英雄 ~HERO~ 通常版
ジェット・リー
レントラックジャパン 2005-01-28
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評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★★4つ)
黒、赤、黄、青、白、緑の色彩が見事だった。
ハリウッドの大作ような扱いで、大々的に広告が打たれていたので、アクションを楽しむ「そういった」作品かと思っていただが、どうしてどうして中国文化圏らしい重厚な作品。『初恋のきた道』『あの子を探して』チャンイーモウ監督の作品ということで、中華圏の映画もこういう売れ売れの戦略を行うようになってきたのだなぁ、としみじみ。共産党独裁下の(いまもだが)『紅いコーリャン』の頃からすると、時代は確実に動いているなぁ。
紅いコーリャン
莫言 陳剣雨 朱偉
紀伊國屋書店 2004-02-21
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初恋のきた道
パオ・シー
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2007-05-30
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あの子を探して
シー・シアンション
ソニー・ピクチャーズエンタテイメント 2003-04-23
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昨日(2005/5/15)CNNのTalkASIAで、チャンイー・モウ監督のロングインタヴューがあったけれども、オペラをやったりと、中国文化の世界への発信の代表を担うという気概に満ちていた。16歳で文化大革命にあって、ブラックファイブという中国国民党に関係した一族の出身ということで、10年間!も工場労働させられたという悲惨な経験からすると、亡命してもおかしくないのに、中華文化のハリウッド化大衆化への執念があろうのだろうなぁ、と感じた。中国人のビジネスマンの社長と話をしていると、凄くスマートで優秀なのに、さらっと、文化大革命の時代親から引き離されて10年くらい地方で奴隷のように働いたので小学校しか行っていない!とかいう人が多くて、この世代は気合が張っているなーと驚くことが多い。一人っ子政策の世代は、甘くて甘くて・・・とのたまうおじさんが多い。
ちなみにHEROは、僕は映画館に見に行ったが、京劇の舞台を見るようなハリウッドのカタルシスのあるアクションとは異なりある種の「舞」のような印象を受け、とても不思議な印象を受けた。湖のシーンは、さすがに少し笑えたが。。。シーンごとに、様々な色彩が統一されており、『羅生門』『戦火の勇気』と同じように様々空想シーンを繰り返し見るので、本来ならば筋がわかりにくくなるところが、はっきりわかった。
戦火の勇気
デンゼル・ワシントン, メグ・ライアン, エドワード・ズウィック
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2007-03-23
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羅生門 デラックス版
黒澤明 芥川龍之介
パイオニアLDC 2002-09-06
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暗殺者が、『史記』に記載され(宗教色の薄い中国文化圏では歴史に記録されることが絶対的価値)歴史に評価されるお国柄で、
『本当の英雄といえる暗殺者は?』
という問いをまっすぐに追求しています。
無名という始皇帝に殺された人々のうらみを一身に背負った名もない暗殺者
と
中華文化圏という2000年前の唯一の世界のすべてを統一し永遠の平和を構築しようとしてて大殺戮を繰り返した始皇帝
の真剣な会話には、戦慄が走りました。
これは、現代でも通用する問いです。
統一するために圧殺される人々の恨みをどうするか、しかし統一されなければ限りのない殺し合いが永続してしまう。。。。これって、中国共産党の統治へのアイロニーでもあるバックアップとも読める・・・なかなかの内容だなーと思います。
僕は、見て損はない作品だと思いました。ただ、色彩と空間の美しさは、大画面でこそ見たい作品だとは思います。 ハリウッドハリウッドしていて、嫌いという意見は多いが、僕はそれなりに楽しめた作品です。ちなみに上記の会話は、下記の本とかを読んでいるとよくわかって感動すると思います。
小室直樹の中国原論
小室 直樹
徳間書店 1996-04
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