ソニーユナイテッドというのは、ただ単に今のグローバル企業の王道(=基礎)に過ぎない話、次はどこへ向かうのか?


ソニーの壁 ストリンガー改革の真実/日経ビジネスオンラインより
http://business.nikkeibp.co.jp/article/podcast/20080529/159820/


前にも書いたのだが、僕はとてもSONYという会社を気にしていてずっと定点観測をしている。実に、幼稚園の時から(笑)。まぁ個人的な理由もあるのだけれども、、、、いまでも、うちにあったベータマックスの200本近いビデオコレクションを前に、涙をのんだあの日を忘れられない(笑)。僕の愛する当時のアニメや時代劇は、あのベータのビデオテープに収まっていたのだ・・・。うちの家は、物凄いSONYラブな家庭だったんだが、あのベータの撤退以降、全てのSONY製品を買わないことを、心に誓ったのだった(笑)。いや、今はもう怒りを忘れてときどき買うけど。


とまぁ、個人的な理由はさておき、なぜいまでも定点観測しているか?と言えば、自動車産業と並んで、日本の総合電機という製造業のジャンルは、戦後の日本の象徴のようなもので、そしてこの総合電機の領域、セグメント、市場、、、何でもいいのだがこの世界は、いまの日本の象徴でもあるからだ。コングロマリットディスカウントを含め、その強みと弱みは、現代日本社会と日本という民族集団の代表例サンプルとして、非常に興味深い領域だと思って僕は定点観測している。


なんか「総合電機がなぜ日本の代表サンプルたり得るか?」とか、「今のソニーとかこれまでのソニーをどう評価しているか?」というのは、書くとあまりに長くなりすぎるので、とにかく思いついたことを列挙。思考のメモだからね。



ソニーユナイテッド〜真のグローバル化へ踏み出す時は、両刃の刃


「私も頑張ればいつかソニーのCEOになれますか?」


2006年に中国に訪問した時に、ストリンガーは中国人社員にこう聞かれたことを今も覚えている。
p39


あのね、、、いまソニーが復活してきている理由に、この記事は、ストリンガー氏の「ソニーユナイテッド」というこれまで部門間の壁をシャッフルする領域横断的な文化、コミュニケーションを重視する経営手法が、功を奏していると考えているようだ。もともとの盛田氏の構想であった、ソフトとハードの融合、、、とまではいかないが、ハードの販売チャネルとソフトの影響力をうまくマーケティングミックスする成功例が、とりわけインドや米国など、日本以外で抜群に功を奏している例を多数挙げている。株主も販路も日本の比率が物凄く少なくなって、シャープに液晶として比べると抜群にわかる違い、「全世界で売る力」を持っているという、既にグローバライズしつつあるソニーが、全世界の販路でうまくモノを売る力を発揮するには、確かに、日本人ではない海外の社員のモチヴェーションを上げる、人材のダイバーシティー戦略を、深く進めるということが必要だったという結論は、至極まっとうであると思う。


そう、読んでいて、、、、、あまりに「至極当然で当たり前のこと」しか書いていないのだ。そして、この「至極当然で当たり前のこと」が、日本という民族資本に縛られた企業が真に多国籍企業になるためには、凄く難しいことで、いま持って難しいはずなのだ。だって、本当に基礎的な話でしょう?経営学の教科書を読めば、どこの最新の本にも書いてある。真のグローバル企業になるために、1)グローバルの4極に深く販路を確保すること、2)そのために、そこに関わるローカライズを徹底的な権限移譲と人材の多様化戦略・・・・言い換えれば、現地社員と日本採用の社員の壁を取り払っていくこと、だ。そして、あまりに大きくなりすぎた、巨大企業を、シンプルにまとめ上げるために、強烈な企業文化的な価値観、つまりはバリューの共有化・・・・それは、ソニーユニバーシティーなどの幹部の全世界での抜擢採用とエリート教育の徹底だ。そして、3)複雑化した部門間の壁を領域横断的に統一のヴァリューでプロジェクト的に自立的運用していくこと。


なんか、ほんと、どこのいい企業でも必ず経ている王道にすぎない。ビジネスに王道以外はないのだよ。


はっきいって、これは出井さん時代のソニーの目指していたところと何も変わっていない。出井さんは夢想家で、ソニーのいいところをすべてダメにしたみたいな言説が漂っているが、僕は違うと思う。技術者主体のソニーに、文官を・・・言い換えれば事務系採用を増やして、新しい組織体制を作り上げ、、、全世界の販路へのグローバル展開・・・ってこれは出井さんの前の世代の路線だが、、、、やっていることは、僕はずっと首尾一貫していると思う。


つまり、いいかえれば、ストリンガー氏が来るまで、その「当たり前のこと」がやはりできないほど、難しかったということだ。そりゃーそうだよ。そんな基礎的なことであっても、8兆円、10数万人のグローバル企業を普通に統治するということは、もう物凄く難しいのことなんだよ。これは物凄く難しいの。日本の一民族資本にすぎない企業が、その「コアの良さ」を失わないで、グローバルシティズンとなることが、いかに難しいかの証左だと僕は思う。そしてこの壁をうまく抜けない企業は、早晩世界の競争に勝ち抜けなくなる。ソニーはフロントランナーなだけに、そのダメな部分が思いっきり外に出てしまうだけだ。


そして・・・・・本当のソニーの復活は、実はこんなことでは評価できないんだ。なぜならば、これは、まっとうな力量の経営者(って、物凄いレベルなのだが・・・)であれば、できないことはないのだ。だって、やるべきことはわかっているのだもの。ただ物凄く難しいだけ。


本当に難しいのは、やっぱり「世界を変えてしまうようなイノヴェーションや商品をどう継続的に生み出せるか?」という部分なんだ。それ以外は、M&Aだろうが、ソニーユナイテッドだろうが、そんなものは「至極当然で当たり前のこと」なのだ。世界の競争で勝ち抜こうとすれば、グローバリゼイションは、必須で逃げることはできない。本当は、その先を見せることができるかだ。


そして・・・・グローバル化・・・全世界で販路を持ち、コモディティーに近いところで数を稼いでコストを劇的に下げるというのは、ブランドを著しく下げる行為でもあるのだ。上記の「世界を変えてしまうようなイノヴェーションや商品をどう継続的に生み出せるか?」ということができなければ、三角形のピラミッドの下に落ちてゆき、、、、ってプロダクトライフサイクルの常識的な議論に陥るだけなのだ。三角形の頂点にフラッグシップを持てない惨めさは、そこを強烈に持ち続けるアップル社の劇的な他国への戦略的攻撃と浸透を見れば、良くわかる。フラッグシップを持つブランドは、ビジネスモデルの変更を促せるのだ、主導的に。



さて、次はどこに行くのだろうかソニー



まっとうな経営を貫くのは、必須だ。もうそれしかないのだから。・・・が、それは、ソニーの本質たる技術のイノベーションによるハイエンド、ハイバリューの領域でのマーケットシェアを持つという創業時代からのソニーの最良の部分を失うことでもある。この矛盾、両刃の刃を、彼らはどこへ向かうことで克服しようというのだろうか?。そのために、どんな手を打っているのだろうか?。最近自分のビジネスに忙しくて、まともに情報も集めていないし、本当にどういうことをやっているのか?いっているほどグローバル企業としての内実が経営に貫かれているか?などのことは見ていないので、空想的な発言だが、まぁ楽しみではある。