マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス(通常版) - PS3
- 作者:
- 出版社/メーカー: 5pb.
- 発売日: 2013/05/16
- メディア: Video Game
評価:★★★★★4つ
(僕的主観:★★★★★5つ)
■マブラヴオルタネイティヴのサーガとしての作品世界の広がりを
現在既刊で出ている4巻まで読了。ほぼ3日で読んだ。マブラヴのスピオンオフ作品。非常に面白かった。もう既に「この世界」は完全に確立されている世界なので、好きならばぜひお薦め。つーか読みましょう。小説だからたいしてコストもかからないし、オルタの世界の広がりを感じられて、最高です。ガンダムが、ゼータ、ダブルゼータ、そして逆襲のシャアやその他のOVA作品に発展して、そのサーガともいうべき広大な作品世界を構築していったのと似た感触がある。はしくんは、マクロスのその後の作品のようなと称したけれども、本体の作品と時系列的にはほぼ同一で、且つ同じ時空を共有しているから、ファーストガンダムの初期の世界が時系列で進んでいった、ゼータとかそういう作品と同じに考えてもらえればいいと思う。あの時の感動を覚えている人は、わかると思うんだ、あのアムロとシャアにまた出会える!とわかったあの続きの感動を。実際には、主人公は彼らではなく、その「世界」というものになって、あそこで単純に描かれていた連邦軍対ジオン軍という二元的構図がいかに小さいものの見方で、その背後の膨大な問題が隠されていたかが、その後の作品で、より深く感じ取れるようになっていたはず。もちろん、オルタは、すでにその本質の幹・・・・横浜の女狐こと、香月夕呼博士の構想するオルタネイティヴ4と5の問題、国連とその他の国々の政治的対立構造を描いてしまっているので、新しい事実が出てくるというわけではないのですが、いやもう、そもそもその「幹」がとんでもないスケールだから、こうして周辺で起きているディティールを追っていくと、つーか、あの作品で描かれていたことのスケールのどでかさが感じられて、グットとです。ああっ、なんといっていいのかなぁ、、、この巨大な凄かった「世界観」を見せつけられて、、、それでも続きもない、とか凄く残念に思っていたところで、、、それを異なった角度から見せてくれるものに出会えた時のこの感動、、、そういうやつなんですが、、、うまく言葉では言えない。とにかく、個人的に素晴らしく面白かった。1巻から4巻までぶっ通しで、あの感動を再現しているようなもの。もちろん、あの複雑怪奇なハーレムメイカーをぶっ飛ばす倫理的並行世界の物語などという超ド級の物語ではなく、一人の青年と女の子の成長の物語に過ぎない話なんだけれどもさー。ほら、その背後の深さを知っているから、感動が何倍にも重複されるんだよね。
「マブラヴ オルタネイティヴ」本編が開始される2001年10月22日、物語はその約11ヶ月前から始まる。アラスカの国連軍ユーコン基地で進められている先進戦術機技術開発計画(プロミネンス計画)実験部隊を舞台に、各国のテストパイロットやメカニックたちによる熱き戦いの物語が描かれる。
■みんなへたれなんだよ、成長というのは自分のスタート地点がどこでも、へたれな自分をたたきのめしてあがくことなんだよね
それにしても、読んでて思ったのは、この吉宗さんという作者の人は、同じことが言いたい人なんだな、と思いました。
この物語の主人公は、しいて言えば二人。日系アメリカ人でテストパイロットのユウヤ・ブリッジス。それと、日本帝国中尉の篁唯依。・・・なんだけれども、、、今回のこの二人は、オルタの主人公であるタケルに比べると全く違う点があります。それは、二人が正真正銘のエリートで、しかも「その立場を実力でもぎ取ってきた」正真正銘の、「ちゃんとしたやつ」であること。まったくヘタレでも何でもない。ユウヤは、たしかに日系人として差別を受けて、家族にトラウマがあるかもしれない。しかしながら、建前上は平等の国であるアメリカ社会の「建前」を武器に、圧倒的な戦術機の操縦の才能という「能力」と「実績」で、全米国軍最難関のテストパイロットの地位まで上り詰めている。島流しにのように日米共同開発の実験機の候補に挙がったのも、たしかに島流しの側面もあるだろうが、その能力と実績があってればこそ。これを正真正銘のエリートと云わずなんと言おうか?。篁唯依も同様。「横浜」が開発したといわれる最高機密のレールガンのテストパイロットであり、日本帝国の有力な名家篁(たかむら)家の当主。女性だなんだといろいろあったようだが、亡き父親の愛情を一身に受けた正真正銘の当主にして、近衛のエリートパイロット。1巻の日本での開発の描写でも、彼女が能力的にもそれを周りに認めさせて、「そこ」に立ってることは明白。
なにがいいたいのか?っていうと、この二人は、ある意味「強者」なんですよ。自分の力だけで生き抜ける「動機」と「能力」そして、それを積み重ねた「実績」がある人間。タケルのように、そもそも「根」がどこにあるかわからないヘタレとは、根本的に本質が違います。にもかかわらず、この二人が壁にぶち当たって、現実の厳しさに煩悶して、へたれな自分を叱咤し、何度も何度もくじけそうになりながら成長する物語なんですね・・・・。つまり、マブラブと本質的に言いたいことは、同じ。
ということは、吉宗さんが何を言いたいのか?って言えば、それは人間は能力とか実績とかそういうものと関係なく、だれもが成長するためには、オルタで描かれたTE(トータルイクリプス)で描かれたような「苦しみ」を経なければ成長できないって言っているように僕には聞こえます。いや、これほどの恵まれた立場にいる人間でさえも、そのトラウマを暴かれ、欺瞞を暴かれ、現実に試されていくって、、、、いやーシンドイ話だなー(笑)とは思うんですが、でもそれが本当なのかもしれない。
話は少しズれるんだけれども、僕は自己啓発系の本は、とてもとても共感するんだけれども、どうしても一点だけ、いつも納得できない点がある。それは、売れるために口当たりを良くしているからだと思うんですが「可能性を信じる幸せの側面」以外を描写しない点です。でも実際は、成長する「現場」では、違いますよね。僕の尊敬する上司は「現場」を「修羅場」と呼んでいましたが・・・そこはあるべき姿や論理が通用しない世界。実践とは、論理では割り切れない。思惑、損得、保身、嫌悪などの感情に支配されたコントロール不能な世界。成長する時ってそういう、マイナスの中に、飛び込んで自分が壊れるかもしれないリスクテイクをしながら、足掻くものだと思うんです。逆にそれほど苦しいからこそ、バカみたいに楽観主義なオポチュニストな態度を信念を嘘でも思いこまないとやってられないものなんだと思います。「そういうこと」が、通常の自己啓発書には書かれていない。いや、読んだら、「そんなこと自分にはできないよ」と凹んでしまうので人が買わないからなんだと思います。でも、それは嘘つきだ、と僕は思います。僕は基本的に、「ボロボロの泥沼に落ちた所からの回復」や「反転」を語ってくれないと、その人のことは信用できません。そういうやつは、現場で、成長の困難さで、逃げるからです。ほぼ100%確実です。経験上。そういうのはよくわかるんだー。
って話がずれたけれども、ようはね、成長って・・・・ビルドゥングスロマンを描くときには、結局このボロボロの中で苦しみながら自分のヘタレさに自己嫌悪してのたうちまわることを「正しいステップ」で描かないと、描いたことにはならないんだって僕は思っているんですが、この吉宗さんという方は、「それ」が120%できているってことです・・・。どういう人なんだろう?。個人的に会って酒飲んでみたい気がします・・・。よっぽど大変な人生歩んでいないと、こういう発想にはなかなかならないんだけどなー(苦笑)。120%というのは、マブラブオルタでは、その解体の度合いがまりに極まっていて、「どん底のヘタレ」くんから、最高の男に仕上がるまでの全過程を描きつくしていたので、それは100%なんですが。。。。今回の話は、そもそもエリートである連中をスタート地点に描きながら、その彼らが一皮むけるためには、結局のところ、同じプロセスが必要であることを描いている点なんですね。これで20%UP。この人徹底しているなーと思った。スピンオフ作品であれば、ヒーローを無謬とは言わなくても、それらしく描く方法もあったはずなのに、、、というか、この人の中での「正しいヒーロー」というのは、こういう人物なんだろうなーと思います。いや、非常に共感。
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