客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★4つ)
どんな映画か?と言ったら、シャルウィダンスみたいな話、と喝破していた町山智浩さんに一票!。ちなみに、コメディーには全く思えない(苦笑)。崩壊寸前の家庭、崩壊しちゃった家庭、人生のオンパレード。それでもやり直せるというラブロマンスとしてとらえるといいと思う。ラブロマンスとしては、背景の二人が病みまくりなので、その反動もあってラストが、うわーって感じの気持ちよさ。救われることもある、と思うと泣けてくるお話。
これは37歳の元歴史教師の視点Bradley Cooper(パットリック・ソリターノ・ジュニア)で始まります。彼は、どうも精神を病んでいるようで、一度キレ始めると、自分を制御することができない。それで精神病院に入れられているんですね。彼がいかに、メンタル的におかしくなっているかということを、最初のシーンから延々と流されます。そうなったきっかけは、パットが家に帰ってくると、奥さんがシャワールームで「マイ・シェリー・アモール」を流しながら、自分の同僚と浮気しているのを発見してしまって、それで相手を半殺しにして、警察に捕まって精神病院にい送り込まれたんですね。何とか出てくるのですが、精神科医とのカウンセリングで、俺はキレてない!(直前のシーンでキレまくり)とうそを言う日常が続き、もう、この種事項のパットの日常は、ほとんど終わっているんだなーという残念感が漂います。そんな彼を支える唯一のことは、浮気して出ていった元奥さんとのよりを戻すことなんです。彼女とよりを戻すことは、深い愛を重ねてきた自分たち夫婦にとって、正しく、素晴らしく、高み (Excelsior) に上ることなんだ!と叫び、熱に浮かされるように両親い説明するシーンは、もうほとんどストーカー。現実認識が全くできなくなっている残念で、危うい人なんだ、としみじみ、思ってしまいます。ちなみに、そんな彼が、あるきっかけで、さらに同じように心を読んで壊れているカットニスじゃなかったジェニファー・ローレンス(ティファニー・マクスウェル)と一緒にダンスの大会に出場して、いろんな問題を解決する!という(おおざっぱすぎる)物語です。
■見るべきポイント1
ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence/撮影当時21歳)の演技力ですね。2018年の時点でまだ27歳。けれども、素晴らしいキャリアですよね。彼女の出世作は、2010年の『Winter's Bone』。アメリカ中西部のミズーリ州オザーク高原を舞台に、「ヒルビリー(丘のスコットランド人)」の古い因習に縛られた世界の中で生きる少女の役を演じて批評家に絶賛されました。そして、2012年の『ハンガー・ゲーム』でカットニス・エヴァディーン役でブレイクしました。日本でははあまり売れなかったし話題にならなかったようですが、『The Hunger Games』(2008)は、アメリカの作家スーザン・コリンズによるヤングアダルト小説(アメリカでいうジュヴナイルもしくはライトノベル)で大人気の作品で、これで人気が深く浸透した気がします。ちなみに、面白いなと思ったのは、両方の作品とも、アメリカのド田舎から出てくる、もしくはそこの少女という設定なんですね。米国ケンタッキーのルイビル(英語: Louisville)で育ったというのですが、僕はあまりわかっていないんですが、典型的な米国の田舎の、少しあか抜けないんだけど、素材はいい感じの朴訥な女の子的なイメージがあります。彼女の演技力には定評があり、この渋めの作品においても、明らかに支店的には主軸で偏っているパット(Bradley Cooper)の視点で語られるはずのこの脚本においても、途中から遅れて登場する感じなのに出てきた途端、周りの雰囲気をガラッと変える存在感を放ちます。僕は演技自体には詳しくないのですが、それでも彼女の存在感は、確かに、と唸ります。決して、美人じゃない(というのは僕の好みですが(笑))と思うのですが、とても魅力的な空気を振りまく見事な女優です。まだとても若いのに。これからも名作に出ていくと思うので、彼女の初期のこれらの作品を注目しておくのは、価値があるかもと思います。ちなみに、ジェニファー・ローレンスは、オーディションを受けに来たのですが、当時21歳と若く、そもそもその役をさせると森をなかったので形式的なものだったのですが、監督のDavid O. Russellは、「彼女は自然児で別格だ、圧倒された」と評価を一変させて抜擢。その後、アカデミー主演女優賞を受賞するわけですから、監督の目利きはさすがだったということでしょうね。
ちなみに、キレまくりのジェニファー・ローレンスの役は、まさにヤンデレみたいなところであって、こうした病んだカップルの話が、受けるというのも、ウーム、世の中病んでいるなーとも思う。
■見るべきポイント2
大げんかしていたパットとティファニーなんだけど、たまたま「マイ・シェリー・アモール」が流れてパットが切れ始めたら、さっと態度を翻して、ティファニーがやさしくなるんですよ。これ、傷ついている人の気持ちがわかる人の行動だよなーとしみじみした。ジェニファー・ローレンスの演技が素晴らしい。しかし同時に、この作品で、ちょっと違和感あるのは、結局は、すべての大本の問題点は、パットの奥さんの浮気なんだけど、それについての理由や原因が説明されていないので、凄い違和感がある。だって、理由がなければ、どう考えても浮気した奥さんが悪いとしか見えないのに、そんな奥さんが好きで好きでたまらないパットの変質さは、???となってしまう。もちろん、浮気相手を半殺しにまでしたのはやりすぎとはいえ、いくらなんでも、情状酌量の余地はあるんじゃないの?と思うのだが。社会的制裁が、パットに集中して(裁判所より近接禁止命令が出てたり)いるのは、なんだか不思議な感じがする。個々の背景が僕には読み解けなかった。
■フィラデルフィア・イーグルス (英語: Philadelphia Eagles、略称: PHI)の意味は?
この作品を見ると、パットもたいがい心を病んでいるのですが、ロバート・デ・ニーロ(パトリツィオ・ソリターノ・シニア)の役どころもかなり心を病んでいると思うのです。彼の父親ですね。まぁ、息子がなんで心を病んだのかの理由は、描かれていないのですが、、、もちろん最愛の妻の浮気ということもあるのでしょうが、あんなキレやすくて、妄想にとらわれるには、その背景がないとおかしいですよね。でも、実際は特にないんです。これが平均的にアメリカの中流家庭なんだ、という監督というか脚本家のDavid O. Russellの世界観ってこうなの?と驚きました。みんなだれもかれも病むのが普通で、特に理由もない日常だというのは、うーむなかなか救いがないというかクールな世界観だと思う。逆に言うと、それを日常として受け入れているのが現代のアメリカなのかもなとも思う。パットの父親なのだが、最近失業したらしく、アメフトのノミ屋をやってしのいでいる?(いやむしろどんどん負けてお金を失っている)のだが、一発逆転をのみ屋で狙って、チーズステーキ店の開店資金を稼ごうとしている・・・・と、もう結構絶望的。ちなみに、Philadelphia Eaglesというのはローカルな東海岸のNFLのチームで、なんというか、阪神?広島?ヤクルト?野球は、よくわからないが、熱狂的な地元のファンはいるけど、なんというか肝心なところで勝てない、浮き沈みの激しい残念チームなんです。そんなチームにかけるという時点で、もうかなり終わっている(苦笑)感じなんですが、そうした軌跡に一発逆転にかけざるを得ないほど、みんな生きず待っています!というのが背景設定なんでしょうね。とはいえ、2018年の今年の第52回スーパーボウルではニューイングランド・ペイトリオッツを41-33で破り、チーム史上初のスーパーボウルチャンピオンとなったので、いったい何があるかわからん!という感じがします。僕はあまりよく知らなかったのですが、今年、東海岸出身の連中が、興奮して叫んでた意味が、この作品を見て、いろいろ聞いてみてやっとわかりました。これは長年のファンにとっては、そりゃー快挙だわな。
この作品背景には、パットも、パットのパパも、ティファニーも、偶然の不幸に出会ったときに、ほとんど立ち直れなくて人生が迷走するさまが描かれており、脚本監督の世界観が、人間壊れたまんまで、壊れた関係を取り結んで生きているのが普通なんだよね、という諦念を感じて、そこがある意味コメディのような癒しの感覚を作品全体を覆うことになった気がする。
ちなみに、Philadelphia Eaglesの優勝には後日談があって、トランプがいるような、とか、黒人が殺されているのを座視しているアメリカ政府の国旗には敬意を払えないとするような国旗掲揚をめぐる問題があって、それについて切れたトランプ大統領が、定番のホワイトハウスへの正体をキャンセルしちゃったと、話題になったりしています。ちなみに、2017年もゴールデンステイト・ウォリアーズがホワイトハウス表敬訪問を、トランプ大統領にキャンセルされていますね。これ、最近のホットの話題です。
Trump cancels Philadelphia Eagles visit to the White House
Sophie Tatum
By Sophie Tatum
Updated 11:04 PM ET, Mon June 4, 2018
https://www.cnn.com/2018/06/04/politics/trump-eagles-nfl/index.html
The Philadelphia Eagles Football Team was invited to the White House. Unfortunately, only a small number of players decided to come, and we canceled the event. Staying in the Locker Room for the playing of our National Anthem is as disrespectful to our country as kneeling. Sorry!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) June 5, 2018