New Hampshire Primary(予備選)の結果は、ニッキーヘイリーさんの敗北か、それとも?


https://edition.cnn.com/election/2024/primaries-and-caucuses/results/new-hampshire

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🔳ニューハンプシャーの結果は、基本的にトランプさんの大勝利

基本的な全米の報道を見ていると、トランプさんの大勝利と認識されている。僕には、43.2%の獲得は、これだけトランプさんが強い中、善戦したように思える。しかし選挙戦継続はできるけれども、実質的な敗北という認識なんでしょう。勝負の前提としては、ニューハンプシャーは、無党派層が4割と全米でも高く、共和党員ではなくても投票できる開放型の予備選で、共和党支持者の6割を押さえていると言われるトランプさんを撃ち任せる可能性は、ここでしかないという大前提があります。彼女の強みは、

「私は無党派層を動員できる」

というポイントで、その成否の結果が、ニューハンプシャーだったからです。

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なので、今後の共和党の候補者選びにおいて、トランプさんを上回るのは難しく、よほどの「異なる風」でも吹かない限り、彼女がトランプさんを打ち破るのは至難の業となりました。とはいえ、まだまだ序盤である、1年の長丁場の大統領選挙は、何が起きるかわかりません。特に、議事堂乱入や不倫問題などの、裁判を抱えているトランプさんには、まだまだ別の山場が多く、そこでどのようなことが起きるかわからないことから、デサンティス候補を振り落とし、対バイデン大統領(民主党)には強いという穏健な古き共和党員的で確実に足元を固めつつあるニッキー・ヘイリーさんは、まだまだ注目。

これだけ裁判をガチで抱えているのに、まず予備選で独創的な支持を得ているって、なんというか、価値観の分裂がすごい。


🔳ロン・ディサンテス(Ronald DeSantis)候補の撤退〜洗練されたトランプ的な手法は、早すぎたのか、そもそも本質じゃなかったのか?

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アイオワニューハンプシャーでの焦点は、共和党候補者としてトランプさんに続く第2候補がだれなのか?ということでした。ニューハンプシャー予備選を前に、「クリティカルパスが見えない」とディサンテス候補が撤退を表明。トランプさんの指示にまわったことにより、ニッキー・ヘイリーさんとトランプさんの一騎打ちになった。結果は、上で書いた通り、トランプさんの勝利。ヘイリーさんの43.2%の獲得はかなりの善戦だと思うが、これも上で説明した通り、無党派層の反映が大きいニューハンプシャーでトランプさんを逆転できなければ、今後は、基本的に難しい。ディサンテスさんは、「賢いトランプ」や「洗練されたトランプ」として2023年から注目のトランプさんの対抗馬でしたが、「この路線」は、トランプさんがアメリカで支持される部分と、やはり違うのかなと感じます。自分自身も、既得権益で雁字搦めの職業政治家やエリートではなく、局面を打開してくれる、言い換えれば「何か大元ぶっ壊してくれる」ことを期待するマインドがあるのは、確かだもの。極端なことを言うと、「停滞した既得権益構造を壊してくれる」のならば、正直何でもいいのではないか、と感じます。だって明らかに、職業政治家でない人に対する熱狂が見え隠れするもの。具体的に、民主党オバマ元大統領の登場と、その反動で現れた共和党のトランプ元大統領の両者共に、同じ匂いを感じます。このままだと、トランプ再選の流れが強くなってきているように感じるのですが、その場合、アメリカは「どこまで行き着きたいのか?」ってのが、考えてみたいことだなと思います。前回の記事では、アメリカファーストの本質って、ナショナリズムなのではないかと思うと書いたのですが、そういった古い意味でのナショナリズム的な国民国家ってのも、そもそもアメリカの成り立ちと構造から言うと受け入れられないもので、、、、となると、どうしても、南北戦争的な構造対立を感じてしまいます。この分断を、どのように乗り越えようとするのか、それとも、、、と言うのは見ものです。


🔳ニューハンプシャー予備選とアイオワ党員集会の大統領選挙での位置付けの再確認

ペトロニウスの勉強というか、大統領選挙の仕組みを再確認しながら、このメモを書いている。1月のこの2つの週の位置付けは、なんといっても全体の3割の代議員が決まる3月5日火曜日のスーパー・チューズデー (Super Tuesday) まで、いまから少し時間がある。この1−2ヶ月の間に、この2州で善戦したり敗北したりすると、「その前提」で、大報道合戦が繰り広げられる。アメリカの大統領選挙には、ヤバいほどの金がかかる。なので、この2週の結果によっては、メディアが全力で支援して話題を盛り上げてくれることになるのだ。この期間は、まだまだ大統領候補も、選択肢が絞られていないので、「現政権の評価」や「新しい候補たちの掘り下げ」、アメリカ社会が次を選ぶ際に考えなければならないイシューなど、さまざまな「そもそも論の前提」を問い直す機会であるので、コツコツ勉強するには、とても良い。


さて、せっかくなので報道や候補者たちのスピーチをコツコツ見ていたのですが、大メディアのまとめだけではなく、丁寧に見ていると、いろいろなことがわかりますね。アイオワも、驚くほどの寒さで、窓の外の雪景色とか、さすがのアメリカのカナダに近いところだなって、あらためて地理感を感じます。2月のシカゴに出張で行ったことがあるんだけど、あの時の寒さも尋常じゃなかった。それと、アメリカ合衆国北東部、ニューイングランド地方のニューハンプシャー。州都は、コンコード(Concord)。独立革命レキシントン・コンコードの戦い(Battles of Lexington and Concord)だっけ?と思ったけれども、あっちはマサチューセッツの田舎町ですね。ボストンから車ですぐのところでした。こっちは、州都ですね。


New Hampshire Home Page | Visit New Hampshire

こんな場所。州のモットーは「自由に生きる、もしくは死を("Live Free or Die")」で、これが自動車のナンバープレートにあって、いつも見ると思わず注目しちゃう感じでした。


New Hampshire location on the U.S. Map - Ontheworldmap.com

ちなみに、予備選挙(Primary election)党員集会(Caucus)の違いをもう一回おさらいしてこうということで、ググってみた。

予備選挙と党員集会 ― 早わかり「米国の選挙」 |About THE USA|アメリカンセンターJAPAN

予備選挙というのは、その党の公認するアメリカ合衆国大統領候補を選出するための一連の手続きなんだけど、この代議員選出方法の違い。基本的には、秘密投票(いわゆる一般的な我々の投票イメージ)が主流なんだけど、アイオワの党員集会なんかは、人々が集まって議論したりして、じわじわ選んでいく。この場合公開投票で、挙手で決めたりもする。もともと党員集会は英語でコーカス(Caucus)と呼ぶんだけど、「幹部会」とかそんなニュアンスらしい。ようは、昔の草の根レベルのタウンミーティング的なプロセスなんだろう。一見、草の根的で良いように見えるだろうが、これって狭くてメンバーが固定された共同体でないと機能しにくいし、もちろん猿山のボス的な「活動家や既得権益のボスの号令」とかが効きそうなので、なので、大都市の形成やアメリカの発展いともなって秘密投票に変化していったのではないかな、と感じる。

🔳大統領選挙プロセスの変化〜民主主義と本質は、投票システムやこういった集会の細かな手続き、プロセスに宿ると思う

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今回は、民主党が、最初の予備選挙サウスカロライナに変えたと言うことで話題になっておりました。毎大統領選挙を丁寧に追いたいアメリカウォッチャーとしては、単純に、目の前の選挙戦結果だけではなくて、そのプロセスで起きている「仕組みの変化」に目を向けたいところ。基本的に、移民をガンガン入れてきたアメリカは、トランプさんのアメリカファースを機に移民の受け入れをかなりスローにしたのですが、その程度では揺らがないほどの、人口の構造変化があり、人種・民族構成の多様化と白人の人口シェア縮小は継続しており、この「大きな傾向」に対する反動として、保守化の揺り戻しがきているのは明確だと思う。この対抗措置として、大きなポイントは選挙制度など、具体的な制度のプロセスで、アメリカが白人や初期移民の価値観や権力をベースを維持してきた。ゲリマンダー(Gerrymander)などですね。これを、なるべく自分たちが中長期的に有利になる仕組みに、じわじわ変えたいと言うのが、各勢力の本音。アメリカの最高裁判所の判事を保守化させて、「ロー対ウェイド」判決をひっくり返した戦略などが典型。

女性の中絶権を認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決が、2022年6月下旬にアメリカ最 高裁判所が、憲法上の中絶の保障を、最高裁自らが否定したことで、アメリカの各州はそれ ぞれ独自の州法で中絶を禁止できるようになった。 キリスト教福音派の支持によって大統領 に選出されたトランプ前政権の最大の内政の「功績」とされる。

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この辺りの変化は、はっきり結果が見えるまで、じわじわ水面下での攻防戦が続くので、短期と中長期の動きは、切り分けてみていないと、なぜそうなるのかがわからなくなってしまう。そう言う意味では、100年の伝統があるこの序盤戦の予備選の構造をひっくり返した民主党の行動は、なかなかに興味深い。

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前回の選挙でこの2週で弱かったトランプ陣営が、草の根作戦を繰り広げて、人を動員したことに比較すると、ちょっと対比が面白い。序盤のアイオワニューハンプシャーの2州は、草の根の運動と組織力の強さを確認するもので、それが伴っていない候補が振り落とされる。そこで、がっつりコーカス・キャプテンというそれぞれの地区の代表者を選出して、草の根の深掘りを図ってきて、その結果としての大勝利ということは、トランプ陣営の組織力の強さを物語る。お金が大量に流れ込んでいるとしても、だからといって、そこまで丁寧に準備できるかどうかは、また別の話。2010年代のアメリカの選挙は、スイングステートを制した方が勝つ構造になっており、そのためにできることというのは、いろいろあるが、どれだけ組織力を、狙ったスイングステートに投入できるかも重要だと思うんですよね。今回、見事な事前準備と、熱狂的な支持者を草の根で組織化して、結果に結びつける力がトランプ陣営にあることを示したことは、なかなかに興味深いことだと思う。

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