『BLOODY MONDAY』 龍門諒・恵広史 もっとキャラクター・・・特にテロリストの心理描写を深く追ってほしかった・・というのはわがままだろうか・・・

BLOODY MONDAY 11

評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★★4つ)

一言でいえば、日本版『24』と考えればいいだろう。連載時にどういう風に読まれたかは分からないが、11巻全てを一気に読むと、非常にスッキりする。個人的には「一気に読むことができれば」かなりの良作として楽しめると思う。少年マガジンには、こういう作品が多い気がする。内面の描写が少なく、キャラクターたちにあまり感情移入しないで、外面的な行動の部分で物語を展開させていく手法。実は、物凄く個人的には大ヒットであったのだが、たぶん、これ連載が終わると打ち捨てられて二度と読者に手にとってはもらえないだろうな・・・と思う。というのは、こういうキャラクターの感情を描かない手法は、全く心に残らなんだよね。アニメーション監督の細田守さんと同じ印象を抱く。キャラクターの内面を描かないと共感や、そこに至る心理プロセスを共有しないので、読者の心に深い跡を残さないんだよね。漫画もいいしテンポや脚本のレベルも素晴らしく高いレベルだとは思うが・・・その部分は、たぶん意識している面もあると思うので、「だから駄目だ」とは言えないのだが、惜しい気がする。この行動主義的な部分のストーリー展開は脚本家の陥るパターンなので、できれば漫画家の方がキャラクターへの思い入れや共感や心理の機微などを絵柄と、脚本家のフィードバックをおこなってやってほしいものだ。第二部は期待します。


ちなみに、第一部のマクロの話が、僕の心にクリティカルヒットしている。テロを起こすに至った新興宗教教団の内部にいるキャラクターJとKの葛藤は、物凄く面白かった。「それ故」に、この組織内部の、そこへ至った背景や心理描写をもっと共感を持って描ききってほしかった。構造はかなりいいところまであると思うので、描けたと思うんだ。ネタバレになるが、Kが最後まで信仰を捨てなくて教義に準じていくところや、Jのように信仰が目指していたもの自体はよく理解しているが、それをメタ的に超えてしまっていながらも・・・・日常に戻ることができないで、そうではないもう一つの道を目指した・・・というのも、物凄く興味深いんだ。まぁここは、村上春樹の『1Q84』や高橋和巳の『邪宗門』や大江健三郎の『洪水はわが魂に及び』など、それに漫画ではわが愛する『黒い羊は迷わない』などの作品の系譜をこよなく愛している僕の脳内妄想が見せているからかもしれないが・・・ここ!にこそ、現代日本の最も深い病巣と問題点が凝縮しており、物語の豊饒さ・・・社会学や学問では分析し尽くせない「そこへ至る人間の心理プロセス」を表現する最もおいしいテーマだと思うんだ。それが見たい・・・と思っている僕には、たまらないストーリー展開だった。

黒い羊は迷わない 1 (ヤングサンデーコミックス)
黒い羊は迷わない 1 (ヤングサンデーコミックス)

邪宗門〈上〉 (朝日文芸文庫)
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『洪水はわが魂に及び』 『ピンチランナー調書』 (大江健三郎小説)
『洪水はわが魂に及び』 『ピンチランナー調書』 (大江健三郎小説)


1Q84 BOOK 1
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