機動戦士ガンダムSEED &SEED DESTINYスペシャルエディション HDリマスター』648分(10.8時間) フレイいい子だなぁ、この子、本当に普通の子なんだよなって感慨が一番僕には残りました。

機動戦士ガンダムSEED 1 [DVD]

評価:★★★★★星4.7
(僕的主観:★★★★☆星4.4)  

2024/2/16-17の半日で10.8時間全て見ました。友人に勧められて、映画いま行かないとと言われて(笑)、タイミングがあったので。リアルタイムの力は大事ですよね。2002年の作品ですから、22年前!ですが、全話見たはずなのに記憶が曖昧で、総集編を見直しても、当時の感慨がよみがってきましたが、記憶に残っている「見るべき視点」は、やはり


アスラン・ザラキラ・ヤマトの月面都市コペルニクスの幼年学校での出会いのシーン

ですね。この物語のテーマのコアにして、魅力の本質であり、僕にとっては、この作品の最も深くひかれる点は「ここ」ですね。僕は、DESTINYよりSEEDが好きなようです。全編にわたってファーストガンダムのオマージュで、同じテーマとエピソードを展開していくのですが、主軸のテーマは別物に感じます。福田己津央監督の魅力は、どう考えても、キャラクターだと思うんですよね。だから場面や構成を同じにしても、全然受けける印象が違う。


話を戻すと、何が魅力のコアかと言えば、アスランとキラのこの「仲の良い幼馴染である幼年学校のシーン」が全てだと思うんですよね。


SF的なマクロのテーマは、富野由悠季監督の二大テーマであったうちの一つのニュータイプを、翻訳したものが「コーディネイター」遺伝子操作で生まれたデザインヒューマンであって、これと、「ナチュラル」遺伝子操作をしていない旧人類の対立と差別構造が、SEEDの主軸だと思います。ここでミクロのテーマとマクロのテーマが重なっている。


このテーマは実は不消化に終わっていると僕は思っているのですが、それは、アスランもキラも、二人ともコーディネイターなので、ミクロの物語(関係性のお話)では、この差別構造が重なっていないのですね。だからテーマは、展開しにくかった気がします。

と、そこは置いておいて、アスランザフトというコーディネイターの国家の軍人になっていて、キラが地球連合軍の軍人になって、二人が「友達なのに殺し合わなければいけない」というのがこの物語の根幹であると思う。すべてのドラマトゥルギーはここから発生している。


実際のところ、二人も共コーディネイターなので、実は、殺し合う理由はないわけで、所属している国家と組織に翻弄されているだけで、二人が一緒にいるようになると、この強度(対立を意識すること)が下がるので、物語が動かなくなっていったというのが、この物語のドラマトゥルギーの問題点だと思う。だってそうでしょうに、だから、マクロ的には、ザフト地球連合以外の「第3の軸」を作り出したり、そこに所属した時点で、この物語は終わってしまうんですよね。つまりはオーブ連合首長国であり、ラクス・クラインが作る第3軸の勢力ですね。


極端な話、それ以外の話って、SF的なマクロの構造なので、物語のドラマトゥルギーとしては、まぁ本質じゃない気がするんですよね。なので、Destinyでシン・アスカを出しているのも、キラとアスランのドラマが、すでにSEEDの時点で動かなくなってしまって、話が動かないからだと僕は感じています。さらにいえば、彼の存在ってノイズなので、特に新しいテーマま持ち込まれていないので、僕にとって、DESTINYには常に、「同じ話を繰り返している感覚」付き纏っていました。


でも、じゃあ、面白くないかっていうと、そうではなくて、この監督は、キャラクターに生々しくキャラクターの動機を動かそうと、かなり踏み込みますよね。この踏み込み方って、富野さんが親子関係だったりするのですが、福田さんのというか、SEEDでやっぱり一番僕は魅力的で、そしてドラマが深いなと思うのは、フレイ・アルスターです。いま、Wikiみて驚いたけどこの子15歳なんですね。なんか、かわいそすぎて泣けてくる。


20年前?くらいにアニメを見たときに、キラと彼女のSEXシーンには、凄い衝撃を受けたのを覚えています。これってドラマを最後まで見ないと、フレイって、女の醜さのオンパレードで、キラが純粋まっすぐくんなだけに、女性を、全く神聖化しないというか、男の子の視点でみない描き方は、当時の、若かりし20代の頃の僕には、ガーンと来たんですよね。これって、たぶん今でも、同じなんじゃないかなと思うのですが、総集編で見ると、そのへんの醜さがあまり描かれないでサラッと進んで(総集編はカヤラクターの感情の積み重ねがほとんどなくてすっ飛ばしていますね)、最後の自分の醜さに気づいたフレイって、切なくて、僕はめちゃ、何この子かわいそうって涙止まんなかったので、当時感じた、「悪女に絡め取られた純粋キラくんが苦しみのたうつ」感覚が得られなかったのは、残念でした。


フレイ・アルスターのエピソードは、彼女が自分のエゴを通すにあたって、身体と女を使いまくって、キラを落として精神的に追い詰めていくところに「凄み」があって、「その醜悪さ」を感情的に積み重ねないと、テーマが完結しません。そこはやはり尺が足りなくて、テレビシリーズ出ないと、このくさみは、なかなか出てこないなと思います。


「自分がコーディネーターだからって、本気で戦ってないんでしょう」


のセリフは素晴らしいですよね(苦笑)。なんというか情緒に、えぐってくる台詞回しや描写が多くて、上手いなぁと思います。彼女の積み重ねって、地球の大西洋連邦ブルーコスモスの強い影響にもあることを含めて、ナチュラルのコーディネータへの「差別意識」というのが強く感じられるエピソードで、この子の存在が、エピソードや情緒の上下行ったり来たりに見ている側は振り回されることで、ナチュラルとコーディネーターをめぐる関係性の複雑さが、どんどん伝わる構成になっていて、この辺は監督は、こういう関係性から物事を語るのが上手いなぁと見ていて感じました。

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この子のエピソードを、検索してて胸が痛くなったのですけれども、、、、ヘリオポリスの学校では、超お嬢様のフレイは、学校の憧れの女の子で、カーストのトップに勲りする高嶺の花なんですね。そりゃそうですよね、大西洋連邦事務次官ジョージ・アルスターの令嬢って、アメリカ大統領の娘的なポジションでしょう。多少わがままでも、これしょうがないってくらいの、学校空間の頂点ですよ。んんで、ちょっと技術オタク的な引っ込み思案なキラくんという、学校のカーストが低い日陰ものの存在としては、ずっと、「ちょっと憧れてた高めの女の子」だったみたいなんですね。・・・・そんな子が自分にすがって、感情ぶつけて、身体でつなぎ止めようと必死に媚びるわけですよ、、、、。そらキラくんでなくとも、、、落ちちゃうし、屈折した関係になるわな、こりゃ。


何かの動画で、フレイが生き残ってしまったら、最強のヒロインだったんじゃない?というのは同感。田舎で、キラと、いつも喧嘩したりなおか直りしながら、幸せに暮らしたんだろうな、、、と思ってしまいます。この子の行動力と存在感からして、キラくん、絶対落ちたと思う。ラクスでは、かなわないとも運ですよね、対キラくんとしては。

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ええとですね、ペトロニウスの今回の視聴でのこの物語を、大雑把に捉えると、アスラン・ザラキラ・ヤマトの月面都市コペルニクスの幼年学校での出会いのシーンに代表される「友達なのに殺し合わなければいけない」ということに、アスランとキラが苦しみ続ける、その精神を抉って追い詰めるというのが、SEEDの物語の本質に感じるんですよね。


ディスティニーも含めて、実は、ニュータイプの福田さん翻訳であるコーディネイターの、SF的な「遺伝子操作による新人類の登場」とか遺伝子で評価かされる管理社会みたいな脚本が通底に流れるとは思うんだけど、「そこ」には今一歩、入りきれなかった気がする。これは、全話をちゃんと1話し1はなし見ていた時も、そういう意識は残っていないので、そこは僕の胸にはヒットしなかった。


だとすると、いかに、このナチュラルとコーディネイターの「対立構造」の狭間で主人公を苦しめるか、というのがこの物語の醍醐味となる。


世界の平和を願ったりするのも、究極は、「そこ」に原因があるし、なによりも頭で考えた藩士ではなく、キラやヤマトにとって、とても感情的な理由なので、凄い共感しやすい。SEEDの物語はかなり、ガンダムの中でも大きなファンがついている作品に感じる割には、ペトロニウスが見るところの「ガンダムサーガの問題意識の深掘り」としては、まぁそこそこなんですが、やはりそういったマクロのテーマを「どこまで進めたか」よりは、物語ので最も大事なのはキャラクターが立っているかどうか、彼らのドラマトゥルギーが深掘りされているかどうかなんだろうと思います。そういう意味で、フレイとキラの関係性とかに見るように、彼らが葛藤するエピソードの積み上げが、とてもキャラクターに寄っているところが、やはりこの作品の魅力なんだろうと思う。つーか、生々しいというか情緒たっぷりなんだよね。それぞれキャラクターたちの、感情の幅を上下するために、小さなエピソードを構成しているので、これ好き嫌いは分かれる作品だけど、熱狂的になる人は、凄くハマちゃうものの気がする。


機動戦士ガンダムSEED DESTINY 1 [DVD]

評価:★★★★★星4.4
(僕的主観:★★★★☆星4.4)  

1時間54分ぐらいからLDさんとSEEDの話をしています。僕の感覚では、SEEDもDESTINYも同じテーマの繰り返しに思えるのですが、シン・アスカがいきなり登場しているのは、

ナチュラル VS  コーディネイター

の視点に、その被害者となった少年が軍人に志したっていうのは、時代をとてもよく捉えていて、このあと、00で「少年兵が主人公」になっていくこと、鉄血のオルフェンズで「少年兵はただ死ぬだけにしかなりません」という流れは、ガンダムサーガがとても時代性を反映しているのが、よくわかります。特に、W、SEED、DEISTINY、00、鉄血のオルフェンズなどのこの辺の流れは、まさに同じテーマをガンダムの舞台を借りて少しづつ深掘りして解決策を探して行く過程なので、「大きな流れ」で見ていきたいというLDさんの意見には賛成。


それと、僕も凄く思ったのですが、「戦争をなくすためのルート」って、デュランダル議長、オーブやラクスの勢力、ソレスタルビーイングと、いろいろ挑戦して行くけどほぼ失敗しているんだけれども、「鉄血のオルフェンズ」のアグニカ・カイエルたちは、「それ」をガチで成功させた人たちで、「世界はそのように作り変えられた」わけなんですが、その世界であっても、少年兵は容赦なく死ぬという残酷さを見せつけられるところに、オルフェンズの凄みがあったりします。

この視点に立つと、DESTINYのデュランダル議長の遺伝子工学による管理社会システム「デスティニープラン」は、僕はなんというか拙速過ぎたと思う。コーディネーターが広がっていることから、「上からの押し付け」ではなくて、時間をかけて馴染ませれば、これってうまくいったんじゃないって思うんだけど、、、そういう不満が少し僕にはありました。

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『とある科学の超電磁砲』「大覇星祭」編(第7巻 - 第10巻)ここの話も大好きなんだよなー。

とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲(9) (電撃コミックス)

評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ傑作!)

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『とある科学の心理掌握』『アストラル・バディ』と連関して、食蜂操祈シリーズとして、一度読み始めると全部読み返さないと、いてもたってもいられなくなるほど好きなエピソード。操祈ちゃんシリーズとしては「大覇星祭」編(7 - 10巻)が単体のエピソードなんだけど、この話を理解する前提としては、御坂美琴のクローンのエピソードである「妹達(シスターズ)」編(4 - 7巻)を踏まえていないと、わからないというシェアードワールドがかなり厳しい作品だけれども、それでも、それでも、こんな泣ける話しないだろっ!と叫びたくなるくらい素晴らしいエピソード。もう何回読み返しているかわからないくらい好きな上に、食蜂操祈シリーズとして『とある科学の心理掌握』などスピンオフもまだまだ継続している(2024/1月時点)ので、やっぱり操祈ちゃんシリーズがまだまだ続いているのは、人気があるってことだろうと思います。


レールガンにしてもメンタルアウトにしても、スピオンオフなのに、メガトン級の主人公でヒロインになっていて、鎌池和馬さんのシェアードワールドの広がりというカストリーテラーとしての「広さ」には、驚きます。オリジナル正伝の『とある魔術の禁書目録』は既刊59巻(本編56巻+短編集3巻・2023年12月現在)だそうで、これにレールガンなどマンガやアニメのシリーズも展開しているのですから、既に一代サーガですよね。2004年からスタートしているシリーズですから、20年近く愛されていて、いまだに現役でマンガの連載が継続しているって、何て素晴らしいんだろう。1巻が出た時から読んでいるので、そういう意味では、20年もずっと、僕も大好きでいる物語群なんですね。とはいえ、インデックスの方は、新訳の真ん中で止まっているのを思い出した。って、これ、そうかアメリカに住んでたんで当時本を手に入れるがしんどかったんだ・・・まだあの頃は、Kindleがリアルタイムで出てくれないので、手に入れる方法が限られていて、それで止まったんだ、、、人生に歴史ありだなぁ。

ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』 Amazon Prime2/6配信の6話を見ました。ちょっと驚きの面白さで、感心した。

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評価:★★★★星4.3(まだシーズンを見終わっていないので評価途中)
(僕的主観:★★★★星4.4)   

友人が、昨日深夜まで1−6話し全て見て、悪くなかったというので、体験が共有したくて、3連休ということもあり、がんばって見てみようと、、、、したけど、途中からやめられなくなって、1−6話し(現在公開の話数まで見た(この記事は、2/12の月曜日に書いています)。


映画版は見ていないのだが、驚くほどしっかり描かれていて、ちょっと感心した。というか、20年以上前の作品を、異リアルタイム感で面白い!!!と感じることに驚きを感じた。


というのは、「見える前の前提」として、『沈黙の艦隊』って映像化やアニメ化が難しいなと、当時マンガを見て盛り上がっていたとき思っていたんです。それは、この話の前半の「シーバット叛乱編」に」部分のおもしろさってのが、あまりにプリミティブな日本のナショナリズムに根差したもので、


1)あまりに底が浅いナショナリズム(仮想戦記もの世によくある、日本がアメリカに勝ったら!?みたいなレベルの幼稚な面白さ)


2)アドホックな当時の題材(日本の核武装付き原子力潜水艦配備)に寄りかかったため、時期がずれると新鮮さが失われる


この2つが、あって絶対に面白くならないやつって、諦めが入っていました。1988年 - 1996年に連載されていたんで、そもそも世界や社会の認識が古いし、かわぐちかいじさんって、「スタートの入り口」は、すごくキャッチーかつプリミティヴな導入で入りすぎるので、えいぞかしようとすると、「そのエピソード」を乗り越えなきゃいけないんだけど、アニメを作ろうがドラマを作ろうが、映画であっても、最初の導入部で、一つのまとまりを持ってしまう。


沈黙の艦隊』の凄みや、本当の面白さってのは、「日本の核武装原潜やとかの単純な対米独立ナショナリズム」みたいな、まぁ切実だけど、ある意味陳腐かつ「狭い視点」のものから、超国家軍隊を創設して、地球を一つにしていこうというSF的なファンタジーになだれ込むところに面白さがあるともうし、長く愛される傑作の物語だと思うのですが、、、、「そこ」にいくまでの尺が長すぎて、ぜんぜん本質に辿り着かないで、単純な古臭い日本右翼ナショナリズムで回収されてしまはずなので、、、メディアミックスの意味ないなってずっと思っていました。

沈黙の艦隊(32) (モーニングコミックス)


いやはやでも、『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』。素晴らしい出来で、目が覚めるようでした。


一つは、やはり白組などの海鮮を描けるVFXのレベルが格段に上がって、かつAmazonやネトフリのドラマは、かかっているお金が違って、とても幸せなメディアミックスができていると思う。いいかえれば、日本の最も価値と競争力のあるオリジナルコンテンツを、特にマンガを映画化したりドラマ化するノウハウが蓄積されてきて、かつ、そこに大量の資本を投下すると、凄いレベルのものが上がってくる幸せな構造に、業界も消費者も、、、言い換えればマーケットが気づいてきたんだと思う。


それと、もうすこミクロにフレームアップして語ると、大沢たかおの演技が素晴らしい。こんな凄い役者になったんだと感動。


たぶん、『キングダム』の王騎役が、なんというか、あの漫画的な意味不明な「存在感」を演技やイメージに持ち上げるノウハウを獲得したんじゃないかなと思う。


上記でも語ったんですが、


日本の古く単純な右翼ナショナリズム



それを超える地球を一つにしようとする超国家軍隊の創設を意識する



というもの物語の前半部と後半部の「ブリッジ」となる部分を、大沢たかおの存在感の演技「だけ」で、「海江田四郎」というキャラクターの重さを描いて、この物語の価値深みを爆上げしているところに、この作品の見どころがあると思う。


いやはや残りも楽しみ。