10巻まで読んで、ブラックラベルもこの1巻まで読んだ。
一言でいうと、物凄いうまいなーと思った。過去の作品から見ても信じられないくらいエンターテイメントとしての水準が上がっている。しかも、相当メジャー化しにくいテーマを、これだけわかりやすく、エンタメで、しかもたぶん今の若者の主要テーマと結びつけるところなんて、本当にうまいなーと感心しています。いまのエンターテイメントでは、自尊心の無い主人公が、ナルシシズムの檻から出ていくというテーマは、要は青春の成長ものとか、そういう文脈に結びつけて、かなりの層を動員できるポイントなんだけれども、これをSMテーマで、これだけ爽やかに描きながら、ことの本質は外していないところは、いや、ほんとみごと。この作者こんなに見事なほどバランス良い人じゃなかった気がするけどなー過去の作品を思い出すと、、、。いったい何があったのか???。本人が物凄い成長したのか、凄い編集者がついたのか、、、どっちにせよ、素晴らしい作品です。
僕としては何がぐっときたかったいうと、出てくるキャラクターどれも、僕の好みではないんですよ。男の子も女の子も。だから本来は、僕的には、好きにならないし、入り込むこともできないはずなんですが・・・・・ものごっつい主人公とヒロインの純愛が美しくて、それで胸がぐっとくるんですよ。SMテーマで、そんなに純愛かよって(苦笑)。感心します。SMも本質を外さないで、エンターテイメントのナルシシズムの檻からの脱出のライトなテーマに接続して、非常にわかりやすく入りやすくなっている・・・。いやほんと、いい作品です。
ちなみに、僕は、終始、この作品を見ていると、柏木ハルコさんの『いぬ』を思い出します。これ、以前にどこかで記事を書いた気が…するのだが、大傑作だと思っています。格差がある男の子(=超ダメな男の子)と女の子(=美人でもてる女の子)の関係性という、この『ナナとカオル』と同じパターンの関係性ですが・・・・『いぬ』の結論、ヒロインの女の子の決断は、ほんとうに素晴らしい!と当時、感激したのを覚えています。・・・ああ、そういえば、女の子の視点から、ナルシシズムの檻を出る作品を、初めて見た気がすると感心したのも覚えています。いまも、これに勝る作品ってないかもしれない。