『大奥』 5巻 よしながふみ著 権力の頂点にいることの孤独

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))

大奥 第5巻 (ジェッツコミックス)


評価:★★★★★5つ 傑作マスターピース
(僕的主観:★★★★★5つ傑作)

2008-04-28『大奥』3巻 よしながふみ著 春日局の信念〜殺し合いの続く世界に恒久の平和を!
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080428/p2


ついに五巻までも来た(画像がないので1巻で代理)。犬公方綱吉と吉宗10歳の邂逅シーンでこの巻は終わる。1巻が吉宗の時代からスタートして過去を調べ振り返るという構造になっているこの作品も、ここまで・・・・。最初の家光と有功の出会いを見た時は、その深さに打ちのめされて、このレベルの男女関係は書けまい、と思ってすぐ終わるぐらいに思っていたのだが、堂々たる大河ロマン。堂々たるレベルで、様々なタイプの女将軍たちの愛憎の生き様を描ききっている。凄い作品だ。

後継者を生むため、「家」の存続を保持するの「機関」となり下がったハレムが、いかに人間性を奪っていくか・・・ということがこれほどよく分かるものはない。マクロをすべて背負う権力の頂点にいる人間の「内面を追う」という物語構造なため、その狂気がいかに彼ら彼女らの心を蝕んでいくかを、懇切丁寧に描き続ける。

多くの王朝が、3代を超えて直系が続いていかないのは、こういう感じなのかもしれないと思いました。もちろん将軍が女であった!という、男性と女性のあり方が逆転してしまうという思考実験の故であって、本来の歴史の事実とは関係ないものではあるが、時にそういった思考実験が、某かの真実を映してしまうことはよくあるものだと思う。

権力の頂点にる人間が、個としての、ミクロとしての「孤独」な自分を理解していく様は壮絶だ。そして、であるからこそ、その「個としての孤独」を知ってしまうからこそ、世界のマクロへの興味が消失してしまい・・・というこのプロセスはどこかで見た・・・・と思ったんだが、浅田次郎さんの乾隆帝が中華皇帝の「天小(ティェンズ)」の思想・システムに絶望してしまうのも、このロジックの流れだった。そういえば、視点が少しずれるが、『魔法騎士レイアース』のあの劇的な最終回も、これと同じ仕組みなんだよな・・・・。



蒼穹の昴(1) (講談社文庫)