『社畜の恋はもどかしい』上司が女性になってとか年上の働いている女性に恋をするというシュチュエーションが最近好き

部長と社畜の恋はもどかしい (8) (マンガよもんが)

評価:★★★★☆4つ半
(僕的主観:★★★★★5つ)

社畜的なハードワーク大好きな情勢社員と、「定時に上がる」ことをモットーとする部長の、オフィスラブコメ。最初の間をアイディア勝負だが、絵柄も素敵で、よくまとまっているコメディ。


ペトロニウスの性癖にぶっ刺さる。長く読者してくれている人は、知っていると思いますけど、働いてて仕事のできる頭のいい女性が、なのに普段ちょっと日常ダメダメとかが、僕のツボです。なので、この作品、めちゃ好き。


とはいえ、シチュエーションをちゃんと生かしていると、きっと数巻で終わるか、読み捨てる気分で、「シュチュエーションのみ」を堪能ていたんですが、志茂さん。作者素晴らしい展開。マーケティング的に「売れる」には、アイディアのシャープさと、典型的な時代の流れに乗っているのが大事で、ブラック会社や昭和的な社畜的振る舞いに対する批判的シュチュエーションは、まぁ典型的。でも、漫画の連載のパターンなんですが、連載が長期化してネタが切れてくるというか「当初のシュチュエーションコメディ」を深掘りして展開していくと、異様に化けることが多いんですよね。ばけないければ打ち切られて消える。これは作者の才能としか言いようがないんですよねぇ。ドラマ化したりアニメ化したりしても、この「最初のキャッチーで売れる部分」の展開だけで終わってしまうので、その作品の偉大な本質に辿り着けない場合は、ほとんどなのが、旬の扱いって難しいといつも思う。ドラマは見ていないですが、まず出来は良くないんじゃないかなぁと勝手な推察をしている。日本のドラマは、僕はまず見ないけど。漫画のコンテンツは連載が長く展開した後に、本質が現れてくることが多いし、「最初に設定したやウケ狙いのテーマをどのように換骨奪胎していくか」に見どころがあるのに、そこまで射程が届くものがほとんどないんだもの。


えっと、ペトロニウスは前置きが長い。


ここで一番言いたいことは、『部長と社畜の恋はもどかしい』は、前半部の社畜まるちゃんこと丸山真由美と定時で帰る堤司(ていじ)治(笑)部長の、ケンカしてたのに、もわず二人とも好きで、一夜の過ちをおかしてしまうオフィスラブコメという定番を超えて二人が結ばれる、、、、という「そのあと!!!」からが素晴らしいんですよ。真由美に横恋慕していた、超脇役(だとおもっていた)拝島高志の話が、まさかあんなふうに展開するとは!!!と衝撃を受けたんですよね。後半のそっちのエピソードが素晴らしすぎて、尊いと拝んでいます。


後半でまるちゃんと堤司部長が勤めているオリエントという会社が、フリーフリックスという会社に買収?されるんですよね。買収というか、緩やかな合併かな。まぁともかく、親会社のフリフリから、鬼蔵さんという、スーパーバリキャリな営業部長さんが出向してくるわけですよ。親会社の買収戦略後のPMIで入ってくる権力者ですよ。


部長と社畜の恋はもどかしい (7) 【かきおろし漫画付】 (マンガよもんが)


このまるちゃん相手に恥晒しまくったハイジこと拝島くんと、この多分立場的には全然上の上司である鬼蔵部長が、恋に落ちちゃうんですよね。


この二人の恋愛が、もう、、、なんというか、胸がズッキュンズッキュン刺さるんですよね、ペトロニウスに。特に前回の8巻の終わり方が、胸に刺さって刺さって。


結婚も、恋も、出産もしないと決めて、仕事に人生捧げると決めた鬼蔵部長の生き方は、まさに昭和の企業戦士。一点だけ令和的なのは、まるちゃんもそうだけど、二人ともワーカホリックの仕事漬けなのは、「本人がそれが好きで楽しいからやりすぎちゃう」という点。ここはずいぶん、現代的だと思う。要は、仕事が向いているんですね。振る舞いや行動を見ていても、鬼蔵部長は、圧倒的な営業のハイパフォーマーで、ああ、いるいるこういう人(男女問わず)って思います。


だから、ハイジといい仲になちゃっても、なんというか、「遊び」といかなくても、仕事という最も大事なものを邪魔しないで癒してくれるので、都合のいい愛玩物的な扱いですよね。これちょっと思ったのは、本当に仕事に没入するタイプの性格だと、「男だろうが女だろうが」パートナーをそういうふうに位置付けるのは、至極当然だよなって思うんです。男女逆転しても、起きることは全く同じ。もちろん今の時代はまだまだなんで、逆転することを見せることによるセンスオブワンダーは残っているけれども、そういうフェミニズム的な告発は、成り立たない。もう既に、女性や年下の人間が上司やリーダーになるのが当たり前の現代において、告発というより、まだそれほど多くはないけど、「よくある風景」になってきてますからね。



(ちなみにこのきっつーーーーーーい鬼の営業部長が、デレまくってくの、可愛くて仕方がなかったです(笑)。また、ハイジも、なにこの男の子可愛すぎない!という胸がきゅんきゅうする。まるちゃんのとき足掻いていた、オレ様営業くんのダメダメの100億倍かっこいい(のに可愛い)。)


そうなると、ここでは、ハイジは、セフレでいいですよと提案しているんだけど、まぁそれがせいぜいだよねと思う。仕事が好きな人にとって、心臓を捧げている(笑)人にとって、異性やパートナーというのは、そうならざるを得ない。圧倒的な結果を出すハイパフォーマーの仕事ぶりは、鬼神の如きですから、プライベートなんか割ける余裕がないので、全て少なくともコントロールの対象で、心理的に振り回されるリソースはないのは、まさにまさに同感です。まぁペトロニウスも巨大組織の偉い人なので、この「感覚」はすごくわかります。全てをコントロールと、マネジメントの対象で、タスク管理したいんですよ。はっきりいって、なんでもとれるほど人は器用じゃない。


けどね、、、超優秀な人が、心臓を捧げても、それで出世したり、大組織を変えられるかどうかなんて、わかんないほど難しいことなんです。その巨大な壁に打ちひしがれながら、ドンキホーテのように、心臓を捧げながら戦うのが、ビジネスマンってやつです。鬼蔵部長の、悩み、苦しみ、組織を変えられない、、、大事な部下や先輩や同僚が、討ち死にしていきながら、壁を越えられず消えていくことの寂寥感、自分にはどうにもできなかったという無力感、、、、。


これ男女共通の「生きていくときの構造」なんだと思うんですよね。サラリーマンで組織に生きていれば、確実に見える体験する構造の一端。


そうすると、次に起きることも、同じなんです。


この壮絶な孤独と闘いをする「戦士」にとって、自分を癒してくれる愛玩動物は、、、、上から見下ろしている存在だったのが、いつの間にか「対等な目線」に変わって、大事なものになってしまうんです。


さぁ、、、、あなたは戦士の仕事を辞めて、その戦いからおりますか?


それとも、自分を対等に愛してくれるパートナーを選びますか?


という二択に迫られる。


これが7巻の最後シーンです。素晴らしい!って、唸りました。こういうの!こういうのがみたかったんだよっ!って唸りました。


まぁ大仰に言えば、使命を取るか自分の幸せをとるか。でも、自分の幸せを選んでも、生涯自分位失望しながら生きる可能性は高いので、それを幸せといえるかは、運次第。仕事を選べば、過労死か鬱か、生き抜いても一人孤独な老後が待っている、、、、(笑)。


ちなみに、この話をちゃんと社会学的に分析した本は、しかもちゃんと解決方法まで描いている名著ですので、この本はおすすめ。ちきりんさんのこの辺の記事とかも、僕の人生の指針になっている。


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🔳上司が女性になってとか年上の働いている女性に恋をするというシュチュエーションが最近好き

ちなみに、話がまたそれと遠くなるんですが、『焼いている二人』って漫画が大好きなんですが、そのなかの5巻の41話「泣きたい夜のサムギョプサル」というエピソードから始まる、主人公風のそれぞれの友人の伏見さんと戸田くんの恋愛も、これが尊くて尊くて、毎回拝んでる。伏見さんが、もうかわゆーてかわゆーて。この人やばくないって。でもこういうのって、カップルって、要は相手が可愛かったり素敵だったりするからこそ、輝くんですよね。戸田くんも、ほんとうにかっこかわいい。えっとね、なんだろう、多分、「年上の自立している女性からの視点」だからなのか、けっこうハイジも戸田くんも、それなりの年齢だし、男としては自立もしているし、仕事もできるやつだと思うんですよね。ヤローの中に、ホモソーシャルな世界にいても、多分立場強そうな強さというかオス味を感じる。なのに、「かっわいーーーーーー!」って感じなんですよね(笑)。これ、恋の醍醐味だけど、女性側が能力というか自立してて視点が高くないと「感じない」感じ方だと思うんですよね。それが、これらの物語には、ビシバシ伝わってくる。ああ、時代は変わったなーって。仮に上司が女性でもで、もっと女性の弱みを男が助けてあげる味みたいなテイストがもっと昔は強かった気がするけど、「それ」じゃないもの。

評価:★★★★☆4つ半
(僕的主観:★★★★☆4つ半)
焼いてるふたり(5) (モーニングコミックス)


そういえば、これも上司が女性だな(笑)。

可愛い上司を困らせたい 1巻 (まんがタイムコミックス)

評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★☆3つ半)



ちなみに、この女性の仕事による自己実現で、めちゃくちゃ本質をついている、大傑作だと思うのが、やはり『茉莉花官吏伝』だなぁ。★5つのマスターピースペトロニウスの名にかけての傑作。人間誰しも、男も女も関係なく、仕事で評価されて世に出たいし、同時に個人としての幸せも、ラブロマンスも体験してみたいものじゃないですか。「あるがまま」でありつつ、仕事でも自己実現したいというのが、そもそもスタート地点であるべきなんだよね。でも、もちろんのこと「世界はそうは甘くない」。「そこ」を物語で見せてほしいと思うんじゃん。

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