TURN 16『超合集国決議第壱號』感想〜コードギアス読解の基礎/主人公はスザクなのかルルーシュなのか?

コードギアス 反逆のルルーシュ R2 volume01コードギアス 反逆のルルーシュ R2 volume01
福山 潤, 水島大宙, 櫻井孝宏, ゆかな, 谷口悟朗

バンダイビジュアル 2008-08-22
売り上げランキング : 15

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

■純粋な軍事力としての黒の騎士団〜地球を統一するためには、解き放たれた純粋な軍事力がいる

うん、、、基本的に、僕は大枠のシナリオ自体は、特に文句はないんだ。個別の話も、ここまで見事なグランドデザインとキャラクター造形が描かれてしまうと、もう感情移入しているから、多少の演出の齟齬では特にダメだ、とは思わない。けど、、、この物語って、3層構造にわかれるはずで、


1)エリア11(日本)の植民地解放というナショナリズムの物語


2)3軸を中心とした地球統一のインターナショナリズムの物語


3)まだ謎だが、ブリタニア皇帝が語る神との戦い


という3層に分かれるのはなんとなく想像がつく。3)がどういう形で展開するのかは、まだ見えていないので、テキトーな思い込みですが・・・。3)のイメージは、SF的なもので、エヴァとかああいう話です。・・・でも、だとすると、全50話と考えても、1)日本の独立戦争というドラマが、R2(第二期)のTURN 8『百万 の キセキ』まで、つまりほぼ30話分も費やされているのは、観客を感情移入に誘い込むことや、そのあまりにいい出来からいっても、わからないでもないのだが・・・やはり冗長すぎたとしか思えない。


TURN 10 『神虎 輝く 刻』〜インターナショナリズムの話を書くには、少し尺が足りない・・・
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080615/p2

今回の国籍を持たない軍事力という発想は、純粋な国連軍を創設してしまおうという発想と同じ。この話をエンタメでもっとも人口に膾炙したのは、かわぐちかいじさんの『沈黙の艦隊』ですね。全31巻。・・・・あの31巻を、このほんの数分で表現してしまうんだから、、、この凄さや深さがわかる人って、ほんとどれくらいいるのかなぁ?と思ってしまう。いや、その深さを「わからす」ことがこの物語の本質ではないので、これこうでいいんだけれどもね。

沈黙の艦隊 1 (1) (モーニングデラックス 1411)沈黙の艦隊 1 (1) (モーニングデラックス 1411)
かわぐち かいじ

講談社 2001-05
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

僕はかわぐちさんの連載とかで、過去のプロセスをじっくり踏破した経験があるから、こういう爺くさいこと思うのかなぁ?。消費している観客は、こんなこともうプロセスではなくて、空気(=結果)として受け入れているということなのかなぁ?。どうもわからない。治安維持レベル以上の軍事力の指揮系統の一本化ってのは、地球連邦政府のための最も重要な一歩であって、巨大帝国ブリタニアを倒す手目に小さい国をより集めなければいけなかったルルーシュランペルージが、最初期からこれを志向していたというのは、彼がいかにレベルの高い戦略家か表しているんだが、どうもそれってうまく伝わっているのかなぁ、、、と思うんですよねぇ。また、この憲法批准は、アメリカ独立戦争の時の合衆国憲法のアナロジーに思えるんですがねぇ。「合集国」ってなっているのも、「合衆国」が本来は誤訳なのではないかという強い論争があって、本来は人ではなくて、国(=State)が集まったんだから、「合集国」と訳すべきだちゅー話がずっとあるとか知っているとこの訳語にぐっとくる。

機動戦士ガンダムSEED 1機動戦士ガンダムSEED 1
矢立肇 富野由悠季

バンダイビジュアル 2003-03-28
売り上げランキング : 13052

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

機動戦士ガンダム00 7機動戦士ガンダム00 7
宮野真守, 三木眞一郎, 吉野裕行, 神谷浩史, 水島精二

バンダイビジュアル 2008-07-25
売り上げランキング : 20

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

このことの凄さが分からないと、感動が全然違うと思うんですよねぇ。ちなみに前回書いた、「2)3軸を中心とした地球統一のインターナショナリズムの物語」を、逆に物語の終盤で2超大国の最終戦争に二元論に収束させるというのは、なるほど逆パターンか!と唸りましたよ。神殺しのの3)がメインにならざる得ないとすると、2)をおもいっきりシンプリファイするのは、なるほどと思いますよ。なんか、何のためにいるのかなー?とか思っていた、シュナイゼルがここへきて、戦略兵器を所有するなど、現実世界での未来を抑え込むところも、、、うーむ、その他の3極に分裂して発散して終わったガンダムSEEDとか、3極のまま緩いガンダム00とかと比べると、その違いが、、、物語をちゃんと収束させて終わらせようとする強い意志が感じられて、谷口監督のスマートさを感じるなぁ。


■主人公はスザクなのかルルーシュなのか?〜誰がメインの視点なのか?

コードギアス 反逆のルルーシュ 1コードギアス 反逆のルルーシュ 1
木村貴宏 大河内一楼

バンダイビジュアル 2007-01-26
売り上げランキング : 2320

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


非常に複雑なコードギアスという物語を読解する前提として、すでにかなりぶれて曖昧になっているのは誰が主人公か?という問題だと思うのです。主人公とは、いいかえれば「大多数の観客は誰の視点に共感して感情移入しているか?」ということです。実は、これ、案外厄介な問題なんじゃないか、といま思っていまう。いや、ぶちゃけていえば、単純に、ルルーシュとスザクどっちが主人公なの?って問いです。

善悪の視点を入れ替えた物語

これは1期開始時からすでに指摘されていたことでほとんどの人は了解済みだとは思うのですが、コードギアスという作品は通常の作劇であれば主人公であるスザクを脇に回し、敵役のポジションであるルルーシュの視点で物語が綴られているんですね。ガンダムで言えばシャアの視点で綴られる物語と言えばわかりやすいですかね。重要なのは、ルルーシュは最初から敗北が義務づけられているということ。敵役であり、本来の主人公であるスザクに常に苦杯をなめさせられる。それは1期で何度も繰り返されてきた場面です。2期においてその立場があるいは変化するかも?(続編で、かつての敵役が仲間になるという事はままある話です)という希望もあったのですが、15話まで進んだところで、どうやらその可能性は極めて低くなっているように思います。そのかわり物語のラスボスとして華々しく散華する準備は余念なく進んでいるように思われ、ルルーシュに感情移入する私のような人間にはたまらないマゾヒスティックな展開が予想されます。悪は悪として、それがどれだけ同情を誘う存在であったとしても断罪される、ある意味王道の勧善懲悪スタイルなんですね。


コードギアス読解の基礎/未来私考
http://d.hatena.ne.jp/GiGir/20080721/1216614208

これは、GiGiさんの「視点の倒置」の解釈ですが、僕はちょっと疑問があります。いや基本ラインは、ほとんど同じで、いい方の問題ですが。まずね、スザクが主人公?と言い切っているところに疑問符なんです。R2ではそうかなぁ?と思うので。でもまず、なぜこういわれるのが了解済みと思われているのかを、引用してみましょう。これは、ルイさんのコメントがわかりやすいんで、ちょっと引用してみます。


ルイ

2008/07/24 23:22
キャラクター創造の順番として、ピカレスクロマンを志向するコードギアスとしては先ずルルーシュ→対置しうるスザク、という順番なだけで、一般的な「物語」の構造としてみれば、スザクの正道立身出世物語というのが基本フレームですよね。前期2話の時から、シャアが半端にニュータイプ能力を有せず(あれは、ある種シャアの不幸ですよね。MS戦できちゃうというのは)、アムロ(スザク)と別フィールドで戦い、上り詰める話だと思ってたんで…。まあ、僕もスザクが主人公だと思ってました。ただ、他のエントリでgigiさんが仰られていたように、善悪の単純な色分けを是としない表現世界の「次」がコードギアスですから、スザクもまたルルーシュと、要素を交換するような関係なんでしょうけどね。

戦略と戦術の違い
http://d.hatena.ne.jp/GiGir/20080724/1216852063

ルイさんが、ピカレスクロマンを指向していると書いているのは、宣伝の帯にまさにズバリ書いてあるからですよね。

キミを守るために、世界を壊す――。衝撃のピカレスクロマン「コードギアス 反逆のルルーシュ」DVD発売情報

 超大国に占領され、「日本」の名を奪われたエリア11……衝撃的なストーリーで話題沸騰! MBS・TBS系にて放映中の「コードギアス 反逆のルルーシュ」DVD第1巻発売が決定だ!胸に野心を秘め、どのような手段を用いても覇道を歩もうとする「黒の皇子」ルルーシュ。正義を志し、正直さと公平さを捨てることなく正道を歩もうとする「白の騎士」スザク。二人の歩みが超大国ブリタニア帝国、そして世界を震撼させる!

http://anime.goo.ne.jp/contents/news/NAN20061013_82/index.html

ピカレスク小説(ぴかれすくしょうせつ、英語Picaresque novel、スペイン語Novela picaresca)は、16世紀〜17世紀のスペインを中心に流行した小

説の形式。悪漢小説、悪漢譚、悪者小説とも呼ばれる。


日本のピカレスク小説
現在でもピカレスクは世界各国で盛んに愛読されており、日本国内でも新作が発表され続けている。日本においても同様で、やはり上述してきた様な性格付けを受けた人物を主人公や重要人物として物語が展開される。この様な人物が、暴力・犯罪の現場や経済市場などにおいて、時に激しく時に華麗に、一般的に悪と言われる行為を行ってゆき、一度は成功を収めるものの、結末において零落・破滅するのが和製ピカレスクの基本フォーマットとなっている。また、欧米の作品と比較すると、宗教的背景や社会・文化的背景、生活感は比較的希薄である一方、ハードボイルド、ニヒリズム、ダンディズムと密接に結びついている場合が多い事も、特徴として言える要素である。他方、主人公の悪漢が巨悪や猛悪に立ち向かうという構図で描かれる物語の場合、主人公が行う悪の行為は、結局は「正義のイメージ[3]」のみを持ち、結末に至っても主人公が生き残るというパターンが、かなりの割合で存在するのも和製ピカレスクの大きな特徴と言える[4]。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%AF%E5%B0%8F%E8%AA%AC


GiGiさんの視点の倒置は、たしかに第一期では、僕は凄く正しいと思うんです。第一期は、非常にわかりやす対比でした。どうも監督の谷口さんは、ルルーシュが主人公だと言い切っているそうですが、少なくとも第一期は間違いなくスザクが主人公ですよ。見ている感覚として、そうとしか思えない。単純に演出上でルルーシュに感情移入する人もいるでしょう。けれども、マクロ構造的に、第一期は「植民地11となった日本を解放するというナショナリズムの物語」が背後を基礎として支配しているので、スザクしか主人公になりえないんですよ。

□第一期はスザクの物語〜ユーフェミアに見出され何もなかった空っぽのスザクが理想を見出してゆく物語

・・・さて、話は戻るが、、、僕は第1期の物語は、ルルーシュ自体がナルシシズムの奴隷に捉われており、非常に限定的な・・・覇王になりきれない覇王であったため、王道の中の王道を歩んでいた、、、、しかも、それが全く身分も立場も人としての誇りすらないなかで戦い抜いていたこともあって、スザクこそが真の主人公であった気がする。それゆえに、突きつけられる課題が、スザクに偏って、厳しいものが多かった気がする。登場したての彼の強烈な捨て身の発言は、いまでも胸に焼き付いている。明らかに出来レースの裁判に、それでも真実を明らかにする場所だと信じて、、、いや、それがまやかしだと知っていても出頭し、、、




「それでダメなら、自分はこの世界に未練はありません」



と言い切った彼の強烈な自己犠牲の、、、なんというか、結果(=目的志向に生きる)を完全に拒否する過程のみを遵守するその強烈な捨て身さは、本当に凄いエネルギーがあった。あのある種のオーラは、3軸のグローバルな政治戦略闘争になるはずのR2の今後では、なかなか見えないかもなーと思う。だって、もう既に彼は、帝国最高位のナイトオブラウンズのNO7だもの。立場がある人間には、なかなかあれほどの捨て身感は演出できないと思う。



ちなみに、スザクがユーフェミアに対して過剰な思い入れがあるのは、何もなかった彼の情熱というか志というか内的なポテンシャルに、さまざまな形を与えて見出してくれた人・・・初めて自分自身の内的な本質を見抜いてくれてそれを、世界に表現する方法を与えてくれた人だからなんですね。ああいうのって、魂の同志、だと僕は思います。


ルルーシュは、ユーフェミアの思想を乗り越えられたか?〜第一期はスザクの物語だったのだと思う
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080528/p1

この覚悟に比べ、単純な話、ルルーシュには、日本を守る意識がないからです。ルルーシュが守るのは、ナナリーであって、日本解放は手段であり道具に過ぎない。だから、純粋な日本人で、かつて日本の指導者層の血に連なるエリートだったスザクが、ブリタニア軍人として体制内改革に執念を燃やすところに、この矛盾に、物語のダイナミズムがあるわけですよ。


もちろん、ブリタニア打倒(=地球の統一)や神を殺すことなど、背後により巨大なドラマツゥルギーは隠れていましたが、僕は、第一期は、基調低音として、日本解放を主軸としていたと思う。物語上、そんなに複雑にはできないし、わかりやすくするにはそれがベストだと僕も思います。実際、凄いテンションを感じましたし。


そして、この場合は、たしかに背後の構造に、ルルーシュの対置という複雑な視点になっている、というGiGiさんの指摘は正しいと思います。本来は、スザクがすべき、革命のレジスタンスを、より遠くを見通す(=結果的にね)スザクが行わずに、日本を解放することがしょせん集団に過ぎないルルーシュが行うという行為者のねじれが、ドラマツゥルギーの駆動に力を与えていたわけです。


けど、第二期のR2で、本当にそう言えるの?と思うんですよ。ルルーシュが破滅していく物語ととらえるのは、どうもその通りくさいのだが、本当に破滅するだけなのか?ってのはある。つまりどこに物語のエンドと救済をもってくるのかが、いまのところ僕にはよくわからない。もう少し暖かいものを期待していたのですが、シャーリーが死んだ時点で、ルルーシュには逃げ道はふさがれてしまったんだよね。あれで、大団円とかになったら、許せないもの。感情的に。それに、既に帰るところがなくなってしまったルルーシュに、前へ突き抜ける以外に道はないと思われる。

第一期から通して、この作品の倫理には、


世の中の理(ことわり)を曲げて力を行使することには、必ず巨大な負が行為者に降りかかるという因果律を描いています。


超常の力ギアスを使えば、確実に何か大切なものを失うという倫理があるように感じます。その究極は、彼が守ろうと誓った学園の日常・・・その集約ポイントである、彼を救ってくれるはずの唯一の女性であるシャーリーを失うことです。また、たぶん前回のスザクが、、、、プロセスの正しさを求めるスザクが、リフレイン(麻薬)でカレンを自白させようとした時に、どうしてもできなかったのは、やはりスザクが、倫理的に外れることが絶対にできない人間であるということをはっきり示しているんですよね。あんなに派手な拒否の演出をする必要がないじゃないですか(笑)。野郎とk死ぬほど思い詰めてきたのに、どうしてもできなかった!という感じ。あー神様(=監督?(笑))に守られてるなーと思いました。

拙速な力は不幸を呼ぶというメッセージ
 もう一つ特徴的なのは、ギアス能力に代表されるような、世の理を無視した拙速に結果を手に入れる力の行使は不幸を呼び込むというメッセージです。ギアスに限らず恋愛でも出世でも、それに見合った努力を経ずに結果を得たところで、周囲にも自分にも不幸をまき散らす事になると繰り返し描写されている。


コードギアス読解の基礎/未来私考
http://d.hatena.ne.jp/GiGir/20080721/1216614208

えっと、R2では、TURN 8『百万 の キセキ』から日本解放のナショナリズムのステージから、インターナショナリズムのステージに変わったというふうに僕は書きました。


この時点で、スザクをメインの視点とするマクロ環境が消失しているんですね、いったん。


背後にナショナリズムによる日本解放というマクロ環境が基調低音であるからこそ、スザクの決断や行動に、オーラのようなテンションが宿っていて、本来メインの視点は明らかにルルーシュに設定されているにもかかわらず、スザクの凄まじい存在のテンションに、観客は引きずり込まれるんです。少なくとも僕はそうでした。ましてや、彼は非常に不可解で難しい決断を繰り返している。


その正しい道を正しいプロセスで歩む純白の騎士がいたからこそ、背後で正しい目的を描きながらも、徹底的に間違ったプロセスを歩むルルーシュというねじれた視点が意味を持ったんです。


ところが、インターナショナリズムと神殺しのドラマツゥルギーに主軸が移ると、ルルーシュの「間違ったプロセスで満身創痍に告発されながらも」最初に思い描いた、、、もしかしたらそれはウソかもしれない、その目的、、、、ナナリーを守ること、ひいては、ナナリーと共にあった学園の日常を、そして自分が幸せだった母マリアンヌとの思い出を守るために、戦うという「そもそも不可能でムリで歪んだ願いをいだいしてしまった」ルルーシュという幼い少年のその、自己の物語に主軸が移ってしまうんですね。構造上、スザクの不可能な状況であるにもかかわらず正しいプロセスを選び実現する、という「正さのの象徴としてのスザクのビルドゥングスロマン」が強く輝かない限り、倒置の構造は崩壊するからです。それはマクロ環境の日本解放が、より高次のインターナショナリズム(=地球統一をかけたブリタニアとの最終戦争)のステージに移った時点で、変化していると思うのですね。

では、そこから何が描かれているというのか?


は、ちょっと疲れたので、また今度です。・・・・だいぶ整理されてきた。もう少し頭が整理できると、簡潔にかけるんだがなー書いて整理しているんで、、、なんか論理構成はめちゃくちゃだし、伝わるように書いていないので、ややこしい文章だなぁ。。。でもまー読み込んでくれれば確実にヒントにはなるし、僕の思考のメモなんで、それはそれでしかたがないっす。