『ノースマン 導かれし復讐者』 2022  Robert Eggers監督 ヴァイキングの生きた世界ってこういうものなのか!という未見性の驚きが溢れる神話的な物語

評価:★★★★★星5つ
(僕的主観:★★★★★星5つ)  

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愛読するブログの『ノラネコの呑んで観るシネマ』のノラネコさんからおすすめされた映画の一つ。さすがセンスいい。シェイクスピアの『ハムレット』のモデルとなった、中世デンマークの歴史家、サクソ・グラマティクスの残したアムレートの物語。監督は、ヴァイキングの「本当の姿」が描きたかったとインタヴューで語っている。とにかく、基本的なヴァイキングの生活が、シャーマニズム文化に色濃く彩られている。僕が「おすすめ」のセンスの良さと言っているのは、僕のような映画や物語好きというのは、「それを見たことで物事の見方や枠組みが変わってしまうような物語は、好き嫌いは関係なく体験しておきたい」と貪欲に思っている点だ。この映画以外にもいろいろお薦めしてもらったがその一つは、『ウーマン・キング 無敵の女戦士たち』で、19世紀のダホメ王国に実在した女性だけの戦闘部隊アゴジェを描いた映画。わかると思うのですが、「今まで見たことがない」未見性に溢れているものなんです。『ノースマン 導かれし復讐者』は、ハムレットのオリジナルであって、その後に人類に広がったハムレットの物語では削ぎ落とされたものが荒々しく残っており、さらに、我々が実際には、意識していない北欧ヴァイキングの生活が、シャーマニズムをベースにした様式であったことで、我々のステレオタイプな感覚ぶっ壊してくれます。そして、そういった常識の破壊にとどまらず、物語としても面白いというのがこれらの映画の特徴です。僕は、この作品は、観るのをとても強くお薦めします。

高い評価を受けたエガースの過去二作の製作費は、デビュー作の「ウィッチ」が400万ドル。
孤島の灯台で展開する不条理劇、「ライトハウス」でも1100万ドル程度で、アメリカ映画としては低予算作品だったが、初のメジャー作品となった本作では7000万ドル以上という潤沢な資金を手にし、非常にリッチな画作りがなされている。
古代スカンジナビアシャーマニズムを専門とする、考古学者のニール・プライスをコンサルタントして雇い、この時代のヴァイキング文化を徹底的にリサーチし、アニミズム的な宗教、生活文化を考証に基づいて緻密に再現。
クレイグ・レイスロップの美術、リンダ・ミューアが担当した衣装、激しい戦闘描写に至るまでリアリティたっぷりだ。
当時浸透しつつあったキリスト教への、ヴァイキングの敵愾心なども興味深く表現されている。

ノラネコの呑んで観るシネマ ノースマン 導かれし復讐者・・・・・評価額1750円


🔳アイスランドの風景の異世界っぷりが素晴らしい

とにかく全編通して未見性の嵐。ノラネコさんは、撮影監督のジュリアン・ブラシュケによる映像のダークさをとても注目している。ここで彼が挙げているのは、映画の序盤のアムレートの故郷の島と青年期を過ごすロシアの森に覆われた世界だ。特にロシアのスラブの村を描いているときには、そこではバイキング的な弱肉強食の世界が支配して力ものが皆殺しにされる陰鬱な森という意味では、エマニュエル・ルベツキが撮影監督をした『レヴェナント:蘇りしもの』との比較で話をしている。さすがの視点。

またエガースと、全ての作品でコンビを組んでいる撮影監督のジュリアン・ブラシュケによる映像は、とにかくダーク。
映画の序盤、アムレートの故郷の島と、青年期を過ごすロシアは森に覆われた世界。
そこは弱肉強食の法則が支配し、力無きものは容赦無く殺される。
スラブの村を攻める時、敵から放たれた槍をアムレートがキャッチして、投げ返して見事に命中させる描写は、「古事記」でアメノワカヒコを殺した「返し矢」を思わせるが、これもニャールのサガからの引用(カッコいいので採用したらしい)だというから、世界中に似たような話があるのだろう。
攻め落とした村は、奴隷として売れそうな者だけ残し、邪魔になる子供たちは皆殺し。
この時代、命の価値は空気よりも軽いのだ。
映画に登場した陰鬱なる森という点では、エマニュエル・ルベツキが撮影監督を務めた「レヴェナント:蘇りし者」と双璧だろう。

ノラネコの呑んで観るシネマ ノースマン 導かれし復讐者・・・・・評価額1750円

僕が注目したのは、アムレートがアイスランドへ赴くシーンがです。これが「異世界」としか思えない形で、僕らの脳内に思い浮かべる異世界っぷりがこれでもかと表現されていて、非常に感銘を受けた。『ゲームオブスローン』で描かれた異世界っぷりなんかも、世界中のいろんなとこで撮影がされたそうだが、このアイスランドの荒涼たる大地の異世界っぷりの雰囲気はとんでもないものがあると思う。これを見るだけでも価値があると思っている。特に、シャーマニズムの文化があって、麻薬や大麻などで酩酊した状態で世界を見るシャーマニズムの視点が、この物語の神話性と相まって、さらにプラスとして、このアイスランドの風景が入ってくると、本当に神話のような幻想のような見たことのない世界が広がる感じになって、感銘を受けた。、

🔳ヴァイキングの世界をガチでリアル寄りに描いているところがセンスオブワンダー

シェイクスピアハムレットのモデルとなったアムレイトの神話的機種流理端がこの脚本のオリジナルなのだが、バイキングの世界をガチでリアルよりに描いていることがこの作品を興味深いものにしていると言うふうに思っている。雪村誠さんのヴィンランドサガを始め、僕らはバイキングの生活様式をかなり知ってはいるのだけれども、これだけ暴力性に満ち、陰鬱に地に色が彩られた生活のあり方があり方を見せつけられると、自分が思い描いていたものとの差に愕然とするものがある。アムレイトの時代は大体10世紀頃のものである。けれども、アニミズム的なシャーマニズムの根付いた生活は、なんというか土俗的で、らしく、今まで自分が見てきたバイキングのあり方などと言うのは、かなりお上品にまとめられてきたものなんだと言うことが戦争オブワンダーとともに伝わってきて、僕はとてもこの作品を見て良かったと思った

それと魔術師であって、白樺の森のオルガの役を演じた、アニャテイラージョイが出てくるんですが、彼女がとんでもなく可愛い。しかし、よく考えてみると、母のトルン、王妃は、ニコール・キッドマン、父のディオは、イーサン、ホークなどなどオールスターキャストですごいですね。

神話を描くと、抽象度が高すぎて意味不明になりやすいんだけれども、この作品は多分バイキングの文化様式というものが僕らが考えているものよりもかなり土俗的であるらしいもので、その落差があって、かつ父親を叔父に殺されて流されたアムレートの機種流理端と言う骨太の古典的な物語累計がとても機能していて、不思議な作品となっている。その中で魔術師として出てくるアニアの姿も、とても神秘的で、彼女の雰囲気に合っていると思った。まぁ僕はそもそも『クイーンズ・ギャンビット』以来、彼女の大ファンなので、出てきただけで、ちょっと興奮してしまったまして、ちょっとエッチなシーンがあるので、それもまたよし(笑)。