『SO BAD!』 相原美貴著 相原さんの作品の最高傑作〜女性側のハーレムモノとしてははじまりっぽいころかも?

So bad! (1) (小学館文庫)So bad! (2) (小学館文庫)So bad! (3) (小学館文庫)


評価:★★★☆星3つ半プラスα
(僕的主観:★★★★★5つ・・・大好き!)


■相原美貴さんは、好きなんだよ〜♪〜恋するドキドキ感が、何度もよみがえる

 相原美貴さんの作品では、この『SOBAD!』が、たぶん一番の傑作にして代表作なんではなかろうか。その他の短編などが少しでもいいと思う人は、是非読んでみてください。少女マンガの王道中の王道にして、相原作品の最高峰だと僕は思う。勝気な主人公雪野今日子の、実はその強さは強がりであるんだけれども、素直になれないもどかしい部分がよく出ており、まじでか わいいっ!(笑)。胸がキュンっとします。いやーえーもんみたなーって感じ(笑)。

読み返すって、特別の位置づけのマンガってあると思う。僕は、相原美貴さんの『SO BAD!』は、生涯捨てないリストに入ってしまうほどのお気に入り。さっき久々に読み返したのだが、胸がドキドキして、甘酸っぱい気持ちで胸がいっぱいいっぱいになった(笑)。すべての人が「そう」なるかどうかはわからないが、僕はこの人のマンガの文脈がどうも、ツボらしい。ほぼ全作品で似たような感情が惹起される。ただ、破壊的なドキドキ感は、この作品が圧倒的♪。だから、たとえ一時期間が、空いても何度も何度も読み返す。ツボってのがあるんだと思う。

この「恋するドキドキ感」ってのは、はっきりいって再現するというか惹起するのがものすごく難しい。恋ってのは、「落ちるもの」とよく言うように、なんかの偶然で、胸にドスッとささる矢みたいなものだからだ。ちなみに、実際の恋愛や女の子に対してでも、そんなふうに都合よくは発生しない。・・・する人もいるかも知れないが、ある意味性欲みたいなもんで、それが本当に愛や本物の恋愛につながるものかどうかの見極めが難しい。それに、恋愛慣れすると、この恋のドキドキ感が見事なくらいにスレて発生しなくなる。結婚して夫婦になると大抵が、SEXLESSになりやすいのも、そもそも「日常の慣れ」が、いかに恋のトキメキ感を、消失させるかという人間心理の原理に非常に無自覚な人が多いからだ。ましてや、夫婦関係の絶対性という欧米的な親密圏の伝統がない日本のような空間では、これはかなり深刻だと思う。 しかもトキメキがないと、非常に健康に悪いのだよ。

が、なかなか歳をとるとこの気持ちが発生しない。あと、恋愛慣れすると・・・・数をこなすと、スレてかなりこのトキメキ発生能力の閾値が下がるようだ。高校ぐらいのときに、凄いかっこいいモッテモテ(死後?)の友人がいて、中学の頃からやりまくりの遊びまくりだった彼は、もうすでに枯れて、、老人のように淡白で(笑)・・・・あのころは理由がわからなかったが、よほど自覚しないとこのトキメキ感(=世界と初めて出会い様な一回性の感覚)は、失われやすいとういうことガキはわかりにくいということなのだろう。そういう意味では、僕は、マンガや小説ぐらいで、かなりの高確率でこのトキメキ感が再現できるので、なんとエコノミーだなーと思う(笑)。

いやーもう、現実の女の子を口説くのはお金もかかるしめんどくさくて、いまやれといっても、たぶんしないなー。合コンしたり、毎日電話したり、メールしたり、、意外に時間とコストがかかるからねー。出会いを増やすためには、「幹」を育てる(=女の子の友達を作る)のも必要だし・・・あんなハイコストなことやってらんねーよ、もう。 話がずれたが(笑)、、、、、、いや、もうそれなりの年齢の僕が、何度読んでも胸がキュンキュンするんだから、僕の「恋愛の物語」のツボに入っているんだろうと思う。いや、、、、強気で頑張ってる女の子のけな気な姿とか・・・たまらんですよ、とにかく。読むと、何度でも幸せな気持ちになる。いやーホントこのマンガ大好きです。



■見抜いちゃうってのは、それだけ相手の本質を見つめていること〜甘えることの難しさ

この作品で一番いいなぁ〜と思うのは、とても強気で前向きな主人公が、『頑張って努力している健気な』ところが、実はさびしがり屋の裏返しだというところを、見抜いちゃう相手がいるところです。

でも、この「見抜いちゃう」というのが重要なポイント。

あのね、よく勝気は寂しさの裏返し、という王道パターンがあるけど、僕は好きではないです。というのは、「勝気で頑張って前向きに努力する姿」ってのは、やっている人は、実は好きでやっているので、他人に依存したくないし、その努力にプライドを持っているんです。だからその姿勢が本気であればあるほどに、頑張る自分が好きで、頑張る自分を他者(=男)に甘えることによって逃げ出したいなんて全然思っていないんです。凡百の少女マンガは、ここが描けない。全部、天才のすごい男性が、助けてくれたり、シンデレラのように、「ここではないどこか」に連れて行ってくれるのを期待していて、それで全部OKなんです。 でも、そうじゃないでしょう!。ちゃんとした女の子(もしくは男の子)ならば、自分を成長させたい、とも思っているんです。助けてもらうことは、かっこ悪いし、許せないはずなんです。この自分自身で自立して成長していこうという強い意志と、恋というものの両立に悩む部分が、かわいいんです!。男(つまり異性ね)に、何とかしてもらおうなんてヤツは、一生かかっても幸せになれねーよ!(断言)。

だから、誰かにもたれかかっちゃうという甘えを雪野(=主人公)は許せないんです。この自分を許せない部分が、超かわいい。

その葛藤の中で、しかしながら知らぬ間に相手に凄く依存していき、それを認めたくなくて突っ張っていたんだけど、実は相手も同じでだった・・・という、、、、、、こういう恋愛っていいよねぇ。ちゃんと対等なんですよ。だから、恋がせつなくて、リアルなんです。恋の甘酸っぱさが、これでもかぁぁぁとオーラを放っています。いいなぁ、こんな恋をしてみたかった(笑)。


それに、唯一ナルシシズムの世界から抜け出して、等身大の雪野を見守っているのは、本人さえも気づいていないけど、次男だけなんですよね。


少女マンガ的には、ほんとうは3人兄弟の長男が、ベストの相手なんです。成績優秀で、かっこよくて、超やさしくて。だから最初、主人公も長男に憧れるし、好きになり、付き合うんです。でも、最後の最後で、そうじゃないってことに気づく姿は・・・・・やべぇーかわいいいよ、まじで。実は、兄弟が三人とも雪野を好きになるのだが、みんな親のこと(複雑な家庭なのだ)や個人的なことで実はトラウマや心の傷がある。けれど、唯一、そういった「自分自身のこと」「自分自身が癒されたいこと」を飛び越えて、相手自身を癒したいと思っているのが、次男だけなんですよ。だから、つっぱていた雪野が、次第に、本人さえも気づかぬうちに、好きになっているんです。

ちなみに、僕は男の視点で雪野さんが、かわいいとおもっているが、同時に美少年3人兄弟というのは、少女マンガの黄金パターンだよなぁ。一粒で3度美味しい(笑)って感じ。たぶん美少年好きの女性にとっても垂涎モノの作品なのではなかろうか。

■強気な今日子の心理描写が絶妙〜強がることは弱みは他人に見せないこと

ちなみに、今日子ちゃんのみが、可愛いわけではない。相手の美人(みと)くんの心理描写も一本!って感じ。4巻で、極めて優秀でみんなから愛されている兄貴に比較されて、、、、兄貴が世界のすべとを持っていってしまうと・・・・いつもあきらめていた。好きになった女の子は、いつも兄貴が好きだった・・・・。


「本気になんかなったってムダなんだ」

(美人)


「バッカじゃないの!?」
(今日子)

はっきりいって、二人とも似たもの同士なんだよね。 今日子も、母子家庭で育っていて、母親は、なぜか家政婦先の連城家の長男の環(美人(みと)の兄貴)のことを自分の子供よりも気にかけている節があり、自分の娘にとても冷淡だっため、いつもさびしい思いをしていて…自分が愛されているという実感がなくていつも強がっている。 けど、、、今日子は、ここがいい女だなーと思うのは、強気な分だけ、弱みがいっさい外に出ないの。成績でも、いろんなことも全力で物事をがんばる。こういうのって、支えがない分だけ、独りよがりな部分があるため周りから孤立しやすいが・・・それでも彼女が弱さに逃げ込まないで、戦っていること自体は、僕は素晴らしいと思う。そして、、、、初めて好きになった、環に対してでさえ、、、彼女は一切、自分の弱みを見せないの。それは、やはり、いい女だと思う。

・・・・・でも、そんな二人が、、、、お互い意識せずに、「このまま強気なだけでは、だめなんだ・・本当の強さとは、自分の「弱さを直視することなんだ」というのを、図らずもお互いに気づかせてしまうところ。 けれども、ベタに「弱さを直視しろ!」とか説教するんじゃないところがいい。ここのセリフも、今日子が美人(みと)の弱気を説教しているわけではないんだ。今日子自身も、自分が美人(みと)に魅かれていくことが訳がわからなくて、混乱してしゃべっているだけで、、、自分の発した言葉が、相手の実存の深いところをえぐるメッセージだとは気づいていない。 でも、このメッセージは効くよね。だって、、、、、「兄貴にすべて取られるから、今まではすべてをあきらめてきた」という回想シーンで、自分があきらめ切れなくて苦しんでいるダイダイ好きな女の子から


「バッカじゃないの(=あきらめちゃいけない!)」

というメッセージを聞くわけだから(笑)。これ、美人(みと)にすれば、「私をあきらめきれるの?」って意味になってしまいます。もちろん今日子にそういう意図はないです。 説教って、ダメなんですよねー。相手を動かすメッセージとしては。だって、説教って、自分が安全な高みから、相手をバカにして見下す優越感をベースに、お前のためになるんだぜ!という意味内容だから。受け取る側に、そういった高慢な部分を感情的に無視して(−処理して)中身だけ受け取ろうというクールな意識があればこの説教は凄く役に立つメッセージですが(良きにせよ反面教師にせよ)。 自分の実存のベースにかかわるトラウマを乗り越えるための第一条件は、『聖なる逃げ場』があることです。本当は、そんなものがリアルに必要ないくらい、自信(=子供のころから愛されて育った記憶)があればいいのですが、今の時代は実存承認 ができる親が少ない弱虫くんの時代。だから、自信がない子供が多い。

まっーそこまで「愛することができる大人」であるというのは、難しいので、、、やはりなんらかの小さな逃げポイントがあって、そこに留まってナルシシズムの罠にはまるのではなく、、、そこを踏み台に前向きに前に進めればいいのだと思います。そして、今日子にとっても美人(みと)にとっても、お互いの存在が、今まで目をす向けていたことから前へ出る第一歩になるんですね。


あああ・・・・・こういうのっていいなー。


お互いにとってお互いが本質的に必要であること。その必要が、逃げ(くつろげる安息の場)であると同時に、過酷な現実を戦うための「支え」にもなっているんですよね。
こういうのって、、、、もう「愛」なんだよなー。恋で終わらない。
いいなぁ。

5巻のp78のキスシーンとか、、、、かわいくて腰抜けそうです。

僕の今までの作品紹介と好きな好みが同一の人は、絶対読むべき素晴らしい作品です。