客観評価:★★★★☆4つ半
(僕的主観:★★★★★5つ)
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(原題: Edge of Tomorrow)ダグ・リーマン監督作品。桜坂洋による日本のライトノベル『All You Need Is Kill』のハリウッド映画化。評価は、ダントツの星5。素晴らしく面白かった。絶対に原作も読む!と思った。最初からいきなり引き込まれた。テンポの良さは見事。まだこの記事を書いている時点で原作を読んでいないのだが、映画化のコアの部分に特化したテンポの良さは、素晴らしかった。死に戻りによる、繰り返しによって、主人公が強くなっていたったり、チート的に先読みで困難を解決していくというループものの類型の、成長物語と英雄物語の典型的な視点で切り取ると、まさにこうなるという感じ。成長物語の観点で脚本を切り取れば、主人公が、テンポよくどんどん強くなっていく部分が、重要なカタルシスポイント。だとすると、まさに、「そこ」だけにフォーカスした作品で、細かい謎解きとか、そういう話のミステリー的な部分ではなく、僕としては、どんどん繰り返しで、主人公が困難を克服していく、そのスピードと疾走感にこの作品の見事さを求めたい。逆に言うと、疾走感とテンポがよすぎて、主人公のケイジ少佐(トムクルーズ)の内面がどのように変化しているか、というような部分が少なくとも僕には一回目では読み取れなかった。が、それは、正直どうでもいいように思えるほどのテンポの良さだった。
とはいえ、内面の心理がわかりにくいのは、逆に言うと、余りの面白かったので、そこを見たかった、という気にさせてしまう。後から考えるとね。というのは、ケイジ少佐というのは、若者のを前線に送るのに何の躊躇もない広告屋で、明らかな人間のくず的なダメな人間として登場してい来る。その最低ラインは、要は自分が前線に行かず逃げてばかりいる覚悟のなさからくるものなのだが、何度も何度も脱走しようとするところから、心底性根が腐っていることがわかる。けれども、もう逃げられず、何度も死んで、同じ時間を繰り返す中で、彼は屈強な戦士に変わっていく。けど、この落差の心理的な理由がないと、なぜ?という気になってしまう。こんなくずな男ならば、途中で心が折れてしまうほうが、普通じゃないかな、と。でも、「そこ」はテーマじゃないのでしょうね。
英雄、主人公をハリウッドがどうとらえているのか、と日本のサブカルチャーがどうとらえているのか、というのが興味深い。漫画の小畑健さん(デスノート)を使用しているところも、興味深い。ここで分析していると、記事を書かなくなってしまうのでやめますが、小説、映画、漫画、それに日米と、様々な差異で、「何が選ばれているか」と「何を重視して描いているか」を見ると、非常に比較として面白いです。ちなみに、ライトノベルと漫画は、とても丁寧に内面の変化が描かれているが、アメリカの映画は内面はほぼゼロ。けれども、それがゆえにハリウッド的にフィットとしているし、疾走感のある映画になっている。この差は、日米というだけではなく、媒体の違いで「何を選択すか」の潔さが、脚本に現れていて、とても興味深い。比べてみると、とても感興がわくので、おすすめです。主人公のケイジ少佐(トムクルーズ)は、もともと日本人のケイジという青年だった模様。名前に名残が残っている。このヘタレからヒーローになっていく様の成長ロマンは、とてもライトノベル的だな、と思う。トムクルーズというのが、微妙にあっていないようで、あっていていい感じがする。この辺の選択も、興味深い。そしてなによりも、ループものの基本的な脚本構造がしっかり骨格にあって、ああ、日本から出た物語だな、と感心する。この系統が、他のルートで世の中に出たことは、とてもうれしい。本当にコアのコアのみを、抽出してアクション映画にした感じ。世の中の評価はわからないが、素晴らしく個人的には面白かった。
ノラネコの呑んで観るシネマ
オール・ユー・ニード・イズ・キル・・・・・評価額1650円
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-756.html
この監督は、『フェア・ゲーム Fair Game 』を2010に公開している。先日見たばっかりで、いい映画を撮る監督は連続しているんだな、と感心。
ちなみに、ループもので、面白いのをいかに列挙しておきますので、ぜひともトライを。すべてがめちゃくちゃおもしろいです。