帰還兵の自殺問題からアメリカの現代の在り方が見える

American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History

余裕がなくてクリント・イーストウッド監督の『アメリカンスナイパー』を見に行けていないのですが、なかなかに問題作のようですね。早く見たいです。アメリカでは、本がベストセラーになり、かなり話題になり続けています。

1日22人が自殺している―。

 11月11日の米ベテランズデー(復員軍人の日)に合わせて、反戦イラク帰還兵の会が発表した復員軍人における自殺者数である。

 「復員軍人」というのは、日本では第2次世界大戦から戻った軍人を指すが、米国でいま注目されているのは2001年に始まったアフガニスタンでの戦争と03年から始まったイラク戦争から本国に戻った米兵たちを指す。

 22人という数字は過去2カ月の平均で、単純に計算すると1年に約8000人が自ら命を絶っていることになる。アフガニスタンイラク両国で戦死した米兵は過去13年で約6800人なので、これと比べると、どれほど多くの若者が自殺しているかがわかる。

 多くの兵士たちは戦地で想像を絶するような試練を経験して帰国する。心的外傷後ストレス障害PTSD)を患う帰還兵も多い。最近まで高校に通っていた普通の若者までも、従軍により生活環境が一変し、最悪の場合は自殺に追い込まれてしまう。


この現実を見よ! 戦争から戻っても自殺が絶えない米復員軍人
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141117/273933/?rt=nocnt
堀田 佳男


最近、アメリカに住んできていろいろなことが、じわっとわかってきたり、日本と感覚が変わってきたなーと思うことが多いのですが・・・・やはり1年以上たって、住んでみてわかることってあるもんですねぇ、、、一つには、アメリカは戦争をやっている国なんだな、ってことです。軍の存在が、社会に深く広くあるんですよ。しかも、イラン・アフガニスタン戦争は、多様化して非常にこれまでとは違うような現代的な国家に変わりつつあるアメリカにおいて、深い影響を与えているようなのです。この場合の「深い影響」って、そりゃアメリカの動向は世界中に影響を与えるのですが、そういったマクロの影響ではなく、端的にミクロの影響が凄いんですよ。



イラクから帰った兵士が内緒で家族に会ってみた


こういう家族にサプライズ出会うというのもそうですが、普通に身近にいる家族が友人が知り合いが、戦争に行っている可能性が高いんですね。また、アメリカにおける軍人への社会的な尊敬は大きいので、大きなイベントやショーなどで、アメリカのために戦った人に拍手を!みたいなのがよくあるんです。僕は、San DiegoのSeeWorldのショーを見ているときに、その時立ち上がった人が、みんなとても若く家族連れで(家族のための遊園地だからあたりまえ)、、、しかも女性が多かったのに驚きを感じたんですよね。最初はすごい驚きでしたが、、、もう慣れてきました。そういうものなんだな、、、、と。ちなみに、SanDiegoは、日本における広島の呉のようなアメリカ海軍の巨大な街なのでってこともあるでしょうけれどもね。こういうなんというか日常に溶け込んでいるのは、日本ではなかなかないので、とても不思議です。日本でも横須賀近辺に行けばよく軍服の人が見れるし、自衛隊のイベントを気にしていったり、友人ができてきたりしていたので、軍人がいる風景というのは日常的になってきてはいたんですが、、、それが歴史になるような巨大な戦争との関連性が結びついてくると、また全然違います。日本とは違い、アメリカが、常時戦争をしている国なのだ、ということが、じわっとわかってきた気がします。


そして、それを前提に考えると、アメリカの帰還兵の自殺の問題、非常に興味深い問題です。というのは、僕は日本でずっと暮らしてきた日本人なんですが、その常識的な視点では全くない、とても理解しにくい点であるということがあるからです。これって意識的に理解しようとしないと、全く引っかかってこないポイントなんだろうと思います。そしてこれを絡めないと、たとえば『アメリカンスナイパー』などの作品も理解しにくいでしょう。


あともう一つ気づいたのは、いまのアメリカにとって、911と、イラクアフガニスタン戦争が、国の深いところでのありかたを規定している重要なポイントなんだ、ということです。直近のことでもあって、僕はよく追えていなかったのですが、ここをちゃんと理解していないと、現代アメリカ社会を理解することができないんだ、というのがよくよく感じてきました。この辺の映画は、『ハートロッカー』をはじめ全然見れていないんだよなー。でも、ちゃんと読み込んだ『ゼロ・ダーク・サーティ』なんかは、自分でも忘れていたが、よくよく現代アメリカのポイントが隠されていて、僕もビビットに感じているんですよね。もっとがんらねば、と思う今日この頃です。


ゼロ・ダーク・サーティ』(Zero Dark Thirty 2012 USA) Kathryn Ann Bigelow監督 アメリカが掲げた対テロ戦争という大きな物語の終幕の一つ
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130223/p1


ゼロ・ダーク・サーティ スペシャル・プライス [DVD]

ハート・ロッカー (期間限定価格版) [Blu-ray]