりません。そこが淋しいのです。」ー「私の個人主義」頁150-151



最後の一文の「そこが淋しいのです。」というところを読むたびになぜか私は、なんとも言えない痛みのようなものを感じると同時になにか勇気の欠片をもらえる気がするのだ。



柄谷行人著の「<戦前>の思考」の中に納められている「近代の超克」というエッセイの中で彼は、夏目漱石の言う個人主義をイギリス的な自由主義思想であり、ヒューム哲学に影響を受けているだろうと述べている。また、日本の知識人の系譜においてこのような立場は極めて少数であり軽視されてきたと言う。その数少ない自由主義思想を体現した人に、石橋湛山と戸坂潤などの名前が挙げてられている。




生きざま露出メディアの台頭
http://d.hatena.ne.jp/iammg/20110210


<戦前>の思考 (講談社学術文庫)

それで、うん、この自由であることと寂しさの同居って、ヒュームなどの系譜のイギリスの自由主義思想なんだろうな、と思うの今日この頃。柄谷行人は思想の評価軸に「未来と現在のどちらを重んじるか?」というのがあったが、どうしても「寂しさ」がある分マイナスのイメージがある個人主義だったんだけど、、、、なるほど、未来を重んじるという視点があると、この主義・・・「生き方」って、とてもポジティヴになる気はする、と思ったのを覚えている。


大学生ぐらいの頃にこういうことを考えていた時は、まだ抽象的な知識で考えているだけだったけど、年齢を経ていくと、「自分であること」ということ、「大人であること」を維持し続け積み重ねることは、常に自分で判断し行動するという自信と、その裏返しである寂しさを飼いならして噛みしめて、そして「前へ向かって」が頑張っていくことなんだな、ということが体感としてわかるようになってきた。


これが、日本社会が「周りに合わせるモデルが喪失したこと(=大きな物語の消失・高度成長の終焉)」して、成熟化したことというのも関連あるのかな?とか思ったりするが、たぶんそれよりも、やはり「大人として生きること」ってのは、こういう寂しさをかみしめながら、生きていくんだろうと思う。そしてそれは決してマイナスのことなんかじゃなくて、前を向い――行動し続けている限り、プラスなものなんだと思う。だから、仕事でもなんでも、自分で考えて自分で決断し続けていると、ふと襲う一抹の寂しさや孤独感は、それは正しいサインだ、と思うようにしている今日この頃です。そして、そういう自分「であり続ける」ことを肯定して、楽観的に楽しく生きられたら、それはきっといい人生だと僕は思うのです。きっとイギリス紳士のダンディズムの権化のようなおじいさんから感じるちょっと滑稽なユーモア、見たいなイメージは、この生き方の完成形を見るからなのかもしれません。



自分の考えを貫くというのはちょっと孤独で逃げ道のない行為だけれども、それを「楽しむ」ことができれば、きっと未来が見えてくる気がします。



そうえいば、ちきりんさんが、高野悦子の『二十歳の原点』について書いていた昨日の記事も、とても似たことを書いているような気がする。

2011-02-10 Hidden agenda
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/2011021

ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法
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二十歳の原点 [新装版]