ストックで生きていく世界とはどんなところなのだろうか?2〜ストックはどこから来たの?

ストックで生きていく世界とはどんなところなのだろうか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20140425/p1


ふと思いついたので、ちょっと追加。続きです。


ちなみにこの議論で重要なのは、ストック経済というのは、高度成長期のイケイケの時期に獲得した遺産(ヘリテージ)をどう長く薄く引き延ばすか?という議論でもあります。


なので、今後は、周辺国との外交交渉がすっごいレベル高くやらないと、危険です。というのはストックってのは、帝国を形成して先行者利益で蓄積したものなので、当然収奪された側の周りの国は、物凄い恨みを持っています。


日本が、俺たちの国からいろいろ奪ったから、先行者利益を獲得しているんだろう!返せっ!。っていわれますよ。


まぁ、通常は文句言えないくらい虐げられると何もできないんですが(ヨーロッパとアフリカのように)、日本の場合、旧大日本帝国の勢力圏は、みな強国です。そのうえ、日本は戦争に思いっきり負けました。まわりは、中華人民共和国、台湾、韓国、シンガポールインドネシア、アセアン諸国、、、もちろん、帝国の拡大期、近代資本主義のヨーロッパ文明の吸収前期ってのは、奪うだけじゃ単純にないので、日本の右翼的な視点からいえば、日本だってめちゃくちゃ現地に投資してその資産すべて奪われたんだから、えー文句ばかり言われても、そんなの不公平じゃんと思うでしょうが、、、ルサンチマンがたまるとそういうロジカルな言葉は、通じません。いいことしたからといって、悪いことしたことが正当化されるわけないもん。まぁ、事実はどうか?、ロジカルはどうか?、外交的にどうか?、法律的にどうか?、とかそういうこと全く関係ありません。こういうのは感情的なもんなので、ましてやたとえば、中国は建国の正統性が、抗日にあるわけですから、行き過ぎた民族教育もそりゃあるでしょうし(日本が過去なかったとは、口が裂けても言えませんよね)、そりゃー大衆コントロールできなくなったり、それを利用して現状の外交で優位に立とうと戦術を組み立てるのは、相手の立場になってみれば当然です。やられたらやられっぱなしで我慢するのが正しい!とは、感情的にいえることではないですもの。


プライドや土地を踏みにじるということは、民族によっては半永久的に恨まれます。ちなみに、すぐ忘れる日本は、そもそも異常な国です。マッカーサー連合国最高司令官が、諸外国が天皇を絞首刑にしろという強い圧力があった時に、天皇を助けるために使ったロジックが、もし天皇を絞首刑にすれば、日本は半永久的にアメリカを憎み続ける(イラクでのゲリラ戦のように)ので、100万の軍隊を常駐させる必要がある、です。ようは、普通、大きな恨みは、半永久的に恨み続けられるのが、普通だってことです。いきなりアメリカ万歳とか、意識が変わる日本は、とても異常な国なのです(苦笑)。


『なぜ日本は〈嫌われ国家〉なのか ──世界が見た太平洋戦争』 保阪正康著  せっかくなので反対方向の意見を同時に読んでみよう
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20140412/p1


なぜ日本は〈嫌われ国家〉なのか ──世界が見た太平洋戦争 (角川oneテーマ21)


日本帝国の申し子—高敞の金一族と韓国資本主義の植民地起源 1876-1945
日本帝国の申し子—高敞の金一族と韓国資本主義の植民地起源 1876-1945


少なくとも豊かになって50年ぐらい過ぎないと、平静にはなれません。それはプライドの問題だから。プライドを刺激するような、露骨な政策をやってケアなしだった旧大日本帝国の運営方針ってかなり問題でしたからね。特に軍政はひどかったと思う。なので、アジアでの歴史の公平な評価と、その共有は、今後50年の課題になると思います。従軍慰安婦とか個人賠償の問題とか、ああいうのってのも、大きな歴史共有のピースの一つなんだろうと思いますよ。法律や国際法で終わっているからといって、終わっているわけではないですもん。隣国なんだから、お互いの感情的共有は、逃げることができません。まぁ、行き過ぎた歴史修正主義は、確実に世界から孤立する道につながります。一人で生きているわけではないのです。自分に、自国に都合のいい物語ばかりを他者に認めさせるのは不可能です。


しかも、勢力の逆転期なので、外交と政治的駆け引きが絡むので、とっても難しい。そして、本来はこれをもっとも、冷静にできるのは、日本でなければなりません。だって、かなり先行者利益を持っているんだから。それがシンプルな右翼的言説と現状の自国の国益だけでものを考えるのは、、、、まぁ、少なくとも帝国を形成したほどの偉大な国家の末裔としては、お粗末な感じがするなー僕は。こういうのは、ヘリテージ、ストックを持っている先行者側が、より良き知恵で対応していくしかないんだろうと思うんですよ。そうでなければ、立場が逆転すれば、そりゃやり返されますよ、当然に。ただ、やられたら、やりかえすだけでは、未来がないのも事実ですよね。では、どうするか?ってことでしょう。


ちなみに、アイルランド問題や旧植民地との関係など、連合王国(イギリス)もこの辺はものすごい苦労をしています。もう脅しすかし、卑屈、土下座、憐憫、暴力とかもういったりきたり。そういうもんなんですよね(苦笑)。別に日本だけの問題じゃない。旧時代の列強諸国は、どこも苦しんでいるんですよ。アメリカだって、ベトナム戦争の後遺症はものすごいものがあります。まぁ、そういうもんなんですよ。これも、日常みたいなもんなんですよ。非常時でも、特別でもなく、人類の歴史はいつもこんなことやっているんですねー。

女王、エリザベスの治世 先進国の王政記 (角川oneテーマ21)

しかしながら、全世界、全人類のヘゲモニーは、東アジアに戻りつつあります。中国が世界経済における比率が、歴史的平均の水準に戻ってきているのですね。そうなると、ユーラシアがやはり経済のヘゲモニーを持つ時代になるとすると、、、、おおっ、マッキンダーハートランド争奪戦だ!!(笑←いきなり飛躍しすぎ)、、、東アジアで争うのは、僕は長期的(100年単位)で見て、損だろうなーと思うんですよねー。なので、この地域がどうなっていくかは見ものです。

マッキンダーの地政学―デモクラシーの理想と現実

どうしても勢力逆転期なので領土争いと、中国の海洋勢力への台頭があるので、なやましいですが、、、軍拡競争をすれば、確実に、東アジア以外の地域につけこまれます。日本や韓国、台湾などの先行諸国は、高齢化による問題を抱え成熟国へ移りつつあって構造転換のコストが凄まじく必要。中国も、既に年金問題が解決をつかないほどのリスクを孕んでいます。ここで軍拡や軍の近代化に投資しまくれば、、、、まぁ、ぎびしいっすよね。でも、僕は信じていますよ、この地域は歴史的にも、凄い長い歴史がある凄い地域なんで、そんな馬鹿なことばかりすまい、と。そうでなくとも、かなり見事に成長と成熟の路線に回帰して、世界のGNPの過半を維持する方向に向かっているんだから、そうしたマクロトレンドが戦争すれば一発で壊れます。まぁ可能性が捨てきれないのが、怖いところではありますが、、、。


とはいえ、あと、50年ぐらい生きると、たぶん全く信じられないような違う世界が見れるはずです。ああ、、、人生って面白いですねー。


仕事に効く 教養としての「世界史」