あずにゃん問題(笑)〜日常をたゆたい「いまこの時の幸せをかみしめる」か、それとも志と夢を持ってつらく茨の道をかけのぼるか?

けいおん! 1 [DVD]


とうま(玄馬)のヲタ街道 光の翼〜ALA LUCIS〜
http://blog.livedoor.jp/tomablog/


先日、刹那の話で盛り上がった玄馬(とうま)さんと話していて、けいおん』のあずにゃんはもったいないよねーという話で、盛り上がった。しゃべっている過程で、ああ、なんで僕が、あずにゃんを最初から気に入っていのか、ということが分かってなかなか面白かった。つまりね『あずにゃんは、こんな所に居ちゃ駄目だっ!!』 と思っていたんんですよねー。アニメを見ていても、最後は、「みんなの仲良しな雰囲気」を愛してけいおん部に戻っていくんだけど、「それ違うだろ?」と僕はちょっと思ったのを覚えていて、まさにそれと一致したんだよねー。



彼女は、すでにかなりの実力もあるようだし、最終話?というか、最後のおまけで彼女の部屋の中は、まさにJAZZ一色で、かなり音楽に入れ込んでいることがわかる。それほどの思いを抱えて生きているのならば、やっぱり「音楽を目標」にレベルを追求することを、もう少しやってもいいのではないか?って思うんだよ。そもそも、そういうレベルが上昇することに強い意欲を持っているのは、見ていて丸わかりだからね。それが、ゆるーい仲間意識に回収されていくのは、見ていてつらい。そもそも、もともと志や目的がなかった他の4人は、たしかにこの「仲良し空間」でいろいろ得るものがあると思う。けど、あずにゃんは、そもそもレベルも動機もあるわけだから、本当は、「より上のステージ」を目指している仲間と、「仲良し空間」がある場所を探せなかったことが、問題点であって、何もこの部に入らなくても・・・と思ってしまうのだ。


もちろんこれは、視聴者側の「世界を眺めるメガネ」に影響される問題で、「勝つことが重要!」と思っている人と「仲よくすることによる思い出が重要」と思っている人によって、意見は真逆になってしまうとは思うけれどもね。僕も玄馬さんも、基本的には人生においては志を持って勝ち抜いていくことのほうが価値が重いと感じる体質の人なんだろう。だから、あずにゃんを見ていると、残念に思ってしまうのだ。


この辺の志向は、たぶん海燕さんが云っている部活モノの差異の問題でもあると思うんだよね。


でも、ま、部活ものにも二種類あって、ひとつは、『SLAM DUNK』みたいな、『アイシールド21』みたいな、集団のモチベーションがはっきりしているタイプ、「全国制覇めざすぜ!」系。もうひとつは、『放課後ウィンドオーケストラ』のような、『とめはねっ!』のような、特に大きなモチベーションが存在しないタイプ、「まったり皆で楽しもうぜ!」系。そのいずれが正しくいずれが誤っているというものではありませんが、とにかく大別するとこの二種類に分けられるんじゃないかと。


ぼくは前者を「きつい部活もの」、後者を「ゆるい部活もの」と呼んでいます。ぼくは見ていないけれど、『けいおん!』はたぶん「ゆるい部活もの」なんでしょうね。もちろん、この二者は明確に分かたれているわけではなくて、じっさいにはグラデーションを描いていると思います。で、ペトロニウスさんは良く「ゆるい部活もの」は物足りない、みたいなことを仰いますよね。それもわかる話で、過酷な競争社会でもまれているひとにとっては、そういうモチベーションの低い仲良し集団ものは、いかにも甘ったるく思えてもふしぎじゃない。でも、逆にいうと、こういう「ゆるい部活もの」の価値は、その物足りなく感じもするところにあるのであって、その何ともいえないゆるさ、優しい癒しの空間こそが魅力であるわけです。


部活漫画には二種類ある。/Something Orange
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20090617/p1

部活は、勝つことが重要なのか?それとも仲良くチームでやることが重要なのか?って命題。


これは、組織を運営するときの重要な命題で、、、、別に会社などの規模の大きなものでなくとも、特に部活動で集団でやる時に、部長とかを経験した人ならばこのことの難しさと重要さを何度も話し合って、それこそ部員と喧嘩したり仲直りしたりの経験があると思うんですよ。これ部活動でやる時に一番もめる点ですからね。


ちなみにそれを両立させた傑作として、河合克敏さんの名作『帯をギュッとね!』があがるのは、なるほどです。昨今では、『ちはやぶる』が最初期から明確にこの問いを意識して描いていますよね。ちなみに↓ここで第一話が見れるようです。


http://websunday.net/museum/no11/no11.html


帯をギュッとね! (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)
帯をギュッとね! (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)




ちなみに、現実の世界でも起きる問題点なのですが、たぶんクリエイター側としても、悩まされる問題で、どちらかに「偏った作品」というのはつくるのが簡単なんだと思うんですが、そのバランスをとるのは、そもそもセグメント(=見る人の好み)が違うので、両立させるのが難しい二元論的な対立をしてしまうんですよね。編集者とかマーケティングサイドからすると、たぶんどっちかに決めてしまってセグメントを絞った方が売れると思うのが普通ですから。雑誌の中で差異を作ればいいわけで、作品の中でそんな対立をつくる必要はないもの。

ちはやふる (2) (Be・Loveコミックス)