『大長今(テジャングム)〜宮廷女官チャングム』 差別される社会での自立

宮廷女官チャングムの誓い DVD-BOX I
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評価:★★★★★星5つ
(僕的主観:★★★★★☆星5つ半!!)


やっぱ、すげーよ韓国ドラマ!(笑)。

この1ヶ月ほど、まさに夢を見ているような時間を味あわせてもらった。
(昔のアメブロ旧館の記事の再掲です)

各回のストーリの感想や思いいれを話していると、同じだけの尺(=54話!!)必要なので、ここはメインは批評のみとしよう(笑)。いやーすばらしかった。とっても、骨太の成長物語(=ビルドゥングスロマン)。僕は、アジア版『小公女セーラ』(笑)と名づけたい。あるいは『おしん』でもいい(笑)。とにかく、主人公が、いじめられて、追い詰められまくる!。いやー天晴れだ、あそこまでやると(笑)

小公女(プリンセス)セーラ(11) [DVD]
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あまりに、骨太すぎて、なかなか入り込めない人もいるかもしれない(笑)が、そういう心のよろいを取ってピュアに見たら、はまること間違いないです。とにかく、主人公が追い詰められて、これでもかこれでもか、と厳しい試練にあるのは、いくら「その試練の結果大きく成長する!」と分かっていても、ツライ。つらすぎる。僕は、毎回苦しくて泣いていた(笑)。



これってビルドゥングスロマンの典型なのだが、なんと!54話!!
(54時間だぜ!!(笑))も、一度のダレもなく(僕はダレはあまり感じなかった)



主人公を追い詰め続けるテンションの持続



には、驚嘆だ!。



儒教という道徳の狭間で



基本的には、見てよかった!と感動でしている。しかし、それだけでは、批評というか記事にならないので、幾つか違和感を感じたポイントを上げてみよう。これを見ている間、まず思い浮かんだのは、韓半島の伝統的な民話である『春香伝』です。


『化けの皮』戸田誠二著/春香伝から
http://ameblo.jp/petronius/entry-10003235034.html

『化けの皮』戸田誠二著②
http://ameblo.jp/petronius/entry-10003235080.html

化けの皮 (Bunkasha comics)
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新編 春香伝
新編 春香伝



春香伝は、朝鮮半島に古くから伝わる古典作品です。いってみれば、日本でいう赤穂浪士討ち入り忠臣蔵みたいなものです。CLAMPが漫画化しているし、日本でこそ知られていないが、あまりに有名な古典なので、たくさんの本が読むことができる。


春香(チュニャン)は、貧しいが美しく優しい少女。夢龍(モンニュン)という頭の良い少年と恋仲になります。そして、ある日彼は、都に上り科挙の受けるといいます。科挙は、戦前のスーパーエリート養成学校であった一高・帝国大学を何倍も難関にした東アジアの文明が生み出した、一大官吏登用任官システムです。もし、これに合格するれば、軽くて領主レベル、下手をすれば総理大臣、宰相も夢ではありません。ただ、物凄い過酷な試験で、試験勉強中に発狂する人も多く、同時に、合格率は、ほとんど奇跡に等しいレベルです。そんな試験を春香のために受けに入った夢龍と彼女の恋が、テーマです。ようは、都へ行って大出世して帰ってくる青年と、それを健気に待ち続けた貞節の鏡の少女の物語です。

この話には、いくつものヴァリエーションがあり、実際には愛した男が帰ってこなかった、とかの悲恋が実は多かったようです。というのは、徳川幕府以上の、なんと500年以上の長期政権であった李氏朝鮮は、その平和で安定した社会ゆえの、ドロドロに腐って停滞した封建社会でした。中国や日本の封建体制末期の停滞感を、さらにでっかくしたようなものです。富める者はいつまでも富み、貧しいものはいつまでも貧しい。韓国では、春香伝を見て泣かないものはいない、といわれるようです。それほどの国民的な古典で、18世紀初頭に民間のパンソリによって広まり、さらに小説として広まった悲恋物語です。全羅道を中心として伝承されている口承芸。太鼓の伴奏のもとに歌手が物語を語り歌う、と四方田犬彦さんの『大好きな韓国』に書いてあった。


この科挙を受ける青年を待つ少女というイメージから、みなさんは何をイメージするでしょう?。


これは、よく言われるのは



儒教的規範を強烈に女性に押し付け、いつ返るとも消息も知れない男を待ち続けさせるという自己犠牲を女性に迫る話なのです。


えっとですね、なぜチャングムに関係のない、春香伝の話を長々としたかというと、これがチャングムという韓国の時代劇における大前提・主題となっているからなんです。



朝鮮半島は、儒教という規範が物凄く強烈な社会で女性の身分がすごく低かったそうです。・・・・・・あんまり誤解されたくないので、付け加えると、女性の身分が低いのアジア一般に言えることですし、韓国が近代社会になるにつれてそれがドンドン解放されているのも事実であって、別に韓国社会を誹謗しているわけではありません。はっきりいって、もう韓国で暮らすのは、日本で暮らすのと僕はほとんど遜色ないように感じますよ。もちろん金があればの話なのは、世界中どこでも同じですが。とはいえ、一般的に儒教的道徳の色彩が強い社会は、女性の身分が極めて低いという歴史的事実です。またリャンバン(両班)という貴族階級と、その他の階級差が、恐ろしく厳しい身分社会であったことも、重要なポイントです。とりわけ中世朝鮮の、それも封建社会バリバリの儒教文化が極まった時代が、このドラマチャングムの大前提であることを、視聴者は、よく理解してみると、非常に深い感慨を及ぼします。

◇以下NHKのHPの引用
http://www3.nhk.or.jp/kaigai/chikai/basic/index.html

実在のチャングム<長今>

このドラマは実在の人物「長今」をモデルに描いています。実在の長今は、朝鮮王朝第11代王中宗に仕えた女医として、「朝鮮王朝実録<注釈4>」の「中宗実録」にその名前が記されています。しかし生没年やその生い立ち、性格などについての記載はなく、ほかの文献にも見当たりません。


とはいえ正史記録である「朝鮮王朝実録」にその名前が何度となく出てくることは、長今という人物が当時非常に優れた人物で、重鎮されていたことを示しています。実録には、中宗の発言として長今の名が出てくるほか、長今が語る中宗の体調や、長今に与えられた禄高などが記載されています。


1544年(中宗39年)10月26日に記された「余の体のことは女医(=長今のこと)が知っている」という中宗の発言からは、中宗が長今に寄せていた信頼の厚さがうかがえます。「大長今(=偉大なる長今)」とは中宗が長今に与えた称号です。

女性であること自体がハンディになってしまう厳しい身分制度の当時、他の男性を退け王の主治医になった女性がいたことを、このドラマを通じて知って欲しかったと語るイ・ビョンフン監督。


当時の医学は食物療法と密接に関係があったことから、保養食作りは医者の基本的な仕事でした。ドラマ前半、チャングムを宮廷料理人として描いたのは「保養食が上手に作れるなら、きっと料理も上手だっただろう」という監督の憶測から。長今の謎めいた生涯が、ドラマ化にあたってよりドラマティックな展開を可能にしたようです。

これって、画期的な感じがしませんか?



ようは、女性の自己実現を描いた作品なんですね。



僕個人としては、フェミニストのようなガチガチの理念的な女性の自立ではないところも、凄くいい。理念的なのは、気持ち悪いからね。理念が正しくても、現実を生きる僕らは、理念では生きていけないからね。物語として性別年齢関係なく入れる仕組みをしつつ、とてもしなやかでかわいらしく女性的な美しさを描きながらも、あれほどの激動の人生でも、信念と志を曲げない姿勢は、まるで踊る大捜査線織田裕二演じる青島刑事(笑)のよう。


しかもそれだけじゃーないぜ!!


ハンサングン、チェサングン・・・・・ミン・ジョンホ・・・・素晴らしいキャラクターがキラ星の如くだ。


だめだ、一人一人のキャラクターに同じくらいの分量の記事が書ける(笑)。


すげぇ!!すげぇぞ!!


・・・・興奮して鼻血でそうです(笑)



たとえば、僕の最大のお気に入りは、真の悪役を貫いたチェサングン。



彼女は、チャングム最大の敵。




あの政治的才能!!



見事な悪!!!



おれは、たまげたね。



いい!!いーんだよ!!!



また最期が、憎いほどカッコイイ。痺れた。まさに純粋な悪役であるにもかかわらず、韓国放映当時に、彼女にとてもファンが多かった、というのは頷ける。




ほれそうだった(笑)