『娚の一生』 西炯子著 30歳半ばを超えたつぐみちゃんが、たまんなくかわいいです。

娚の一生 1 (フラワーコミックスアルファ)娚の一生 2 (フラワーコミックスアルファ)


評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★4つ)

もともと「何が言いたいかわからないけれども」絵柄と雰囲気がいい作家、という位置づけでけっこう西炯子さんは好きだったのだが、この話は珍しく明確にストーリーがある。30歳を超えたキャリアウーマンの女性が仕事と不倫に疲れた死んだ祖母の家に帰ると、過去に祖母の愛人だった?らしい50を超えた大学教授と出会う・・・という話。

何が言いたいのかっていると、コアは二つ。一つは、なんといっても、つぐみという女性の「生きるのに不器用」で「幸せになり方を知らない」女性が、幸せのなり方を知っていく、こと。もう一つは、なんといっても、物凄いダンディな50歳超えたインテリメガネ教授の色気とかっこよさだ!、つーか、なにこのオジサン凄まじくかっこいいんだけれども、、、。何よりも「その気の抜け度合い」と「したたかさ」がたまらなくかっこいい。

30歳の後半のキャリアウーマンの女性が、こういう物凄いダンディな50歳超えたインテリメガネ教授に出会える確率はほとんどファンタジーとしか言いようがないところではあるが、、、そのウルトラファンタジー的な現実を、それっぽく見せてしまうあたり、この人の飄々とした人格を描かせたときの「まったりとした雰囲気」の描写は素晴らしい。

実際に、いるわけねーよ、あるわけねーよ的シュチュエーションだが、二人ともが妙に、リアルというかちゃんと描けている人格なのは、きっと作者自身の天然の素質ではないか、と思う。たとえば、この某大手電機会社で原子力発電所を作るプロジェクトの課長をしている「つぐみ」という女性。ああ・・・これは、たしかに、いそうっていう感じがする。その彼女を評して海江田教授が


「賢いけど、もう一つ賢さが足りない」


と評するのは、うーん鋭いと思う。僕にも高学歴の女性の友人は多いのだが、、、というか大学の同期の女の子を見ていると、いい大学に来るだけに非常に気真面目な子が多かったのだが、そういう女の子には気真面目で物凄く頭がいいししっかりしているのだが、もう一つ「賢さ」・・・・いいかえれば「ずる賢さ」が足りない子が時々いた気がする。そういうのってのは、いろいろなチャンスや「状況や年齢などにあるものに流される」ことができなくて(気真面目だから)、結局、「潮時」を逃してしまう人が沢山いた。「潮時」ってのは、なにも結婚しろとか会社を辞めろとかそういうことではない。あまり物事をスクエアに考えないで、流されることができるかどうかってことだ。変に悩まないで、世の常識に沿えるかどうかってこと。別に女の子ではなくても、男性でも同じなんだけどね。

本当に賢いというのは、勉強ができたりすることや、「真面目に人の言うことを聞くこと」じゃないあんだってことが、結構わかっていない人がこの世の中は多いものだ。真面目に取ると人生損をする建前が沢山あるものだ。もちろん同時に、「言われたこと」を素直に信じたりする真面目さも重要なんで、まぁバランスなんだけれども人生は。それに、こういう真面目な子に限って不倫とかに陥るケースも多い、、、のは、「ずる賢さ」が足りないから餌食になりやすいんだよなー、ズルズルいってしまいやすい。さらにいえば、この手の頭のよくて、いまいちずる賢さが足りない子って、凄く年上に弱かったりするんで、50歳を超える海江田にくらくらってくるのも、実は、いやー良くわかる設定なんだよね。でもそういう生々しいいやらしさがまったく感じないのは、それ以上にこの設定の、「つぐみ」って人格の、飄々とした方の抜け具合が、ちゃんと抜けているからだ・・・・というのは、見ていてわかる・・・この子仕事ができるだろうなーきっと、と思わせるもの凄く。だから、仕事にのめりこんじゃったんだなーってわかる(笑)。


というような・・・・気真面目な女性が、すっごいダンディなおじさんにくらくらさせられる、というおとぎ話です。

僕は、めちゃめちゃ好きでした。もうやばい。