毎年ベストを発表しているが、前提が「僕がその年に体験したもので」というものなので、あまり網羅的とは言えないものです。特に、漫画以外は、量自体が少ないですので、あまり価値がないとは思いますが、僕のメモ的位置づけということでどうかご容赦を。それにしても、時の経過に耐える、というのは重要なポイントだな、と思う。1年で振り返ってみると『花咲くいろは』とか、見事なくらいに思いださないし印象に残っていない。これって、NHK連続ドラマ的な位置づけだと、存在感が薄いってことなんだろうと思う。特に、ここはアニメだけの位置づけなので、無理やり十位とか付ければ確実に入るとは思うんだけれども、アニメ、小説、マンガ、そしてその他の出来事など、包括的にエンターテイメントとして記憶に残ったか?というと、驚くほどどれもだめだ。文脈ぬきで、凄かったのは、まどかマギカとハトプリだけだなぁ。特にまどマギが凄いなー。というのは、見ている時は、これまでの集大成の作品なので、思い入れもなければ、趣味でもないけど、時の経過に凄い耐えているもの。好きじゃないから見直さないけど、記憶に残り具合は見事。
第1位:『ハートキャッチプリキュア!』(HEARTCATCH PRECURE!) 原作 東堂いづみ 長峯達也監督
もうダントツ。2011年は、子供作品をいくつも見たけれども、これは圧倒的な存在感を放っている。なにが違うんだろう。スィートプリキュアも、決して悪い作品とは思わないんだけど、全然、自分的には特別にならないなー。大きな違いの一つは、四人の関係性だと思う。ハトプリは、それぞれの個別、たとえば、マリンとサンシャインとかが、二人っきりになれば、二人の固有の会話とテーマや話題が現れる。けど、あこちゃんと響に固有の会話のテーマが、あるようには到底思えない。仲がいいだけで、関係性が平坦なんだよね。あと、悪の存在が、砂漠の使徒のほうが、より深刻な存在だったと思う。スイプリの悪って、イマイチ悪として弱いんだろうと思う。やはり脚本は、悪の存在が厳しく機能しないと、物語のダイナミズムが動かない。悪を単純に機能させると、それはそれで勧善懲悪という予定調和のつまらなさに陥るけど、子供向けは、あえてそっちのほうが、うまく作れるんだろうと思う。善と悪の二元論が、それでも機能するのは、もうこの分野しか残っていないわけだから。
第2位:『魔法少女まどか☆マギカ(PUELLA MAGI MADOKA MAGICA)』 監督新房昭之 脚本虚淵玄
虚淵さんの脚本のレベルの高さが本当に光った作品。虚淵玄という作家主義の視点で見てもフェイトゼロから進化しているし、時代性でバトルロワイヤルや並行世界の物語の系列の物語の集大成的な意味でも、ここまでシンプルに描けるのか!というほどの絞り具合、、たった12話!で見事一本という作品。間違いなく2011年を代表する一作品。たぶん00年代の集大成的な作品としても位置付けられると思う。このランキングの前提に書いたところでも書いたのだが、僕は感情移入もなかったし、それほどまじめにも見ていなかったし、個人的にはそれほど好きじゃなかった、、、「にもかかわらず」、1年を過ぎ去ってみると、記憶に刻まれているという意味で、この作品はレベルの相当に高い作品なのだろうと思う。同じくらい頑張って、『フラクタル』とか分析したけど、『フラクタル』って、「残念」としか思いが残っていないもの(苦笑)。
基本的に、2011年は、自分的な意味では、アニメは不作な感じでした。まぁここ3カ月ぐらいは、アニメを全く見ていないので、そこのところで何かあれば、それは見落としなんですが、、、でも、本当にやばいやつは、アンテナが高い友人たちから、死んでも見ろ攻撃が来るので、そういうのがないということで、まぁまぁだったのでしょう。その中でも、この作品の「テイスト」は凄く記憶に残っています。脚本もよくうまくまとめたなと思うのですが、それよりも、このパステル調の雰囲気の演出力の高さに感心しました。そればかり記憶に残っている。同じ監督が、フェイトゼロのシャープな演出をしているとは、、、と思います。フェイトゼロは、とにかくうまく演出していて完璧に近いんですが、完璧ゆえに、特に記憶に残るかっていうと、、、、アニメのフェイトゼロとしては残らないかもなーと思ってしまいます。フェイロゼロ自体が、そもそも超名作なんで、、、、。
第4位:『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』 弓弦イズル著 菊池康仁監督
なんというか、ハーレムメイカーものの王道オブ王道で、ああ、うんうん男の子の夢を分かっているよね、という物語で。その裏切らなさ加減、安定した脚本、演出になんか物凄くほっとしました。どうしても、こんな批評ブログなんかしていると、「何かとがったものは!」みたいな、エッジを求めてしまうんですが、そうすると疲れてしまうんですよね。『アマガミSS』もそうだけど、素直に、なんというか、「好き」というい気持ちだけ「癒し」とかとにかく、何も得るものはないけど、楽しいよねというエンターテイメントの確信に徹している作品を見ると、ほっとします。特に00年代の後半からは、ハーレムメイカーや並行世界、バトルロワイヤルなどの構造自体をメタ的に見て、そこからの解放や脱出を思考するので、どうしても小難しく、かつ非常に悲劇的な色調を帯びるんですよね。まどマギを考えてみればわかると思います。それって、疲れない??という視点から見ると、ISは、最高!!!って感じです。古典中の古典で、90年代を見ているような気分がします。
第5位:『アマガミSS』 平池芳正監督
楽しかったー。。。。。それ以外、、、、うーん、、、ないかも、、、。でもそれって、重要なこと。
これは、ほんとうに勧めてくれたレスター伯さんに感謝。個人的に楽しかった、癒された、という意味では、最も、楽しめたアニメーションだったと思う。記事の量がそれを示している(苦笑)。アマガミというシリーズとかジャンルは、よくできているコンセプトなんだろうと思う。10年後でも、類似のパターンの物語群はできると思う。流石に、会社に一事業部ができるのが理解できる。第二期も楽しみです。。。。。が、「君が望む永遠」のように、恋愛の始まりの部分ばかりみていると、その後、の部分も含めたトータルスコープでみたいという欲望も、年齢が上がったり、それを集中してみると思うんだよな。その辺りは、消費者はわがままというか、飽きやすいのだろうと思う。
第6位:『日常』 石原立也監督
俳句だ。演出の極致。これもレスター伯のおすすめ。ほんとうにありがたい。なんというか、僕のように大河小説で三国志の様なダイナミックなドラマトゥルギーの展開が、究極の理想の人にとってみると、ある意味、対局にある指向、様式でした。こんなのもありうるんだ!しかも!という気分。しかも、これも、「恋愛ラボ」や「けいおん」の流れの無菌、日常、空気系のような流れのその果てにあるものなのだが、ヲタク視点や男性視点が、完全に消失しているのは興味深い。マーケティングとかにも、十代前半の女の子のほうの受けがよかったとかなんとか、、、。いいかえれば、儲からない層ということ(苦笑)なんだけどね。けど、「新しい層」への拡大という意味では、もの凄く考えさせられるポイントだと思います。特に、この系統の仕事している人にとっては、よく考えるべきヒントがざっくざく。
第7位:『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』 監督 長井龍雪 脚本 岡田麿里
1年を振り返るという形で物事を見ると、「はっきりと記憶に残って、胸に響いているもの」とそうでないものが明らかにわかれる。意外や意外、考察をかなりした『あの花』とか、全然記憶に残っていないのだ。そういう意味では、「時間の経過に耐えうる」というのも物語作品の大きなポイントなんだろう。たとえば、同じ岡田脚本でも『true tears』や『とらドラ!』の方が、遥かに記憶に残っている。これって、きっとこの作品が、秀作だからだと思う。丁寧で緻密で完成されすぎていて、逆に言うと、いびつさが一つもなかった。
以下なし。
番外編:『フラクタル』 (FRACTALE) A-1 Pictures制作 山本寛監督
残念だった。演出が実に残念だった・・・・。絵柄も設定もキャラクターもなにもかも、一流のレベルなのに、どうしてああなったのか、、、、。ほんとう不思議で印象的でした。No6のように非常に秀逸でしっかりしたよいアニメーションであるがゆえに、たぶんあまり人気にも話題にもならないなーというのではなく、大作として機能しそうなほとんどのものがあったのに、、、、。ダメのものは普通はすぐわかるのですが、この作品の酷さは不思議でした。